Xbox360版『Fallout3』体験版プレイレビュー【編集部責任編集】

Xbox360とプレイステーション3、そしてWindowsで発売されている『Fallout3』。このゲームは、中国がブッ放した核弾頭が世界中を核の炎で包み、200年の歳月が過ぎた時代の物語である。西暦2277年、放射能から避けるために地下シェルターで暮らしていた青年が、ある日突然地上の世界へと出て行ってしまった父親を探すため、地下シェルターを出るところからゲームが展開する。

このゲームはプレイヤー視点でゲームが展開し、稚拙な表現だが3Dの空間を自由に移動し、話し、戦い、そして眠ることができる。まるでもうひとつの現実世界で冒険しているような感覚におちいる『Fallout3』は、ゲームの祭典『2009 Game Developers Choice Award』にて、2008年にもっとも素晴らしいゲームとして “Game Of The Year” を受賞した。はたして、その受賞の座にふさわしいゲームなのかどうか実際にプレイしてみた。ちなみに、プレイしたハードはXbox360である。グラフィックや一部の挙動面で違いはあれど、どの機種もほぼ同じプレイ感覚で楽しめるゲームである。

タイトル: Fallout3
ハード: Xbox360、PS3、Windows
メーカー: Bethesda Softworks
価格: 8,190円 (税込)
ジャンル: ロールプレイングゲーム

・リアルを生かしきれているポイント
このゲームのウリは、リアルに作られた核戦争後の広大なアメリカを自由に探索できることだ。住民と仲良くするのもアリ、皆殺しにするのもアリ、誰とも関わらずに自分ひとりで冒険するのもアリだ。「ゲームはグラフィックが命ではない」といわれた時代があったが、『Fallout3』はリアルなグラフィックがあってこそ楽しさを実感できるゲームといえる。かつて渋滞を起こしていたであろう道路や高架橋が朽ち果てていたり、二度と走ることがないであろうサビ付いたディーゼル列車が倒れていたりと、「実際に核戦争後はこのような世界になるんだろうな」と思ってしまうほど、リアルな世界を構築している。

また、遠くにいる人物やモンスター、メカなどをズームアップして見ることができるのだが、そのズームアップ時に “そこに距離がある” ということを感じさせる “見えない空気” を体感することができる。空気なのだから見えなくて当たり前なのだが、距離感はリアルを追求する場合に非常に重要で、距離感を表現するには自分と対象物との間にある空気を感じさせる必要があるのだが、見えないものだけにゲームで空気を表現することは非常に難しい。『Fallout3』は、実際にカメラをズームしたときのユレやブレ、気象による大気の揺らぎ、遠くを覗いているからこそのボヤけなどで、自分と対象物との距離感をリアルに表現している。

・リアルを生かしきれてないポイント
このゲームには、もうひとつのリアルが存在すると『Fallout3』の取扱説明書に書かれている。そのリアルとはグラフィックではなく、対人関係の面だ。『Fallout3』の世界はならず者が多く存在し、主人公に対して厳しい態度で話しかけてくる人が多い。たとえ自分が善良な市民のひとりだと思っていても、相手はそう思っていない。しかし、それも最初だけだ。数多く用意された会話集からコメントを選び、会話を繰り返すことで信頼関係を築いていけば、親友や家族同等のもてなしを受けることも可能だ。会話集から攻撃的なコメントを選択すれば、もちろんどんどん嫌われてしまう。それは私たちが住んでいるこの現実世界と同じことがいえるだろう。

しかし、ひとつ残念な点がある。このゲームのリアルさのひとつとして、犯罪がある。誰にも見つからないように殺人や窃盗をすれば「プレイヤーが犯罪を犯したことを他の人たちは知らずに今までどおりの対応をしてくれる」という内容が説明書には書いてある。……はずなのだが、誰にも見つからずに犯罪をした場合でも、町中の人たちが犯罪者扱いをし、急に攻撃をしてくることがある。つまり、その点においてはリアルではないし、取扱説明書に書かれているリアルさがそこにはない(正直なところ、説明書の対人関係に関して書かれた記述を書き直したほうが良い)。

・戦術が楽しいバトル
『Fallout3』は、非常にバトルが楽しいゲームだ。最近はどのゲームにもいえることだが、『Fallout3』のモンスターバトルは戦術が重要となってくる。ただ単に銃を撃っているだけでは勝てない場合もあるし、パンチで攻撃したわうが効率よく倒せる場合もある。戦闘に入るきっかけは、モンスターに接近したときと、こちらから先制攻撃を仕掛けたときだ。モンスターが付近にいてプレイヤーを狙っていると、ミュージックが変化するので狙われてることがすぐにわかる。360度、コントローラのRBボタンを連打しながら見回す。RBボタンはモンスターが目視できる状態になると、モンスターにズームアップしてどのあたりにいるのか教えてくれる上に、時間が一時的に停止してモンスターのどの部位に攻撃を加えるか決めることができる。

『Fallout3』のバトルの楽しさを具体的にいえば、ダメージを与えられそうな武器を選択して攻撃をしたり、より効果的な武器はないかと何度も武器を変更して攻撃をしたり、逃げながらモンスターの特定部位を狙って攻撃をしたりなどの判断を瞬時に行うところである。プレイヤーはひとりで戦っているのに対し、モンスターが2~3匹で攻撃してくることはザラで、そのピンチをさまざまな武器を駆使して全滅させたときの嬉しさは快感となって脳髄を刺激する。

また、犯罪行為となるが善良な人たちを攻撃し、殺害した後で殺した相手の所持品を自分のものにするという、ダークな部分の快感も存在する。これは、自由に行動できるがゆえに可能な犯罪行為ではあるが、プレイヤーは現実世界と同様に、それなりの代償を払うことになる。その代償を払ってでも人殺しとして生活したい。それも良いだろう。それも、このゲームの楽しさのひとつだ。ちなみに、店でアイテムを購入した後に店員を殺害し、いま払ったお金やみせのものをごっそり奪い取ることも可能である。

・アイテムがモロい
このゲームはアイテムにおいてもかなりリアルで、服(鎧)も武器も使用していればどんどん壊れていく。壊れていくと防御力や攻撃力が低下するので修理しなくてはならないのだが、壊れるスピードがけっこう早いために何度も修理してもらわなくてはならなくなる。ゲームは楽しめるものであるべきで、いくらリアルさを追求したとしても、そのリアルさが苦痛になったのでは意味がない。ゲームはある程度のストレスをプレイヤーに与えることが重要なポイントになっており、そのストレスから開放されたときの快感はそのままゲームの楽しさにつながるものとされている。そのストレスが良い意味でのストレスではなく苦痛になっているのでは本末転倒である。

・ちょっとしたコントローラミスが命取り
プレイヤーがコントローラの捜査を誤って街中で銃を撃ってしまったとしよう。人に当たってしまったが最後、町中の人にボコボコにされてゲームオーバーとなってしまう。取扱説明書には「武器をしまって話しかければ助かるかも?」とあるが、助かるパターンはけっこう稀であることが判明した。たまに操作ミスをすることがあり、冷や汗をかくことがあった。

・このゲームは日本人にウケるのか?
『ドラゴンクエスト』シリーズや『ファイナルファンタジー』シリーズと同じ感覚で購入してしまった場合は痛いめに遭うかもしれない。もともと海外のRPGは不親切なゲームが多く、日本のRPGのように筋書き通りにストーリーが進むものは少ない。自由に冒険かできるというウリだった『ロマンシングサガ』シリーズはフリーシナリオといってはいるが、欧米のRPGからすればまだまだ良い意味で自由度の低いゲームといえる。『Fallout3』は良くも悪くも欧米のRPGであり、日本のRPGのようにヒントが盛りだくさんの筋書きストーリーのようにうまく事は進まない。

それでも『Fallout3』は欧米のRPGとしてはわかりやすい部類に入るゲームなのだが、ゲーム展開をわかりにくくしている原因のひとつは、一人の人物がいくつもの情報を抱えているという点だ。たとえば『ドラゴンクエスト』の場合、町の人はひとつの話題しか話さない。こちらから話題をふらなくても、話しかければ勝手に話をしてくれる。しかし『Fallout3』は、相手に何を聞くかを複数ある会話集から選んで話すシステムになっており、一人の人物がさまざまな情報を話してくれる。それゆえ、本筋のストーリーに関する話も聞ければ、どうでもいい話も聞くことになり、確かにリアルさは追求されているものの、ストーリー展開をわかりにくくしているひとつの原因となっている。長時間プレイをして「このゲームは日本人にウケるのか?」を考えたが、この会話の部分をもう少し簡素なものにしていれば、日本人のライトなゲームユーザーも楽しめるものになったのではないかと感じた。もちろん、『Fallout3』のそんなところが好きなんだよ! という方には無用の心配なのだが。

・バグの存在
ときどき、岩場やガラクタなどに挟まって動けなくなることがある。そんな場合は他の場所に瞬間移動できるシステムを活用して脱出すればいいのだが、近くにモンスターがいるとその機能は使えず、いつまでもその場にいなくてはならなくなり、事実上のフリーズ状態となる。そんなときはリセットするしか方法はなく、これは『Fallout3』のスタッフたちが以前に手がけたゲーム『オブリビオンIV』にも同様のバグがみられた。同じ開発エンジンを使用しているので仕方がないかもしれないが、前に作ったゲームのバグは新作に持ち込んで欲しくはなかった。

・総評
すでに『オブリビオンIV』をプレイして挫折した経験のある人は購入するかどうか再考したほうがいいかもしれない。その作品と同様に自由度が高いゲームなのは確かだが、それを逆にいえばハードなゲームともいえる。このゲームの素晴らしさは、その世界観とリアルさにある。一度ハマってしまったが最後、苦痛を楽しさに自動変換し、どっぷりと『Fallout3』の世界に入り浸ってしまうかもしれない。日本の数多くのヒットゲームは、リアルにしていい部分としなくていい部分をちゃんと考えて作っており、だからこそ日本人ウケするゲームが世に多く出ているともいえる。はっきり言ってしまえば『Fallout3』は日本人ウケしないが、多くの部分においてリアルに作られており、ゲームの歴史に名を残す作品であるのは間違いない。プレイする価値のあるゲームであることは確かだが、歴史的なゲームにいくらまでお金を出せるのか。そこはあなた次第だ。

この記事はあくまで当編集部でのプレイレポートであり、他の皆さまが同様の環境でプレイをしたとしても、同様のプレイ感覚を得られるとお約束できるものではありません。あらかじめご了承ください。
 
(C) 2008 Bethesda Softworks LLC, a ZeniMax Media company. All Rights Reserved.
 

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