デフレ勝ち組の「しまむら」が2期連続収益減、インフレ時代を生き抜くには?
「大量仕入れ、低価格販売」でデフレの勝ち組になった「しまむら」
安い価格で衣料品を提供し、若い女性などから人気を集めていた「しまむら」。「デフレの勝ち組」とされてきましたが、最近は売上が低迷し苦戦を強いられているようです。
同社は消費税増税後も「大量仕入れ、低価格販売」というデフレを制したノウハウで勝負し、実質値下げを行うなどの低価格戦略をとり続けました。しかし、従来のトレンドを踏襲した商品の売れ行きが伸びなかったことや、円安の進行により仕入れ値が増加するなどの影響で、平成27年2月期決算の利益が約12%減となり、上場以来初の2期連続の減益となりました。
円安による仕入れコストの増加、客数の頭打ちにより2期連続減益
しまむらは「アイテム数を増やし、価格を下げれば売れる」という戦略のもと、低コストで大量の商品を仕入れ低価格で販売。これにより客数を増やし、収益の増加に成功してきました。
しかし、平成25年度以降は客数が頭打ちになり、円安の進行により仕入れコストが増加したことで、売上面では維持できても、収益面ではその業績を維持できなくなり、平成26年2月期決算では5期ぶりの減益となっていました。インフレモードに移りつつあるなかでも、「ウチは今までこうやって成果をあげてきた」と過去の成功体験に依存したことが原因のひとつと考えられます。
一方で売上高は増加、客単価が上がっているという側面も
しまむらは、人口10万人当たり1店舗の出店を目指しており、毎年順調に店舗数を増やしています。それでも、客数が頭打ちになっているということは、集客力が衰えたりリピーターが減ったりしていることが考えられます。
その一方で、売上高は毎期、増加しているということも見逃せません。客数が増えなくても売り上げが増えているのは、客単価が増加しているということです。これを見ると、同社は円安の影響などによるコスト増がなければ順調に増益することができたということになります。
時代にマッチした新しい仕組みを打ち出すしまむらの今後に注目
しまむらの事例から、わかることは3つあります。1つ目は、低価格戦略によって増やせる客数には限界があるということ。2つ目は、客単価を増やすことで、売上を増やすことができるということ。3つ目は、過去の成功体験にとらわれず、時代にマッチした方法を選択することが重要であり「組織は環境に適応できる仕組みを構築し、業績の回復・改善にいち早く取り組まなければならない」ということです。
しまむらの野中正人社長は、「今後は全社的に商品数を絞り、価格も見直していき、さらに、高品質プライベートブランド(PB)商品を投入することで収益力を向上させたい」と話し、時代にマッチした新しい仕組みを考えているようです。デフレ時代の勝ち組であるしまむらが、インフレ時代に向けてどのようにシフトしていくのか。業種・業界に関係なく参考になる点が多いと思いますので、その動向に注目です。
(伊藤 伸朗/集客・顧客情報活用コンサルタント)
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