『白鯨』『若草物語』『赤毛のアン』 あの小説に出てくる食事を再現してみたら……
小説を読んでいると、思わずどんなものなのか想像してしまう、食べ物についての魅力的な描写に出合うことがあります。また、時として食べ物や食事の描写は、小説のストーリーにおいても重要な鍵となる役割を果たしていることも少なからずあります。有名なところでは、マルセル・プルースト『失われた時を求めて』で、ふと口にしたマドレーヌの味が、一瞬にして過去の記憶を鮮やかに想起させ、そこから長い長い物語が紡がれていくように。
ニューヨーク在住のデザイナー、ディナ・フリードさんによる『ひと皿の小説案内』の監訳を担当した阿部公彦さんも、次のようにいいます。
「食事を通して物語の行く末がほのめかされる。何を、いつ、どんな風に食べるかで、人物の性格や人間関係も見える。(中略)まさに食は人なり。食べ物との接し方を通して、人間の本性が露呈されるのです」(本書より)
小説において味わい深い、食べ物や食事の描写。
本書『ひと皿の小説案内』では、小説にあらわれる食事について描写されている一節に注目し、実際にその食事を再現。「作家の言葉を消化し、食べ物が出される状況を想像し、リサーチし、ものを買い集め、料理をし、被写体をつくり、撮影する」という経緯を経て形となった一枚の写真は、食材や盛りつけ、テーブルデザインにと、細部にまで徹底したこだわりをみせています。
「読むことと食べることはもともと相性がいい。共通点が多いのです。読むのは摂取です。食べるのも摂取。どちらも心地がいいし、栄養を得られるし、健康や体力を回復させてくれる」というディナ・フリードさん。
そんなディナ・フリードさんが本書で注目した小説は、『白鯨』といった古典から、『若草物語』『赤毛のアン』『不思議の国のアリス』、あるいは『ライ麦畑でつかまえて』『グレート・ギャツビー』といった青春ものまでも含んだ50篇。
そしてとりあげた食事も、アップルパイとアイスクリーム(『オン・ザ・ロード』)、ジンとパイナップルジュースのカクテル(『ロリータ』)、バナナ・クロワッサンにバナナ・クレプラック、バナナ・オートミール、バナナ・ジャム、バナナ・ブレッドをはじめとするバナナ尽くしの食事(『重力の虹』)といった、思わず食べたくなるようなものから、土(『百年の孤独』)や残飯(『変身』)といったものまで実に多種多様。
小説にあらわれる食事。是非、実際に本書の写真を眺めてみてはいかがでしょうか。そのうえで改めて小説作品を手にとってみると、いつもとは違う味わいを楽しめるかもしれません。
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