大手が潤うと中小企業も?下請け企業の現実とは
円安による利益増大で大手企業が過去最高のベアを発表
大手企業が政府の要請に応えて、過去最高の「ベア」を発表しています。一方、中小企業は円安の影響による原料高を価格に転化できないなど利益が圧迫されています。大手企業がベアを実施しているのは、主に円安による利益の増大が理由にあります。そして、輸出企業が円安の恩恵を受けていることが、賃上げの一番の背景にあるものです。
輸出企業の代表的企業であるトヨタ自動車も、販売台数の目標を1025万台から1010万台に落としています。トヨタ自動車の小平信因副社長は決算会見で、利益増大の要因を「円安、原価改善活動や価格改定など販売面の努力がある」と説明しています。
大手企業の利益と連動して下請け企業の利益が増える可能性は低い
一方、多くの下請け企業は「下請け価格がこれまでと変わっていない」といいます。大手による価格の指定(いわゆる指値)を受け入れるしかない状況で、原材料が円安により値上がりが続く中、利益は下がっています。また、多くの輸出企業の中でも円安の結果として利益が上がっているのは一部の企業です。
では、大手が潤うことで中小企業が潤うことはないのでしょうか? 政府は現在、下請け企業にも大手企業の利益が還元されるよう指導しています。下請け企業の経営が立ち行かなると、大手企業も影響を受けるようになるからです。
しかし、大手企業の利益と連動して下請け企業の利益が増えることはないでしょう。下請け価格は、一度上げてしまうと下げるのがとても難しくなると言われています。また、将来円高が発生しても原価を下げることが難しいと考えられています。
社会全体の消費量が増大することで中小企業にも利益が還元される
今回の大手企業の利益増大が、販売料の増加によるものではないことも、下請け企業の利益を圧迫する要因になっています。つまり、仕事量が増えているわけではないということです。
中小企業に利益が還元されていくのには「大手企業主導の賃上げで可処分所得(給与やボーナスから税金などが差し引かれた手取り収入のこと)が増え、社会全体の消費量が増大することで中小企業の利益が上がっていく」という間接的な理由によることになります。
もちろん、この時期に独自の営業方法で収益を過去最高に伸ばしている中小企業もたくさん存在します。大手企業の販売料自体が増え、内需が拡大して年2%以上の経済成長率が見込める状態こそが、大手企業と中小企業が潤う状態です。そのためには、世の中にこれまでになかった付加価値を創造していく必要があります。それこそが中小企業に今後一番求められていくことになると思います。
(福間 直樹/ファイナンシャルコンサルタント)
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