笹口騒音がみせた新たな可能性、うみのては完全復活へ——OTOTOYライヴ・レポート

笹口騒音がみせた新たな可能性、うみのては完全復活へ——OTOTOYライヴ・レポート

うみのてや太平洋不知火楽団のフロント・マン、笹口騒音が主催するイベント〈笹祭〉が、3月9日に東京・新宿LOFTで開催された。こちらは、2月29日が誕生日の笹口の生誕を祝いつつ、彼が所属するバンドやさまざまなソロ・プロジェクトが一挙に出演。ライヴ後には笹口自身が監督を務める映画「三億年生きた笹口」の完成披露試写会も行われるなど、まさに笹口一色のイベントとなった。

ライヴは、新宿LOFTのバー・ステージとメイン・ステージで交互に行われた。まず最初にバー・ステージに登場したのは、笹口騒音ハーモニカ。平日で少し早い時間の開演でありながら、すでにあふれんばかりの観客がつめかけていた。「おんがくのじかん」で早くもテンション全開に客席をあおりつつ、自身の誕生日の話題を挟んで「うるう年に生まれて」へ。そして「10枚目のアルバムを発売してやりつくした感があって、次になにをやるのか迷っている感じではあります。だからこの祭りで、これまでを清算する… まとめですね」とこのイベントの趣旨を説明。最後はバイオリンを呼び込んで、彼の数ある代表曲のひとつ「SAYONARA BABY BLUE」を一緒に演奏した。

「新人バンドです」という自己紹介で次にステージに立ったのは、笹口騒音&ニューオリンピックス。笹口とヤノアリト(TACOBONDS、H MOUNTAINSなど)、溝渕匠良(ex SuiseiNoboAz)による3ピース・バンドだ。強烈なグルーヴを生みだす変幻自在なリズム隊のうえで、笹口のセンチメンタルな歌が響く。笹口から「歓声が小さいよ!」と新人らしからぬ煽りも飛び出しつつ、畳み掛けるような演奏を披露。オルタナティブでディープな世界観をみせつけた。

先ほどのロックな世界から一転、次のステージにはセーラー服に三つ編み姿の笹口さわねが登場。「今日はお兄ちゃんのライヴにきてくれてありがとう。17歳女子高生、Sカップのアイドル兼シンガー・ソングライターです」と自己紹介。どうやら笹口騒音の妹という設定らしい。女子高生らしからぬエグい下ネタ満載の曲を演奏しつつ、ASKAや押尾学の名前を出してのMCやリストカット・パフォーマンスなど、きわどすぎる言動。最後には「さわねは今日で普通の女の子に戻ります!」と引退宣言すると、「もう疲れたの(笑)。だってこれ、きついんだもん。いままで本当にありがとう。さわね、ほんとうはおれやで」と笹口騒音モードに戻り突然のネタバレ。客席へ豪快にカツラを投げ捨てると、低い声で「ありがとうございました」と言い残しステージを去った。

続いてメイン・ステージに現れたのは、2014年5月以来のライヴとなる、うみのて。サイケデリックなSEが流れるなかメンバーがステージに登場。笹口が奏でる轟音が場内に響くと、「恋に至る病」からライヴはスタートした。「どうも、うみのてです。よろしくお願いします」と笹口があいさつすると、高野京介(Gt)も「みなさんお久しぶり」と笑顔をみせた。ここで笹口は「休んでいたんですけど、アルバムを作っていて、5月に出ます」と発表。「すごくいいアルバムになりましたよね」と話すと、メンバーもうなずいて同調した。さらに、「ここからライヴをやっていくので、誘ってください」と今後は継続して活動していくことを明かすと、高野は「6月30日に代官山UNITでワンマンをやります。今日きた人は、きてねー」と発表しファンをよろこばせた。その後、演奏された代表曲「もはや平和ではない」では、目をかっ開いて歌う笹口に客席は拳をあげて絶叫。全6曲のステージを終えると、客席からは歓声があがり、笹口も満足そうな笑顔で手をあげて応えていた。

再びバー・ステージに戻り、笹口騒音オーケストラのライヴへ。笹口は「みなさん、飲んでますかー? こっから打ち上げだぜー!!」と陽気に呼びかけると、キーボードの西山小雨、バイオリンの百瀬巡とともに美しいハーモニーを奏でながら「ぐるぐる回る」を演奏。「僕の家」では、客席を闊歩しながらホーン隊が登場、さらにリズム隊もくわわり、ゴージャスな演奏をきかせた。「ぐるぐる回るのテーマ」では客席は大きく体をゆらし、ハッピーな空気に包まれた。

ライヴのトリを飾ったのは、すでに解散を発表し、この日が最後から4本目のステージとなった太平洋不知火楽団。客電が消えて、お馴染みのSE「柳川下り」が流れると、大内貴博(Ba)が颯爽と登場し変身ポーズを決める。笹口が「太平洋不知火楽団です。最後にでっかい花火を! みなさん、お疲れさまでした」と話すと、カウントダウンから津金リョータ(Dr)の力強いドラムが鳴り響き「不知火花火」がはじまった。「これが笹口のハードコアじゃ! 酒持ってこーい!」という絶叫から「よいまち」へ。大内は客席に降りると、演奏しながらバー・スペースに移動し、楽屋をとおってステージへ戻った。「ありがとうございました。最後の曲です」と笹口が告げると、キラー・チューン「Dancing Hell」のイントロが鳴り響く。大内は勢いよく回転し、津金も渾身のドラミング。場内は解き放たれたように一斉に暴れだし、ダイバーも続出。残り少ない彼らの演奏に酔いしれた。

笹口が「〈笹祭〉いかがだったでしょうか?」と問いかけると客席は拍手で応える。そして「全部かっこよかっだろうがー!」と誇らしげに絶叫しつつ、「なんで売れないんだよー!」と本音も漏れる。「今後とも、笹口オールスターズをよろしくお願いします」と呼びかけると、太平洋不知火楽団のアンコールへ。笹口がイントロを鳴らすと客席が沸き上がり、「たとえば僕が売れたら」が演奏された。彼らのファンのみならずとも、東京インディーズ・シーンで長く愛されてきた曲。笹口が生みだした大名曲にて、4時間に及んだイベントは幕をおろした。

これまでの笹口を総括しつつも、卓越した演奏とグルーブで聴衆を圧倒したニューオリンピックスや、笹口がもともと持っていたポップさに華やかさがくわわり、まるで野外フェスのような空気をつくりだしたオーケストラなど、彼の音楽性の奥深さと新たな可能性を感じさせるイベントとなった。笹口が最初に話していたとおり、実験的な意味合いも多く含まれているであろうこれらのプロジェクトが今後どのような展開をみせるのか、おおいに楽しみなところだ。そしてなによりも、うみのての待望の復活。これからも笹口の動向から、目が離せそうにない。(前田将博)

〈笹口聖誕3億周年記念企画 『笹祭』〉
2015年3月9日(月)新宿LOFT

うみのて
1.恋に至る病
2.3億年
3.もはや平和ではない
4.ダイイングメッセージ
5.東京駅
6.正常異常

太平洋不知火楽団
1.不知火花火
2.サテライトからずっと
3.Island Feedback
4.よいまち
5.Dancing Hell

アンコール
6.たとえば僕が売れたら

・うみのて『 21st CENTURY SOUNDTRACK』
レーベル : DECKREC / UK.PROJECT
品番 : DCRC-0085
発売日 : 2015年5月20日(水)
収録曲
01.恋に至る病
02.LOVE & PEACE & etc
03.Tokyo Night Music
04. 生活ファンク
05.EIGA
06.ブラックホール
07.サラウンドごっこ
08.UMINOTE LAST TRAIN
09.言葉狩りの詩
10.ダイイングメッセージ
11.This is the End
12.たとえば僕が売れなかったら(bonus track)

〈うみのて2nd ALBUM「21st CENTURY SOUNDTRACK」レコ発超ワンマン〉
6月30日(火)代官山UNIT
OPEN : 18:30 / START:19:30
ADV : ¥2,500 / DOOR ¥3,000
チケット : ローソンチケット(Lコード : 76458)、e+、ライヴ会場での手売りで発売中

・うみのての音源はOTOTOYで配信中
http://ototoy.jp/_/default/a/82854

・うみのて オフィシャルサイト
http://uminote.blogspot.jp

・笹口騒音ハーモニカ オフィシャルサイト
http://yanagawarecords.com

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