「業界のアップル」を目指すために必要なこと
世界時価総額ランキングでアップルが2位を大きく引き離し1位に
2015年2月の世界時価総額ランキングでは、1位はアップル・7,482億ドル(89兆7,840億円、120.03円/ドル換算)、2位グーグル・3,829億ドル(45兆9,594億円)、3位エクソン・モービル・3,714億ドル(44兆5,791億円)、4位マイクロソフト・3,597億ドル(43兆1,747億円)、5位バークシャー・ハサウェイ・3,539億ドル(42兆4,786億円)でした。日本では、トヨタ自動車・2,129億ドル(25兆5,543億円)がようやく23位にランクインしています。
アップル創業者の、スティーブ・ジョブズが亡くなった2011年10月のアップルの株価は52ドルでしたが、直近の3月23日は127ドルまで上昇し、時価総額は2位のグーグルを大きく引き離し、前人未到の90兆円に到達する勢いを示しています。
スティーブ復帰後にサクセスストーリーが始まったアップル
忘れてならないのは1985年、スティーブは自らが招聘(しょうへい)した経営者から解任される屈辱を受けました。そして19年前の1996年、アップルは瀕死の状態でした。同年、スティーブが復帰してから、時価総額90兆円へのサクセスストーリーが始まったといっても過言ではありません。
この原動力はいったい何なのかと考えていたとき、興味深い映像を観ました。2007年、スティーブとマイクロソフト代表ビル・ゲイツの対談です。その中でスティーブは、「当時、ポータブル・ミュージックの市場は偉大な日本のコンシューマー・エレクトロニクスの会社が支配していました。ただ、彼らは適切なソフトウェアを作れず、ハードにインプリ(実装)できませんでした。iPodもMacもきれいなボックスに入っていますが本質はソフトウェアです」と、アップル復活の起爆剤となったiPodの開発秘話について語っています。
スティーブ亡き後は、いわゆる彼の遺産であるiPhone、iPadなどのマイナーチェンジでしのぎながらも、「画期的な新製品を出せずに失速していく」と見る識者が少なくなく、「おごるリンゴは久しからず」と揶揄されていました。ところが、身につける「ウェアラブル端末」にアップルが乗り出し、時計型端末「アップルウォッチ」がいよいよ4月24日に販売開始になります。ソニーやサムソンなどがすでに時計型端末を上市していますが、消費者はアップルウォッチが出るまで静観、あるいは見極めたいとして買い控えていた向きが多いようです。
「デザイン資本主義」なる新語がクローズアップ
細部に至るまで徹底的にデザインにこだわったアップル製品は、ハードとソフトを融合させることでPCからスマホへの王道を築き、「IT業界の巨人」といわれる現在の地位を築いています。また、市場でのデザインの重要度を表すように「デザイン資本主義」なる新語がクローズアップされ、「業界のアップル」といった枕詞が散見されるようになりました。
「寝具のアップル」を目指す高級マットレスの「エアウィーヴ(愛知県大府市、松田孝裕代表)」、この2月に東京の清澄白河に米国外初出店を果たした「コーヒー業界のアップル」と呼ばれる「ブルーボトルコーヒー・カンパニー(カリフォルニア州オークランド、ジェームス・フリーマン代表)」などが挙げられます。
世界標準のインフラを構築したことがアップル成長の要因
ここで再認識したいことは「インフラを制覇した企業は強い」ということです。倒産寸前であったアップルは、わずか20年で90兆円の時価総額企業に成長しました。その要因はPCやスマホという世界標準のインフラを構築し、世界のユーザーに支持されたからです。
エアウィーヴは高級寝具、ブルーボトルコーヒーは新鮮な高級コーヒーのインフラに成長しようとしています。「光芒一閃」「盛者必衰」「会者定離」という言葉があります。日本から、世界のインフラを制する企業が出てくることを願ってやみません。
(村上 義文/認定事業再生士)
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