築50年 MUJI×URリノベーション団地の住み心地は? 3人のホンネ

MUJI×UR、築50年の団地リノベーション住宅の住み心地は?(写真撮影:井村幸治)

MUJI×UR団地リノベーション物件がオシャレでカッコいいと人気のようだ。モデルルームを見ると築50年の団地とは思えない素敵な空間に仕上がっている。ただ、真冬のモデルルームで感じたのが寒さ……。築50年近くになる団地の住み心地は?自然光が入るキッチン、風が抜ける間取りが気に入っています!

MUJI×UR団地リノベーションプロジェクトは全国10以上の団地で展開されており、すでに入居後数年を超える方もいる。この1月にも新たな募集が始まったので内覧会を取材したところ、真っ白でシンプル、ミニマルで魅力的な空間で、団地の外観とのギャップに驚いた。

家賃もリーズナブル、人気が出るのも頷けると思ったのだが、モデルルームに行った際にひとつ気になったのは室内の寒さ。真冬の時期に玄関をたびたび開け閉めしていたこともあるのだが、実際に暮らしてみてどうなのだろうか? と気になった。そこで大阪府下で暮らす3組の方のお住まいを訪ねて住み心地を伺ってみた。

●Aさん(40代) 東豊中第2団地  入居後9カ月 2人暮らし
1967年3月完成 築48年  47.54 m2 家賃6万7700円

【画像1】キッチンを窓辺に移動して自然光の中で調理ができるよう。※Aさんの住戸は反転プラン(MUJI×UR plan07)、家具配置はプラン例なので実際とは異なる(写真撮影:井村幸治)

【画像1】キッチンを窓辺に移動して自然光の中で調理ができるよう。※Aさんの住戸は反転プラン(MUJI×UR plan07)、家具配置はプラン例なので実際とは異なる(写真撮影:井村幸治)

「モノであふれた暮らし方を変えたい、と思ったのがこの部屋を選んだきっかけだったので、引越す際にほとんどの荷物を処分しました。扉で隠せる収納スペースはほとんどありませんから、多くを持たない生活にすることが大事。そこが面白いところでもありますね。

日当たりと風通しがとても良くて夏場も涼しいんです。4月に入居してしばらくはエアコンなしでも暮らせるかなと思いましたが、さすがに真夏にはエアコンを設置。パワーのあるタイプにして1台で全室対応しています。冬の寒さも気になるほどではないですね。キッチンに窓があるのも気に入っています。バルコニーも広くて眺望もとてもいいし、最上階の角部屋なので音も気になりません。

不満と言えば、2口のキッチンコンロが鍋を並べて置けないところくらいでしょうか。あっ、そういえば鴨居が低くて頭にぶつけたことがありました、いまは慣れましたけど……(笑)。エレベーターはないですが、5階までの階段も苦にはなりません、体力づくりのためだと考えています。賃料のことを考えるとコストパフォーマンスはかなり高いと思いますよ。トータルで考えると満足度は8割、9割くらいですね」とAさん。

【画像2】洗濯機置き場がバルコニー横にある珍しい間取りだが、干す作業は楽だそう(左)。白い部屋に自然光が差し込み暖かみを感じるリビング(右)(写真撮影:井村幸治)

【画像2】洗濯機置き場がバルコニー横にある珍しい間取りだが、干す作業は楽だそう(左)。白い部屋に自然光が差し込み暖かみを感じるリビング(右)(写真撮影:井村幸治)

【画像3】外を眺めながら調理ができるキッチン。料理も楽しくなりそうだ(左)。押入れスペースはつっぱり棒を活用してクローゼット風にプチDIY(右)(写真撮影:井村幸治)

【画像3】外を眺めながら調理ができるキッチン。料理も楽しくなりそうだ(左)。押入れスペースはつっぱり棒を活用してクローゼット風にプチDIY(右)(写真撮影:井村幸治)最初は躊躇したけれど予想以上に快適、団地ならではの暮らしにも満足

●Wさん(40代) リバーサイドしろきた(大阪市都島区) 入居後12カ月 2人暮らし    
1979年8月~1980年9月完成 築35~36年 60.62 m2 家賃8万1700円

【画像4】南面3室、キッチンに窓があるタイプ。(MUJI×UR plan02) ※家具配置はプラン例なので実際とは異なる(写真撮影:井村幸治)

【画像4】南面3室、キッチンに窓があるタイプ。(MUJI×UR plan02) ※家具配置はプラン例なので実際とは異なる(写真撮影:井村幸治)

「前はURの新築賃貸マンションで暮らしていました。MUJIのインテリアテイストが好きだったことと通勤利便性や家賃を考えてこの部屋に転居したのですが、“団地”ということで最初は躊躇しましたね。床暖房や宅配ボックス、オートロックといった設備はありませんが、でも住んでみると予想以上に住み心地はいいです。

南向きで日当たりは良好、公園が目の前にあって春は桜がきれいです。団地内の公園で紙芝居をやっていたり、野菜の移動販売車がきたり、ファミリーの方がたくさん住んでいる団地ならではのコミュニケーションも気に入っていますね。

使いにくい点はキッチンのコンロ。縦型のレイアウトで大鍋が同時に使えないことと魚焼きグリルがないこと。お風呂は追い焚き機能も付いていますが、欲を言えばもう少し広ければうれしかったですね。洗面所はドラム式の洗濯機設置には、ちょっとスペース的に厳しそうです。

あとは冬の寒さ。間仕切りがほとんどなくて60 m2の広い1LDKのような使い方になるので、どうしても気密性が保てないようです。ただ、夏は涼しくてエアコンをつけるとすぐに効く。上下階の生活音や外部の騒音は気になりませんが、たまに配水管の水音が聞こえることがありますね」とWさん。

古い集合住宅では給排水管が居室内を上下に貫くように配置されている設計が多いため、水が流れる気配がすることがあるようだ。総合点で考えるとWさんの満足度も高い。

【画像5】鴨居を活用してシェルフ代わりに使える小天井(左)。きれいに整理されたラック、モノを増やさないようにするため土曜日の午前中は掃除と整理整頓の時間だと決めているそうだ(右)(写真撮影:井村幸治)

【画像5】鴨居を活用してシェルフ代わりに使える小天井(左)。きれいに整理されたラック、モノを増やさないようにするため土曜日の午前中は掃除と整理整頓の時間だと決めているそうだ(右)(写真撮影:井村幸治)夏は涼しくエアコンを設置していません! ローコストでシンプルに暮らせるのがいい

●Tさん(30代) 泉北茶山台二丁目  入居後23カ月 2人暮らし    
1971年10月~1972年12月完成 築43~44年 46.68 m2 家賃5万4200円

【画像6】南面3室、キッチンに窓があるタイプ。(MUJI×UR plan03) ※Tさんの住居は反転タイプ、家具配置はプラン例なので実際とは異なる(写真撮影:井村幸治)

【画像6】南面3室、キッチンに窓があるタイプ。(MUJI×UR plan03) ※Tさんの住居は反転タイプ、家具配置はプラン例なので実際とは異なる(写真撮影:井村幸治)

「転勤も多い仕事なので、荷物も減らしシンプルに暮らしたいと思ってこの部屋を選びました。暮らしてみて良かったのは、賃料や光熱費が節約できて生活コストがかからないこと。実はエアコンをつけてないんですよ。寝室の窓を開ければ風が入ってリビングから抜けていき、夏場も扇風機だけで快適なんです。トイレやお風呂にも窓があるし、バルコニーも広くて日当たりや眺めもいい。春の桜、新緑、紅葉と四季の変化を楽しめます。

気になる点をあえて言うならカウンタ−キッチンのシンクからしずくが跳ね飛ぶこと。それから、夏が涼しい分、冬は寒いですね。去年はホットカーペットで耐えましたが、この冬は部屋にもマッチする石油ストーブを買いました(笑)。ちょっとした調理もできるし、炎がある部屋も良い感じだと思い始めているところです。

広さは2人暮らしだと十分、コンセントは少し不足気味だけど、電化製品も少ないので大丈夫。収納は少なめですが、不要なモノはすぐに処分するし、アルバムや趣味のモノは実家に預けるようにしています。シンプルな白い壁は和にも、洋にも合うので、次の転勤まではこの部屋での暮らしを楽しみたいです」とTさん。

【画像7】可動式のテーブルをキッチンカウンターと一体化して使用。バルコニーへの扉もある(左)。洗面所とトイレのドアもレトロな雰囲気、トイレとお風呂にも窓がある(右)(写真撮影:井村幸治)

【画像7】可動式のテーブルをキッチンカウンターと一体化して使用。バルコニーへの扉もある(左)。洗面所とトイレのドアもレトロな雰囲気、トイレとお風呂にも窓がある(右)(写真撮影:井村幸治)

【画像8】ストーブで焼き芋をつくることも。床の「麦わらパネル」は夏もさらりとした足触り(写真撮影:井村幸治)

【画像8】ストーブで焼き芋をつくることも。床の「麦わらパネル」は夏もさらりとした足触り(写真撮影:井村幸治)団地ならでは「田の字」プランの特性を理解すれば快適な暮らしができそう

3組に取材したところ、団地リノベーション住宅の住み心地には、いくつかの共通点が浮かんできた。

・両面に開口部があり、住棟間の間隔もゆったりしているから、夏場は風が抜けて想像以上に涼しい
・現代の住宅と比較すると密閉度が低く、間仕切りも取り払っているため、冬場は寒さ対策がポイント
・水まわりを拡大できないため、洗面・浴室の広さにはやや不満も残る(建築当時には洗濯機置き場がなかった!)
・あえて収納スペースを減らしているので、モノを増やさないために暮らし方の工夫が必要(実家も有効に活用している)
・階段利用だが、余り苦にはしていない
・立地や家賃を考えるとコストパフォーマンスは高い

この背景には、古い団地住宅特有の「田の字」型プランの特性がある。「田の字」型に和室が間仕切りされた住戸が階段室をはさんだ両側に配置されたプランは、南北両面に開口部を設置できるため通風・採光面で有利なのだ。ただ、部屋数を増やすため洗面・浴室などのスペースは小さく、洗濯機置き場も考慮されてない。また、気密性も現在の住宅よりも劣っている。

こうした特徴を理解したうえであれば、築古の団地物件でも十分に快適に暮らせるだろう。取材した3組とも団地の前は賃貸マンションや実家など住まいのタイプもいろいろ。最近の住宅の居住性も知ったうえで、団地の暮らしを楽しんでいる姿が印象的。Aさんが言った「最新設備のマンションと比べると違いもありますが、暮らし方を変えよう、と思えばできるんですよ」という言葉が耳に残っている。

シンプルな住まいだから、自分の好みやスタイルに合わせた暮らしができる、その舞台としては築50年の団地も十分に対応できるということだろう。「古い=住みにくい」という固定概念は忘れて、自分の暮らし方に会った部屋を探してみると意外な掘り出し物件に出会える可能性も高いと思う。●MUJI×UR団地リノベーションプロジェクト
HP:http://www.ur-net.go.jp/muji/
元記事URL http://suumo.jp/journal/2015/03/19/79899/

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