金融機関がガッカリするNISAの惨状、活用されない本当の理由
NISA口座の多くが「休眠中」。キャンペーン経費も回収できず
2014年1月に始まったNISA(少額投資非課税制度)ですが、金融機関は軒並み苦戦を強いられているようです。
銀行や証券会社では、国が新しく始めたNISAを引き金に新規顧客を開拓しようと、口座開設キャンペーンと称し金券プレゼントなど躍起になっていました。NISAは、運用で得た利益に対し本来であれば20%課税するところ、非課税となるため、これまで投資に関心がなかった人でも大いにモチベーションが高まるだろうと予想されていたのです。
しかしながら実際は、口座開設をした人は多いものの、実際に開設したNISA口座にお金を入れ、投資商品を購入した人は半数にも満たず、そのほとんどが「休眠口座」なのだそうです。これでは、大掛かりなNISA口座開設キャンペーンの経費も回収できません。
金融機関をガッカリさせたNISAですが、何が問題なのでしょうか?
非課税の対象は「リスク商品のみ」で未経験者にはハードルが高い
NISAというのは、投資用の専用口座のことで、この口座を開設し同口座内で投資をすると、運用利益が非課税になる仕組みです。前述した通り、通常の口座で投資をすると、利益に対し20%の税金がかかるため、NISAの非課税メリットは非常に大きいものがあります。
ただし、口座内で投資可能なお金は「1年間100万円まで」と制限があります。また、非課税の対象となる金融商品は、株式や株式投資信託など、いわゆる「リスク商品のみ」であるため、投資未経験者あるいは初心者にとっては、やはりハードルが高いというのが現状です。
投資商品を買わなければメリットを受けることも損することもない
かつ、NISAの非課税対象となる運用期間は5年間で、その間に運用利益が上がらなければ非課税メリットは受けられず、ただ損をするだけとなります。ここもまた、投資に不慣れな人にしてみれば、おじけづいてしまう点とも言えるでしょう。休眠口座の持ち主は、実際何を買ったら良いのかわからない、という人も多いかもしれません。
NISAは投資専用口座のため、そもそも投資をしたいと思っていない人にとっては「口座開設のみを行い、プレゼントをもらってそのまま放置」というのも、ある意味正しい選択です。投資商品を買わなければ、税制メリットを受けることもありませんが、損を被ることもありません。
資産運用に関する適切な情報提供と資産形成サポートが求められる
しかし、NISAの活用が伸びない本当の理由は「投資に対する理解不足」にあるのではないでしょうか?「貯蓄から投資へ」という掛け声はありますが、実際に資産運用に真剣に取り組んでいる人は日本においてはまだまだ少数派でしょう。しかし、「投資」というのは人生設計を考える上ではとても重要なスキルです。本来ならもっと投資に対する理解を示す人が増え、NISAは活用されるべきでしょう。
例えば40歳の人が25年間をかけて老後資金3,000万円を貯める計画を立てたとしましょう。運用利回り0%で積立をすれば、月々に必要なお金は10万円です。しかし、運用利回り3%が実現できれば月々の積立額は68,000円で良く、差額の32,000円は今の生活をより豊かにするために使うこともできるのです。
給与がなかなか伸びない中、増税、社会保険料負担増は確実に私たちの可処分所得(実際に使えるお金)を減らしています。今後、金融機関には口座開設の獲得のみに力を入れるのではなく、資産運用に関する適切な情報提供と資産形成のサポートが求められるようになるでしょう。それが、これからの大きな課題なのではないでしょうか?
(山中 伸枝/ファイナンシャルプランナー)
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