親の自己満足か?「2分の1成人式」の意義
小学校で急速に広がる「2分の1成人式」
20歳を祝う「成人式」の2分の1に当たる、10歳(小学4年生)を迎えたことを祝う「2分の1成人式」が小学校で急速に広がっています。
「2分の1成人式」では、「子どもの個別発表」「保護者が手紙を贈る」「合唱披露」「小さい頃の写真などを放映」「成長記録やアルバムを作る」「タイムレター(将来、開封予定の手紙)を書く」などが行われるようです。
個別発表では、子どもが一人ずつ自分の将来の夢や両親への感謝の気持ちなどを書いた作文を読み上げ、司会進行は先生ではなく、子どもが担当し生徒主体で考えさせるイベントにもなっています。
「2分の1成人式」に保護者の9割近くが満足
行事内容や学校にもよりますが、「2分の1成人式に満足である」という保護者は9割近くに上ります。
・子どもの成長を実感して感動した。
・親子が互いに、普段はなかなか言えない感謝の気持ちを伝え合うことで、家族の絆が強まった。
・自分の気持ちを自分の言葉で表現することが素晴らしかった。
・わが子の成長だけでなく、昔から知っている子どもの友だちの成長も実感できた。
・将来の夢を発表したことで、自分の人生に対する責任を自覚したのか、学校から帰ってきてすぐに宿題に取り組むようになり、お手伝いも自分から進んでやるようになった。
・子どもと話をする機会が増えた。
このような声が聞かれます。
親が家族を美化し強制すれば子どもにとって負の側面も
「2分の1成人式」は保護者参加の新たな学校行事になりつつありますが、さまざまな事情を持つ家族への配慮についての懸念もあります。また、親の満足感だけではなく、子どもにとっての教育的価値がなければいけません。
注意点として、親は感謝されるほどに「子どもに尽くしているはず」という幻想が、式の全体を覆っているかもしれないということです。親が家族を美化し、子どもにそれを強制すれば、家庭内で心の傷を負った子どもはイベントから離れていく結果となります。例えば、親のいない子であれば、親代わりになっている人たちへの感謝を述べても良いでしょう。
10歳になる児童が自立した大人を意識することが重要なポイント
そもそも成人式とは、成人を祝う儀礼として元服など古くよりありましたが、戦後敗戦により虚脱にあった青年たちに明るい希望を持たせ励ますために始まり、「おとなになったことを自覚し、みずから生きぬこうとする青年を祝いはげます」を趣旨として全国で実施さるようになりました。
この趣旨をとらえると「2分の1成人式」は、10歳になる児童が、大人になる半分の年齢で、大人になることを意識するためのものです。つまり、自立した大人を意識することが、イベントに求められる重要なポイントです。
大人の押しつけではなく、子どもたちが自ら考え、テーマを見つけ運営することが大切で、学校や保護者は黙ってそれを楽しむ。この精神があれば「2分の1成人式」の存在意義となるのではないでしょうか。
(田中 正徳/次世代教育プランナー)
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