アート鑑賞の質を深める「ディスクリプション」ってナニ?
世界有数のアート大国・日本。美術館に足を運べば、常設展に加え、様々な企画展も開催されています。人気の企画展では、作品を見るのに長蛇の列、何時間も待たなくてはならないときも。
しかし、いざ作品を前にすると、横に書かれた作品解説を読むばかりで、実際の作品を見ている時間はほんの数十秒……といった経験に思い当たる節はないでしょうか。あるいは一口にアートを見るといっても、具体的にどのような意識をもって見たらよいのか、わからないという方も多いかもしれません。
アートエッセイスト・藤田令伊さんによる『アート鑑賞、超入門!』は、フェルメール、モネやミレーといった巨匠から現代作家まで、実際の数々の作品を例にあげながら、どのように芸術作品を見ることができるのか、アート鑑賞の際のポイントをわかりやすく解説していきます。
本書のなかでは、様々な鑑賞のポイントが示されていきますが、まず、鑑賞の第一歩としてのポイントは、「よく見る」こと。とにかく見ることが重要だといいます。しかし同時に、「よく見る」ことは、なかなか難しいことでもあると指摘。眼に映っているのに見ていない、ということが人間本来の性質としてあるのだといいます。
そこで藤田さんがすすめるのは、「ディスクリプション」。たとえば日本の国旗ならば「白地の布の真ん中に、赤くて大きな丸がシンプルに描かれている旗」といったように、アート作品を自ら言葉に変換して説明してみることをすすめます。
「ディスクリプションを意識して行うことによって、見落としていた部分に視線を向け、作品全体を隈なく見渡すことができるようになります。また、言葉にすることによって、漠然としか見ていなかったものをはっきり認識できるようになったり、細かいところをしっかり観察できたりする効果もあります」(同書より)
ディスクリプションを鑑賞する際にとり入れることは、作品を丁寧に、「よく見る」ことに繋がるようです。そして「よく見る」ためには、「時間をかける」こともまた重要なのだといいます。その際のポイントは、「時間をかけても何も見えてこないと思っても、それでもなお作品を見続けること」(同書より)。
時間をかけてじっくり見ていると、当初は注意が向けられていなかった場所にも注意が向かうようになり、次第に見えてくるものがあるのだといいます。同書で示されるアート鑑賞のポイントをおさえたうえで、実際の作品を前にすれば、新たな発見に出合うことができるかもしれません。
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