「嫌い」「危ない」で消える学校の風景、過保護の代償
ジャポニカ学習帳から昆虫の表紙が消える
「ジャポニカ学習帳から昆虫の表紙が消えた」。学習帳を愛用していた親の世代なら、このニュースに驚いた人も多いかもしれません。「娘が昆虫写真が嫌でノートを持てないと言っている」「授業で使うとき、表紙だと閉じることもできないので困る」など、保護者だけではなく、教師からも「気持ち悪い」という声が上がったそうです。
子どもからすると、ノートを使う機会は多く、学校の授業や家に帰ってからの宿題、翌日の準備などにも関わってきます。学校の先生も、ノートを集めたり、添削したりと、目に触れる機会は少なくありません。
確かに、都心部を中心に昆虫の姿は昔ほど多くは見られなくなりました。しかし、それでも全く生息しなくなったわけではないのに、こうした声が上がってくるようになったということは、昆虫に対して嫌悪感を示す人が増えてきた、虫に接する機会が減った、ということかもしれません。
「危ない」という理由でアルコールランプも消えた
そのほか、「危ない」という理由で消えている学校用具に驚く人も多いことでしょう。例えば、理科の実験でおなじみのアルコールランプです。
危険の理由は、「児童・生徒が実験机から落とす可能性がある」「アルコールが気化し、爆発する可能性がある」「アルコールランプが傾いて液が芯の近くまでいって燃えあがる可能性もある」というものです。
さらに、今どきの子は「家庭でマッチを擦る経験をしていない」ため、アルコールランプに火を付けるという実験以前の段階で時間がかかってしまうという理由もあるようです。学習時間が限られる中、実験をスムーズに進めるためには、より安全で、管理や指導しやすい器具に変えていくということは合理的といえるでしょう。現在では、アルコールランプにかわり、ガスバーナーやガスコンロが一般的となっています。
自然から学ぶ機会が損なわれてしまう
少し言い過ぎかもしれませんが、私たち人間が自然に対して関心を払わなくなってきているのではないでしょうか。
雄大な山や美しい草花、生き物からは感動を覚え、災害からは人の力が到底及ばないことを身を持って学ぶことができます。
気持ち悪い、危険という過保護的な見方では、ますます自然から学ぶ機会が損なわれてしまいます。自然と共に私たち人間があるということを自覚するためにも、自然とたくさん触れ合う機会を設け、自然と遊ぶ楽しさを子どもたちに伝えていかなければならないと思います。
(田中 正徳/次世代教育プランナー)
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