【Interview】毎日1秒の自分史ビデオ『1 Second Everyday』が世界中で愛される理由
『1 Second Everyday』は、その名の通り毎日1秒ずつのビデオを切り取って、1年分の『自分史ビデオ』を作れる大人気アプリ。
その創設者で社長のセザール・クリヤマ氏のビデオはYouTubeで89万回再生され、VimeoのStaff Pickにも選ばれた。
『1 Second Everyday』を使って毎日の生活の1秒1秒を重ね合わせると、自分では気がつかない変化が見える。その撮影の手軽さと、過去の出来事を追体験できる不思議な感覚を求め、世界中でヘビーユーザーを増やしている。今回はその生みの親であるセザール・クリヤマ氏に、話を聞いた。
■広告会社に就職も、満足できず
Q.まずは、社長の経歴を教えてください。お名前がクリヤマさんということで、日本とも繋がりがあるのでしょうか?
「私はペルー生まれ、アメリカ育ちの日本人ハーフです。映画やテクノロジーに夢中の少年時代を過ごしました。
芸術大学時代はコンピューター・アニメーションを専攻し、そして広告業界に就職しましたが、クリエイティブな視点からは、満足できる仕事ではありませんでした。」
Q、このアプリを開発するに至った経緯は?
「休みの日、私は常にパーソナルプロジェクトを決めて、それを作ることに集中していました。その中の一つは私が監督したミュージックビデオで、ネット上でとても話題になりました。
このことをきっかけに、私は2年間できるだけ貯金をして、仕事を辞めて1年間休暇を取ることを決心しました。
ちょうど仕事を辞める前の月に、この先のことを記録する方法を考えていました。私はその時30歳になる前で、この魔法のような1年の休暇中に30歳を迎えたことを、忘れたくなかったのです。もしかしたら、こんな自由な時間は僕の人生で1回だけかもしれないしね。
簡単で、早く、ずっと続けられるものにしたかった。もし、毎日1つだけ思い出に残ることを録画して、そこから1秒だけセレクトし、それを1年続けたら?
たった6分のビデオで、この1年の休暇の毎日の出来事を追体験することができると思いついたのです。そして、パーソナルプロジェクトとして、『1 Second Everyday』を始めました。
そして1年後TEDカンファレンスに招待され、そのプレゼンの様子がネットで大きく拡散されるにしたがい、『私も同じことがしたい!』というコメントを多く頂きました。
そして1年間の休暇の後、広告業界に復職するのではなく、みんなが簡単に使える『1 Second Everyday』アプリの開発を始めました。」
Q、ユーザーには、どのように『1 Second Everyday』アプリを使ってもらいたいですか?
「このアプリの目的は、毎日起きていることを簡単に記録することです。アプリには「リマインド」機能も付いていて、毎日欠かさずビデオを録画できます。
撮りためた1秒1秒をまとめて見たい時は、日付を選択するだけでアプリが自動的に連続したムービーに編集してくれます。 SNSでシェアしても良いし、自分だけのビデオとして取っておいても良いですね。」
Q.このアプリを開発時に苦労した事はありますか?
「このアプリはリリースから2年を迎えましたが、私たちのような小さなチームには本当に格闘の日々で、苦労だらけです。iOSや、Androidのリリースの度に最新状態の維持に大変な作業を強いられます。
ちなみに、今はビッグブランドとコラボした新機能を現在開発中です。きっとこのアプリを次のレベルへと押し上げてくれるでしょう。」
■自分の『時間を稼ぐ』 キーワードは『貯金』
Q、「過労死」という言葉を生み出すぐらい日本人は会社に依存していることで有名ですが、クリヤマさんも広告会社に勤務していた頃は毎日夜遅くまで働いていて、その生活を一旦ストップしてこの大ヒットアプリを開発したのですよね?
「そうですね。私はよく『自分の仕事に満足していない』と言う人に会うことがあります。仕事を失うのを恐れ、辞めたら次のがないのではと恐れている。自分のやりたい事があるのに、忙しすぎてできない。
でも、このアプリのアイディアは私が仕事を辞めたからこそ、生まれたのです。このアプリを開発するために、仕事を辞めたわけではないのです。私はこのアプリを、仕事を辞めた『後に』始めたんです。
私からのアドバイスは『時間を稼ぐ』ことですね。『十分な貯金』をして月収が途絶えるリスクを取れるようにする。1年の長い休暇でなくても、2ヶ月や6ヶ月間だけ仕事を辞め休暇を取った人が居ます。
仕事で体力や創造力を全て消耗しては、自分自身にエネルギーが残りません。でも、もし自分のやりたい事だけをできる時間があったなら・・。そんな時こそ、この先ずっと打ち込みたいと思うような大きなアイディアが生まれるし、自分の全ての力をそれに集中できます。」
小さなアイディアを大きく膨らませ、クラウドファンディングによって最初のリリースにこぎ着けたクリヤマ氏。
「夢を叶えるために貯金を!」とは案外日本人的な答えだが、『脱サラ』して夢を叶えたクリヤマ氏のアプリ事業は始まったばかり。『1 Second Everyday』は、使い始めると、ずっと使い続けたくなる魅力的なビデオログ・アプリだ。
(Writer: Saera Jin)
ウェブサイト: https://techable.jp/
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