円安は「国産木材」シェア拡大の起爆剤となるか
輸入材は軒並み値上がり。国産材は横ばいで推移
すっかり定着した感のある円安の影響は、住宅用木材の価格にも当然のように反映されています。(財)日本木材総合情報センターのホームページによると、年末から年初にかけて、輸入材は北米産、南洋産、欧州産を問わず軒並み値上がりしており、それに比して国産材に関しては、ほぼ横ばいで推移していることが読み取れます。こうした情勢に敏感な大手ハウスメーカーは、国産材の比率を上げる動きに出ているといわれています。
このことは、「地産地消」や「運送エネルギーの軽減による省エネ化」といった今日的な観点からも歓迎すべきことですが、このままこの傾向が定着するかといえば、どうやら簡単ではないようです。
構造的な欠陥が解消されなければ、いずれ頭打ちに
従来から指摘されていることですが、我が国の林業の担い手不足、小規模な経営形態、供給量の不安定、品質管理の不備など、いわば構造的な欠陥が解消されなければ、円安がもたらす好ましい傾向も頭打ちになる危険性をはらんでいると言わざるを得ません。
政府も「木づかい運動(国産材の積極的な利用を通じて山村を活性化し、CO2をたっぷり吸収する元気な森林づくりを進める運動)」を展開し、各地方の都道府県も地元の木材の利用を支援する施策を長年にわたり実施していますが、国産材のシェアが飛躍的に伸びているという事態には未だに至っていません。
カギを握るインターネット。国産材活用を加速させる可能性を実感
しかし、観点を変えれば、私には、住宅建築における国産材の利用は確実に進行するという、実体験に基づく確信のようなものがあります。それを裏付けるのは、インターネットの存在です。近年のインターネット普及は、住宅建材の分野にも例外なく大きな影響を与えています。
最近、自宅のリフォームで小さな部屋の壁・天井を杉の羽目板で張ったのですが、ネットで調べてみたところ、価格も手頃で多品種を常備したサイトが見つかり、大いに役立ちました。また、板材に限らず、家具や壁仕上げ用の突板シートや床の間の突板合板なども比較的、低価格で良質なものが見つかりました。
その生産者は広島や岐阜、熊本といった木材の原産地に拠点を置いており、今のところはまだ規模も小さく、大量に供給するには難があるようですが、将来性については期待できると考えます。何より、品質の良いものを提供したいという熱意が感じられ、顔が見えて信頼がおける、という感想を強く抱きました。住宅の内装仕上げといえば、今までは「まず、ビニールクロス」というのが価格面を考えれば無難なところでしたが、それが多様化し、選択肢が増える可能性を感じた体験でした。
味わいのある国産材を使えば健康的で心地良い住環境が得られる
すべての部屋をビニールクロスで仕上げるという単調で趣の無いものでなく、一部の部屋、場所に国産の杉やヒノキなどの木材を使えば、見た目も映え、感触も温かく、香りもほのかに漂い、さらにいえば調湿の効果もあって、健康的で心地良い住環境が得られるのではないでしょうか。
どうしても手の届き難い存在であった生産者と消費者がネットの力を借りて直接取引をし、場合によっては設計者などの専門家のアドバイスを受けながら、味わいのある国産材を使って自分好みの家を建てたり、リフォームをしたり。そんな時代が確実に来ています。
(石川 雅洋/一級建築士)
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