女性の管理職登用、働く女性と政府の思惑にズレ
政府の懸命な音頭とは裏腹に7割以上が「管理職になりたくない」
安倍首相がアベノミクスの大きな柱として掲げる女性の活躍推進。女性閣僚を増やしたり、企業に対し女性管理職者比率の向上を求めたりと、さまざまなアピールを行っています。
NTTドコモが運営する「みんなの声」の結果によると、「管理職になりたい?」という質問に対し、女性回答者のおよそ7割以上が「なりたくない」と答えました。
政府の音頭とは裏腹に、実際の女性労働者の多くが管理職ポストを求めていないといった皮肉な結果が見て取れます。では、どうすれば女性が輝く組織づくりを実現することができるのでしょうか?
働く女性の全員が、政府の想定する「女性」ではない
日本に女性管理職がなかなか増えない要因は、次のようなものが考えられます。まず、「女性には重要な仕事を任せない」といった会社側の問題です。確かに、家族の事情や出産・育児の影響を受けやすい女性社員は、男性社員に比べて安定感に欠けることが多いのも事実です。特に、人材に余裕がない中小企業ほど、女性に重要なポストを与えにくいのかもしれません。
次に、家庭環境などにより男性並みの労働ができない、もしくは難しいといった、女性ならではのライフスタイルが挙げられます。給与面・労働環境にゆとりのある企業が少ないご時世です。「管理職となって、それなりの給料や重要な仕事を得たいけれども、それでは実生活が成り立たない」といった女性も多いのではないでしょうか。
また、「仕事だけではなく、家事・育児も大切にしたい」と考える女性は少なく、働く女性の全員が、政府の想定する「子どもを保育所に預け、バリバリと働きたいと考える女性」ではないことも考慮しなければなりません。
多様性を受け入れ、労働環境を整備することが必要
そもそも女性だからという理由で管理職へ登用することや、女性の活躍促進のために女性管理職比率を向上させれば良いという考え自体がナンセンスです。さらに言えば、女性が管理職に就くことだけが「女性が輝く社会」へつながるとも思えません。
女性でも男性でも、有能な人もいれば、そうでない人もいます。また、女性は男性より仕事能力が低いということはありません。有能で意欲ある人材がいれば、性別を問わず重要なポストへ登用し、責任ある仕事をしてもらえれば良いだけのことなのです。日本における女性の管理職比率が低い要因は先ほど述べた通りですが、しっかりと働く意思能力がある人すべてが適切なポストに就く機会が与えられるような労働環境の整備は必要でしょう。
ここ数年で、人々の働き方は多様化しています。性別やライフスタイルの違いといった多様性を受け入れる重要性は高まっています(ダイバーシティマネジメント)。フレックスなど労働時間を労働者自身が融通できるような制度を採用したり、また、公正な人事考課制度の構築や評価者への教育訓練を実施するなど、企業側ができることはまだまだあるはずです。
(大竹 光明/社会保険労務士)
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