ひろゆきイズムの継承者になりたい!『2ちゃんねる』ブラウザの作者・山下遼太インタビュー 前編
『2ちゃんねる』ブラウザ『Jane Style』の開発者であり、株式会社ジェーンを立ち上げた山下遼太さんにインタビューをいただくことができました! 25歳の社長が考えるインターネット、コミュニティ、そしてご自身について語っていただきました。
■はじまり
ガジェット通信記者・長田(以下・長田): 僕は以前、別の『2ちゃんねる』ブラウザを使っていたのですが、「ここがこうなってたらいいなあ」という要望を突き詰めていったら、『Jane Style』に行き着きました。さらにアップデートのお知らせなんかを見ながら飛び込んできたニュースが法人化、ということでびっくりしました(笑)。
株式会社ジェーン 山下遼太氏(以下・山下): 以前から「どうすれば(当時『2ちゃんねる』管理人だった)ひろゆきさんに会えるのかなー」という事を考えていましたので、今回のブラジルさんのインタビューを楽しみにしていました。
長田: あいにく、今日は不在なので申し訳無いです。
ガジェット通信・深水英一郎(以下・深水): もし来ても声、出ないんですけどね(笑)。
※このインタビューの前日、ニコニコ生放送でのひろゆき氏はひどい風邪でかすれ声しか出なかった
■ひろゆきさんや夜勤さん、Jimさんについて
山下: ひろゆきさんは僕の尊敬する方の一人です。誰もが社会的な立場を超えて自由にコミュニケーションできる場を作った偉大な方だと思います。世間では適当な人だと思われてるかもしれませんが、誰よりも『2ちゃんねる』を考えて行動されているのは間違いないですよね。ユーザーが楽める場所を永続的に継続できる仕組みを作ることに注力されていることはすばらしいです。
夜勤さんは飄々(ひょうひょう)とスレッドなどに登場されていて、どの辺りが真意なのかわかりかねるところがある方ですね。でも、最も『2ちゃんねる』のことを大切に考えていらっしゃる方の一人だと思います。Jimさんも『2ちゃんねる』の莫大なトラフィックを支える立派なサーバー会社を運営されてると思います。『2ちゃんねる』というコミュニケーションの場を裏で支えてる運営者の皆様を尊敬しています。そして『2ちゃんねる』があってこその『2ちゃんねる』専用ブラウザです。
『2ちゃんねる』専用ブラウザは『2ちゃんねる』サーバーに負荷をかけてる割には、『2ちゃんねる』の広告売り上げには貢献していません。ですので、ひろゆきさんにお会いして、『Jane Style』などの『2ちゃんねる』専用ブラウザをどう考えられてるのか、というのを聞いてみたかったという思いはあります。(苦笑)
長田: 巡り巡って、『2ちゃんねる』全体に貢献できていれば良いですけれどもね。
山下: そうですね。『2ちゃんねる』の活性化につながっていればいいのですが…。『2ちゃんねる』専用ブラウザ憎し、みたいな感じだったらどうしよう、と思ってます。(本当に恐縮している様子)
■法人化について
長田: 『2ちゃんねる』を見やすくするツールがフリーウェアとして発生したものを元に、法人化という経緯を経たものは珍しいと思います。
山下: はい。
長田: 法人化することによってより認知度が高まり、たとえば初心者の方に「2ch見るならこのツールがいいよ」とお勧めしやすくなったりしますね。
山下: そうですね。開発が止まり、『2ちゃんねる』の仕様変更に対応できなる可能性は少なくなりますから。安心して使い続けられるソフトウェアを提供したいと思います。
長田: ずっと開発はお一人で?
山下: そうです。もともとオープンソースであったものに手を加えて開発を続けていました。
長田: 法人化で可能になった事や狙いなどお聞かせください。何がしたくて法人化に行き着いたのですか?
山下: なんといっても開発に専念できることです。チームを組んで開発に専念できれば、もっといい物を作って、新しい価値を創造できると思いますので。チームで開発すれば、(個人のときとは違って)シナジー効果でより良いソフトが提供できると思ってました。そのためには収益を考えなければダメだな、と思ったのも事実です。ちょうどタイミングよく、Yahooさんなどからお声がかかっていたこともあり、法人化に踏み切りました。
■開発体系について
長田: 今、現段階での開発は何人くらいでやっておられるんですか?
山下: 今は僕一人だけです。チームを組んでの開発は将来的な希望です。
長田: プログラムの世界というのは、やはり(人などを集めて)出来るだけ作成部分の専門化を進めた方が安定するのでしょうか。
山下: 人が多すぎたらまとまらないと思います。ですので、程よい人数が良いでしょうね。
深水: 一人のほうが良いでしょう(一同笑)。まあ、一人で手に負えなくなったりしたら、人を増やしていくのがいいと僕は思います。社員にはどんな人をご希望ですか?
山下: 僕は「ユーザー第一」がモットーなんですが、そこに共感してくださる方でしたら、ぜひ来ていただきたいな、と思っております。
■ユーザーのメリット
長田: 法人化による「ユーザー側のメリット」を教えてください。
山下: 開発スピードが安定することですね。今までは空いた時間で作成していたので、仕様変更への対応が遅れがちだったのですが、それが迅速に出来るようになると思います。あとフリーソフトでは、作者さんが突然いなくなる、とかウェブサイトごと無くなってしまう、とかいったことが良くあります。これはきっと進学とか就職で開発が出来なくなることが原因なのでしょうが、残念なことです。そういったことが無くなる、という点も、ユーザーの方にとってはメリットかと思います。
長田: 山下さんにとっても、一番好きなこと(プログラミング)に集中できますね。
山下: そうですね(笑)。やはり副業でやっていた頃は、修正しなくてはいけない不具合が山積みであったとしてもなかなか時間が取れないことがよくありました。そういうことが無くなるのはいいだろうなあと思っています。
長田: これまでは、空いた時間でこつこつとやっておられたんですか?
山下: プログラミングは、ノッているときが重要なので、僕の場合は一気に進めることが多かったです。朝フラフラになりながら出かけたりという事はしょっちゅうありました。会社としてやる以上は、決められた期間に決めた成果物を出さなくてはならなくなるので、時間の使い方は今後の課題です。
■収入源について
長田: 今の収入源について教えてください。『2ちゃんねる』ビューアーによる分配利益、『Yahoo!ツールバー』のバンドル契約、(多くはまだ明かないそうですが)検索業者との協業といったところなどがあるとお聞きしました。他になにかありますか?
山下: 動画検索をされている法人さんとの協業の話があるのですが、まだ、契約上お話できない箇所が多くて…すみません(苦笑)
長田: 他のインタビューでも、「Googleなのか、ニコ動なのか」と言われてましたね(笑)
発表が楽しみです。広告モデルは考えておられないのですか?
山下: ブラウザ内の広告は無いですね。だって、関係のないものを見せられるのは嫌じゃないですか(笑)。画面内に載せることは今のところ、考えておりません。RSSに対応することになった場合などは一行広告のパターンなどは考えられますけどね。
長田: ユーザーさんが結果的に便利であれば、そういったCMケースもありうるわけですね。
山下: はい。あと、『Sleipnir』などではティッカーという形でのRSS配信機能があるんですが、ああいうのは面白いですよね。
長田: テレビ的に一方的に情報が送られてくる、というのはウェブでは逆におもしろいかもしれませんよね。
■売り上げ目標
深水: 売上目標とかあるんですか?
山下: 今のところ、まだそこまで厳密には立てていませんね。というより、まだ、売り上げがどれ程になるのか読めない、というのは正直なところです。うちのソフトのユーザー層に、バンドル提供している『Yahoo!ツールバー』のユーザーさんがどのくらいいるのかはまだわからないですし。あと先ほどお話に上がった、ユーザーの広告に対するリアクション、といった数値も予測が不可能ですねえ。各社にはそれぞれ、蓄積された数字などがあると思うのですが、弊社の場合は、そういった数字がまだありません。
長田: やってみないと?
山下: そうです。やってみないとわからないなあ、と。なので、1か月2か月、と時間を重ねないと、人を雇うこともままならないです。ユーザーの幸せを追求する前に、従業員の幸せも保証しないといけませんからね。ある程度の地盤を固めて進みたいです。
深水: ジェーンさんに就職したら、どのくらいお給料もらえるんですか?
(一同笑い)
山下: それは……ええと。実は、いろいろな企業の経営者の方にそうした話を振ってみたことがあったんですが、「やりたい」という方の場合、結構安くても来てくれるそうなのです。同じ志があれば、ということなんですね。
深水: ふむふむ。
山下: 僕の考えてた額をとある方に話したら「それだったらその金額で3人雇ったほうが良いですよ」と言われました(苦笑)。有力サービスを提供していたり、心意気が一致していたりした場合、それでも来てくれる人というのが居るそうなんですね。そういうのを聞くと、お金じゃないのかなー、何てことも最近は思っていますね。
長田: 心意気次第、と。
山下: でも、従業員にも生活がありますからね。従業員が幸せでなければ、ユーザーの幸せなんて考えられないと思います。優秀なエンジニアを好待遇で迎え、いいサービスを一緒に作れる体制を作るのが僕の理想です。
深水: 募集するプログラマさんは専業ですよね?
山下: 設立当初は業務提携でもいいかなあ、と思ってましたが、現在は責任持って作っていただける方がいいと思い直し、専業で考えています。あと、『Jane Style』はDelphiで開発しているんですが、Delphiって主力の方の平均年齢が40歳ぐらいらしいんですね。「そういう人たちは高いよ!」ってとある会社のDelphi使いの方に言われました(笑)。それでも、Delphiで作りたい、という方は必ずいると伺ってます。もしDelphiを使えるエンジニアで、ユーザーのことを第一に考えられる人で、うち(ジェーン)のソフトをもっと良くしたい!という人がいらっしゃいましたら是非とも来ていただきたいです。
■オープンソース
深水: オープンソースでやってらっしゃったんですよね。
山下: もともとはオープンソースを用いての開発です。ただ僕のソフトは、既にオープンソースの流れが終わってたときに始めたんです。オートリロードは実況板ではかなり便利なのですけど、派生しているソフトの中に1秒リロードとかしちゃっているものがあったりしたんですね。それはさすがに負荷かけすぎてるだろうと。通信系のソフトウェアなんで、ちょっと数値いじっちゃったら、どんだけでも負荷かけることができるんですね。そういったことがあったので、クローズの流れになっていました。
長田: そういうことが続くと不幸せになっちゃいますもんね。
山下: 最近の『2ちゃんねる』って、設備の増強とチューニングの結果かなり強いシステムになってるじゃないですか。だからといって、ソフト側でさらに負荷をかけたら元も子もなくなりますよね。なので、実際のところ、(裏側から見て現場の方は)どうなのかな、と気になっています。とはいえ、聞いたときに、「このソフトでの通信はダメだ」と言われたら撤退しなきゃいけないので困っちゃうんですが(笑)。
深水: 黙ってたほうがいいかもしれないですね(笑)。
山下: なので、今日来るのは本当は怖かったです。会社を立ち上げてみたもののすぐ解散ということになれば、「何のネタやねん!」ってことになっちゃいますからね。
→後編へ続く(4月14日10:00公開予定)
執筆: 長田
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