冬場にキツくなる口臭、原因は?
毎年12月頃から「口臭が気になる」と訴える患者が増える傾向に
冬は空気が乾燥しがち。湿度の低下は、肌をカサカサにするだけでなく、口の中も渇きやすい状態にします。毎年12月頃から「口臭が気になる」「ネバネバ感がある」と訴える患者が増える傾向にありますが、口の乾燥によって、唾液の洗浄作用の低下や、口の中の細菌の増加を招くことが大きな原因です。
唾液には、さまざまな作用があります。中でも、食べ物をまとめて飲み込みやすくする作用、洗い流す作用、数種類の抗菌成分を含み口の中の細菌の増殖を抑える働きなどが知られています。したがって、十分に口の中が潤い、唾液が分泌されている状態であれば、虫歯にもなりにくく、口臭も少なく抑えられるはずです。
また、口の中にはもともと約600種類の口腔内細菌がすんでいるといわれていますが、逆に唾液が十分に分泌されない状況では、虫歯菌など悪玉の細菌が増殖し、短期間に虫歯が多発することがあります。
暖房を効かせた部屋で寝ると、起床時に強い口臭を感じることも
さらに、たたでさえ冬は乾燥しているのにもかかわらず、暖房を効かせた部屋で寝ていると、余計に口の中が渇いて、朝起きた時に強い口臭を感じることがあるようです。というのも、心臓の動きの調整や、汗や唾液の分泌などの体の機能を自動的にコントロールする自律神経のうち、眠っている間は副交感神経が優位に働きます。このことにより、唾液の分泌が抑えられるため、就寝中は口の中で乾燥が進み、細菌も増殖することから、朝起きた時にネバついた不快な状態となるのです。
鼻が詰まっているために口を半開きのまま寝ている人(いわゆる口呼吸)なども、口の中が渇いて同じような症状となります。
臭いのもとは、食べかすなどを原料に細菌が作り出す代謝産物
口臭は、原因により「生理的な口臭」と「病的な口臭」に分類されます。にんにくやお酒など食べ物や飲み物に由来する口臭や、起床時の口臭は「生理的な口臭」といいます。
一方、「病的な口臭」とは、虫歯や歯周病などの歯科疾患や、副鼻腔炎(いわゆる、ちくのう症)などの耳鼻咽喉科的疾患、糖尿病などの内科的な原因で生じるものをいいます。「病的な口臭」では、原因疾患の治療が必要です。ただし、元気な人であれば、口臭の原因の大半は口の中にあり、成人であれば歯周病に起因するものがほとんどです。まずは歯科医院で歯周病の有無をチェックしてもらいましょう。
いずれの口臭も、不快臭のもとになる原因物質は、揮発性の硫黄化合物、硫化水素やメチルメルカプタン、ジメチルサルファイドなど数種類の臭い成分とされています。これらは、食べかすなどを原料に細菌が作り出す代謝産物です。細菌を少ない状態にコントロールすることが予防のポイントといえます。
就寝前に入念に歯磨きをして、バイオフィルムを擦ってはがす
薬局には、さまざまな「口臭ケアグッズ」が並んでいますが、消毒効果のあるグッズだけで細菌の増殖は抑えられません。うがいだけで虫歯菌や歯周病菌が撲滅できないのと同様に、臭い物質を作る悪玉の細菌は、種々の細菌同士が粘着して分厚く結合した、歯垢などのバイオフィルム(生体膜)の内部にひそんでいます。バイオフィルムは化学的にとても強固なために、内部には消毒薬は浸透しません。細菌の数を減らすという意味で、就寝前に入念に歯磨きをして、バイオフィルムを擦ってはがすことが大切です。
特に細菌の温床になりやすい歯の間は、デンタルフロスや歯間ブラシなども併用した方が効果的です。さらに十分に清掃した後に、消毒効果や保湿成分の入ったうがい薬ですすげば、口の中に漂っている細菌も減らせます。
ただし、「生理的な口臭」が無い人はいません。やり過ぎや気にし過ぎは禁物です。
(飯田 裕/歯科医)
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