アメリカにも”東方”みたいな同人ゲームってあるの? 多言語ゲーム作者に聞いてみた
『月姫』『ひぐらしのなく頃に』『東方シリーズ』……最近ネットで話題になったこれらの作品に共通することはなんだろうか? それは同人ゲーム出身ということだ。同人ゲームは「作者が好きだから作った」という商業を目的としない作品のことで、特に『コミックマーケット』といった即売会や『とらのあな』といった専門店で販売されているものを指す。最近は同人ゲームから商業ゲーム、アニメーションへと展開されるヒット作も多く、特に注目を集めている。
日本では市民権を得つつある同人ゲームだが、海外ではどのように受け止められているのだろう? 任天堂、ソニー、セガみたいに日本のゲームとして愛されているのだろうか? そもそも同人ゲームってあるの?
そこで、日米対応のビジュアルノベル『こえんちゅ!』を製作し、アメリカのアニメ系イベントでも古い歴史を持つ『A-KON』に日本から招待をうけたサークル『ぜろじげん』の代表マサシロウさんにお話をうかがってみた。
―こんにちは。アメリカのイベントに招待を受けたそうで…
『A-KON』はアメリカでも歴史の長いアニメコンベションです。多くのアニメファンが集まって一緒に作品を見たり、コスプレをしたりして楽しみます。そのなかに同人誌やグッズを販売できる即売会ブースというのがあって、そこに同人ゲームを出品しに行きました。
―どうして招待を?
私たちの作った体験版のゲームを海外のフォーラムに書き込みしたところちょっとした話題となって、コンベションスタッフのかたに声をかけていただきました。
海外でゲームを遊んでいる多くの方から反応があり、口コミみたいな感じで広がりました。『こえんちゅ!』は声優学校を舞台にしたアドベンチャーゲームなんですが、全ヒロインに日本語版と英語版のシナリオとボイスがはいってるんです。オープニングソングも両言語担当で、どちらの言語で遊んでも満足していただける内容じゃないかなと考えています。
―どうして両言語対応で作ろうとおもったんでしょうか。
元々全年齢のゲームが作りたくて、即売会で出してもなかなか成年向けと違って多くの人に手にとってもらえません。でも全年齢の持つ楽しさってあると思うんです。じゃあどこで出せばプレイして貰えるだろうって考えていました。企画を考えてた当時は、ちょうど「海外の美少女ゲームのユーザーに日本のメーカーがアクセスを規制する、しない」で結構話題になっていた時でして、「海外であれだけアドベンチャーをプレイしているユーザーにも遊んで欲しいなぁ」と思ったのが直接のきっかけですね。
体験版を出した時にアメリカをはじめ、ヨーロッパや多くの地域で遊んでもらった時に、プレイヤーの中には『声優をやりたいです!』という申し出もありました。「こえんちゅ!」には日本語ボイスには同人・プロかかわらず多くの声優さんが出ていますが、英語版の声優さんも参加してもらっています。音声の収録と加工が本当に大変でしたけど楽しかったですね。
―アメリカで同人ゲームを販売してみてどうでしたか?
僕らは『コミケ』に出る感覚と同じ感覚で参加したんです、事前にパッケージを送って、生のDVDは飛行機で直接持ち込みました。ダラスまでは飛行機で乗り継いで12時間くらいかかりましたね。到着してみたらアメリカで頒布するためのパッケージが現地で到着していなかったり(DVDパッケージだけウォルマートで買ったり)、なれない海外ということもあり結構大変でした。
イベントでは私たち以外に同人ゲームの出店は一緒に出したサークルのコと『ぜろじげん』の2か所以外全くありませんでした。もう完全アウェーみたいな感じですね。それでも出したぶんじゃ足りなくなってしまうことがありました。やっぱり本やイラストが多かったですね。
それでも事前に調べて来てくれた人がいたり、現地ではイベントブースでPanel(質疑応答形式のプレゼン)をやったんですが、日本の同人ゲームの開発に関して非常に多くの質問を受けて驚きました。
―アメリカに同人ゲームってあるんでしょうか?
ありますよ。日本の同人にあたるゲームはインディペンデントゲーム、あるいはインディーゲームというくくりであるそうです。今はiPhoneやXboxなど商業でも作れる環境が多くあります。アドベンチャーゲームも多くありますし、フリーで使えるエンジンを使って多くのゲームがあります。『A-KON』ではいませんでしたが、他のコンベンションにはゲームを定期的に出している人達もいます。自分はアドベンチャーゲームを中心なので他はよくわかりませんが海外では『Renpy』というフリーのエンジン(『吉里吉里』や『Nscripter』みたいなもの)があってWin/Mac/Linux対応で作る事が出来ます。プロのゲーム会社が使うものと同じエンジンを使えたりする環境が整っているので、質ともにとても高いゲームが多くあります。
―日本の同人ゲームはどのように受け止められているのでしょう?
『A-KON』は日本のアニメファンが多く参加しているイベントで、商業ブースでは同人ゲームも多く出品されていました。日本の同人ゲームを海外のPS3で配信しているRockin’ Androidの方と話しましたが今後多く増えて行きそうだなというのを感じました。
アニメではファンサブというのがあり、英語字幕を付けるファンがいたりしますが同様にPCゲームにも翻訳テキストを作るファンがいて、日本のゲームは随時翻訳されています。違法性は限りなく黒ですが、どうようにそれだけのファンやニーズがあるのも事実です。
―今後海外での同人ゲームはどうなるのでしょう?
アメリカの『4chan』という掲示板が主体になっている『Katawa Shoujo』やタイの『Re Angel』など海外でも日本風美少女ゲームを作っている人たちがいます。海外のコンベションでも『東方』や『ひぐらし』などのコスプレをよく見かけましたし、日本文化も浸透がかなりすすみ、次のタイミングとしては同人にスポットを当てられる機会は多くあるのかなと考えています。向こうからみるとプロとアマの違いというのはあまりなく、いいものはいい、良くない物は良くない、という良い意味でのオタク的な考えもしっかりあるので、同人ゲームという認識はあまりなくなりつつあるのかなと考えています。
―最後にひとこと
『こえんちゅ!代乃木声優物語~空と君とあの夏と』は2010年の秋ごろ完成予定で、『A-KON』で頒布したものと同じバージョンを今年の夏コミで委託(8/14(土)2日目東コ 38b NMB)する予定です。
現在は日本語・英語に加え、イタリア語・ドイツ語・スペイン語に対応したバージョンを作っています。将来的にはフランス語・韓国語・中国語にも対応させたいなとおもってます。興味があるかたがいたら、ぜひご協力ください!
ゲーム制作が誰でも出来るようになり、インターネットでの販売方法が発達した今、個人制作の作品がいきなり世界を目指せる環境が整ったといえる。iPhoneの世界では日本発で何十万ダウンロードのソフトウェアも現れている。『マリオ』や『ポケモン』、『遊戯王』のように日本から出て世界中でヒットした作品があるように、世界で愛されるゲームを作るのは夢ではない。今後多言語対応の同人ゲームが現れ、海外からも日本語対応の同人ゲームが現れるような新しい時代を予感させるお話だった。
多言語同人ゲームを作成するぜろじげんのサイトはこちら。
執筆:[NKH]ニコ生企画放送局 伊予柑
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