原発から一番近い商店街で、ニラレバ炒め定食を食べてきた
福島県双葉郡楢葉(ならは)町は、町のほとんどのエリアが、福島第一原発から20キロ圏内に位置する。
現在は、警戒区域指定が解除され(2012年8月10日)、避難指示解除準備区域に再編されている。
日中の立ち入りは可能だが、宿泊は許可されていないエリアだ。
近い将来の住民の帰還を目指すこの町の役場前で、小さな仮設商店街がオープンしたのは今年6月のことだ。
商店街の名前は「ここなら商店街」。
第一原発から約15キロメートルほどのところに位置する、3店舗しかないこの商店街に筆者が訪れたのは12月6日のことだ。
目当ては「武ちゃん食堂」の「ニラレバ定食」! ネットの口コミ情報を調べていたら、被災前の「武ちゃん食堂」の看板メニューだということが書いてあったので、食べてみたかったのだ。
【「ブイチェーンネモト」というミニスーパーと、うどんやソフトクリームを販売する「おらほ亭」に挟まれるように存在する「武ちゃん食堂」】
写真を撮り忘れたが、現地の放射線量は0.22μSv/h。
「武ちゃん食堂」は、元々は、楢葉町にある2つの駅のうちのひとつ、「竜田駅」そばで開業していた定食屋さんだ。昭和46年創業。ご主人の佐藤茂樹さんは二代目だ。ホールを務めるのは奥さんの美由紀さん。
「やはり、ニラレバ炒め定食がおすすめです」
と太鼓判を押してくれたので迷わずオーダーした。
【これがメニュー表。以前は「リクエストは断らない主義だから、何十種類もメニューが増えちゃった」との事だったが、現在は縮小運転中】
【出てきました。ニラレバ炒め定食。ご飯は大盛り100円。写真が下手でゴメンなさい…】
【正統派。レバーとニラだけのニラレバ】
早速いただく。
しょうがが効いていて、レバーには臭みがなく、これは美味しい! 味付けがしっかりしていてご飯がすすむ。やや塩気が強いのは、復興作業の肉体労働に従事する作業員さんたちが多く利用するお店だからだろうか。
余談だが、このお店は、「レバニラ」ではなく「ニラレバ」である。
私は常々、「『レバニラ』と名乗っているくせに、レバーとニラ以外のモヤシや人参などを入れてお茶を濁している物が多すぎる!」と憤慨していたので、武ちゃん食堂の「ニラレバ」は非常に満足の行く逸品であった。
同行してくれた友達が頼んだのは肉炒め定食。こちらも味見したが、バランスの良い味付けで非常に美味しかった。
【肉炒め定食。800円。】
とても感じのよい女将さんに見送られつつ、大満足で武ちゃん食堂を後にした我々は、20キロ圏内の現状を確認することにした。
まず向かったのは、楢葉町の南側を一望に見渡せる「天神岬」だ。
【田んぼだった場所が、放射性廃棄物の大規模な仮置き場に】
写真では見にくいかもしれない。グリーンのシートで覆われているのは放射性廃棄物を詰め込んだフレキシブルコンテナバッグだ。
見渡す限り、放射性廃棄物の仮置き場になっている。元々は田んぼだった場所だ。
次に、枝垂れ桜で有名な「清隆寺」に向かってみた。
境内に何やら違和感のあるものが放置してあるので、近づいてみると
なんと骨壷が放置されていた。もと町会議員の知り合いに、一応通報をしておいた。
清隆寺を後にした我々は、さらに北上し、となり町の富岡町に入った。
津波で流された駅前の踏切から、駅舎を見る。草で埋もれて線路すら見えなくなっていた。
【線路が完全に草で埋もれた状態になっている。富岡駅前の踏切から撮影】
富岡町では、大規模な放射性廃棄物の焼却炉が建設中であった。
楢葉町が区域指定されている「避難指示解除準備区域」は、住民の帰還を前提としている場所のことを指す。
だが、こういっては悪いが、まだまだ、住民が帰れるインフラは整っていないように私は思った。
そんな楢葉町で、「武ちゃん食堂」を営み、復興作業の作業員さんたちや、一時帰宅した楢葉町民の皆さんの舌を喜ばせている佐藤さんご夫妻は本当にすごいなと思った。
私は、この町に定期的に通っている身だが、これからも「武ちゃん食堂」のニラレバ炒め定食を楽しみに、この町を見守っていこうと思っている。
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