エレクトロ・ユニットIAMDIVE、アンビエントで満たした代々木公園でのフリー・ライヴーーOTOTOYライヴ・レポート

エレクトロ・ユニットIAMDIVE、アンビエントで満たした代々木公園でのフリー・ライヴーーOTOTOYライヴ・レポート

この日の東京はあいにくの雨模様だった。せっかくの野外、しかも、本格的なスペイン料理とお酒が楽しめるスペイン・フェスでのライブとあって残念に思いつつ、「それはそれでIAMDIVEの音楽とは相性良さそうだななどと呑気な心構えも用意して会場の代々木公園に向かう。それでも会場に着いて、小雨の降るなか集まった他の参加者と一緒に、バンドも立つはずのステージで繰り広げられるショーやスペイン語講座を楽しんでいるうちには、次第に雨もおさまりを見せはじめ、バンドのセッティングが始まる頃には青空が覗くほどに天気が回復。ライブ前になぜか雨が上がる、というのは野外ライブにありがちな一種のジンクスのようなものではあるが、やっぱり実際に目の当たりにするのは気分が良い。音楽の神に味方されている、と冗句を飛ばしたい晴れやかな気分にライブへの期待も高まる中、定刻を少し過ぎて演奏は始まった。

一曲目は新作のオープナーでもある「Days Become Ages」。プログラミングされたミニマルなビートと、シンセサイザーのレイヤーによるふくよかなサウンド・スケープが気持ち良く響く。そこに滑りこむヴォーカルのルイスの歌声は音源よりも人懐っこく丸みを帯び、時に淡々と、時にほんのりドラマチックに進む演奏と合わせて、バンドの繊細さよりも大らかさを強調していた。来日後初のライブに多少のぎこちなさも感じなくはなかったが、妙にセコセコしない度胸が頼もしい。

ステージに並ぶ2人の前にはそれぞれ机が置かれ、キーボードやラップトップ、各種のエフェクト機器が並ぶ。ルイスはアコースティック、ジョゼはエレキと、それぞれトレードマークのギターも携え、要所ではそれもしっかり用いるものの、演奏時間の多くを卓上の機器の操作に当てていたのが印象に残った。新作でギターの出番が減ったことは先のインタビュー記事でも触れたが、それにしてもこれほど弾かないとは…。歌モノの側面を持つ楽曲のイメージに引っ張られていたけど、ボーズ・オブ・カナダ直系のエレクトロニカ・ユニットとして側面の大きさをあらためて認識させられた。

代々木公園のステージとバンドの相性も想像以上に良い。大予算の掛かった音響設備という感じではないが、コンクリート製の半ドーム型のステージがうまく音を散らしてくれるのだろう。彼らが得意とする、音を左右のステレオに振り分けるアレンジもクリアに聴き取れ、バンドのやりたいことがしっかり伝わってくる。加えて、これはバンドの意図したところでは無いだろうが、隣接する出店でスペアリブを焼く煙が粋なスモークとなり、あるいは、園内の鳥の歌声が音楽と混じることで、いい塩梅のムードが演出されたのも良かった。こういうイベントならではの“ゆるさ”がライブを魅力的に見せたわけだが、アンビエントって本来そういうものでもあるはずだよな。

曲間に英語のMCを挟みつつ、全30分6曲を披露。最後はアルバムのラスト・トラックでもある「Backwardsで、ジョゼの弾くシューゲイズ・ギターの彩る盛大なノイズの海がアウトロとなってステージに幕を下ろした。終演後、会場の拍手にバンドが応える中、客席を振り返ってみると開演時よりも多くの人が足を止めて観ていたことに気付く。その様子に、インディやアンビエントという一般的には分かり難いと敬遠されがちな音楽も、接点さえあれば案外多くの人にアピールするのかも知れないと思えたのは個人的にも収穫だった。最後に欲を言えば「Norman, Oklahoma」のような弾語り系の曲も、(会場の雰囲気的にも)聴いてみたかったが、それは今後へのお楽しみとしよう。まだまだ続く彼らの日本ツアーが幸多きものになることを願っている。(佐藤優太)

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