「2015年末1ドル130円説」の信ぴょう性は?
外資系金融機関が2015年末1ドル130円を予測
日銀のサプライズ緩和以降、大きく円安ドル高に振れています。11月21日には、ゴールドマンサックスが、2015年末130円、2016年末135円、2017年末140円というドル/円予想を公表し話題を呼んでいます。JPモルガンチェース銀行も11月26日、2015年末128円という予想を掲げました。
一方、本邦金融機関や国内シンクタンク等の経済予測に伴う為替見通しは次の通りです。
【三菱UFJモルガンスタンレー証券】※発表日:11月25日
・2015年度:116.8円
・2016年 1-3月:—
・2016年度:117.3円
【三菱総研】※発表日:11月25日
・2015年度:118.6円
・2016年 1-3月:—
・2016年度:—
【大和総研】※発表日:11月21日
・2015年度:118.0円
・2016年 1-3月:—
・2016年度:—
【三井住友信託銀行】※発表日:11月21日
・2015年度:119.1円
・2016年 1-3月:121.0円
・2016年度:—
【三菱UFJ R&C】※発表日:11月19日
・2015年度:115.9円
・2016年 1-3月:116.6円
・2016年度:117.0円
【ニッセイ基礎研究所】※発表日:11月18日
・2015年度:118.0円
・2016年 1-3月:119.0円
・2016年度:121.0円
【みずほ総研】※発表日:11月18日
・2015年度:119.0円
・2016年 1-3月:121.0円
・2016年度:—
【第一生命】※発表日:11月17日
・2015年度:117.0円
・2016年 1-3月:—
・2016年度:120.0円
※各社経済見通しレポートより。為替水準は各社期中平均と思われる。
経済予測に伴う為替見通しのため、金融機関の為替部門の予測ほどドラスティックではないという性格はあるものの、いずれも2015年末辺りは、120円前後と予想していることが見てとれます。
基本は円安方向だが円高要因にも事欠かない
ではここで、円安になる理由を挙げてみましょう。
・日米の景況感格差
・日米の金融政策の方向性の違い(日銀追加緩和の効果と、さらなる緩和期待、FRBによる利上げ)
・チャート分析
ファンダメンタルズ(上記よりチャート分析を除いたもの)に関しては、どの機関も同様に見ているものと思われます。そのため、円安ドル高での推移を見込むという意味では、どの機関の予測も全く同じで、違いは円安に動くスピードと絶対水準ということになります。具体的には、2015年末に120円前後なのか、あるいは130円までいくのかというところに違いが表れています。
とはいえ、下記のように円高方向への揺り戻し要因も考えられます。
・現在は比較的落ち着いている地政学的リスク等の顕在化によるリスクオフを受けての円選好
・欧州の景気低迷の本格化によるリスクオフへの動き
・史上最高値を更新する米国株の調整によるリスクオフへの動き
・米国利上げに伴う新興国からの資金引き上げを要因とするリスクオフへの動き
・円安進展に対する政治介入
いずれも、大いに可能性はありそうです。
予測は外れる前提で損失を一定限度に抑えられる備えを
ただ、為替や株式等の予想は、例えコンセンサス値を取ったとしても外れることが多いのが現実です。昨年末の各種年間予想を振り返るだけでよくわかるでしょう。誰が、国債利回りのこれだけの低下を予想していたでしょうか?115円を上回る円安や今年前半の株価の低迷は予想されていたでしょうか?2014年7〜9月期の実質GDP成長率がマイナスになると直前にでも予想できた人がいたでしょうか?
私は、ここで予想者の批判をしたいわけではありません。予測は外れる前提で行動しましょう、ということです。
個人投資家としては、ある程度多数派の予測を踏まえて、マーケットの全体感を押さえつつ自分のポジションを取るしかないと思います。ただ、ある種のイベントが起こっても損失を一定限度に抑えられるだけの備えはしておくこと、随時運用状況を検証し必要に応じスピーディーに戦略・戦術を変更していくことの方が、予想を当てることよりも重要だということです。
ファンダメンタルズが差し示す方向に逆行する要因も多く存在するのですから、1年後の水準が120円か130円かという議論に大きな意味はなく、ある種の誤差と考える度量が必要だと思うのです。
(賀藤 浩徳/不動産投資アドバイザー・マネーアドバイザー)
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