消費税増税で駆け込みは起きるか? 調査結果から見る消費者の住宅購入行動

消費税増税で駆け込みは起きるか?調査結果から見る消費者の住宅購入行動(写真:iStock / thinkstock)

【今週の住活トピック】
「不動産流通業に関する消費者動向調査(2014年度)」結果の概要を公表/不動産流通経営協会(FRK)
http://www.homenavi.or.jp/frk/about/teigen/14shouhisha_doukou.pdf

不動産流通経営協会(FRK)は、2014年版の「不動産流通業に関する消費者動向調査」の概要を公表した。それによると、消費税率の引き上げにより「住宅購入時期を早めた」と回答した人が、20代では73.7%に達したという。折しも、2015年10月に再び消費税率を引き上げるかどうか検討されているところだ。調査結果を詳しく見ていこう。消費税率引き上げで「住宅の購入時期を早めた」新築住宅購入者は57.3%、29歳以下では73.7%

FRKの調査は、首都圏で2013年4月から2014年3月に、購入した住宅の引き渡しを受けた1124世帯を対象に、マイホームの取得行動などを調査したもの。

このうち、消費税率引き上げの影響を受ける(※)新築住宅購入者(377世帯)について、その影響について聞いたところ、「住宅の購入時期を早めた」という回答が57.3%と過半数を占め、「希望する住宅の条件よりも価格の低さを重視した」はわずか1.1%だった(図1参照)。
※中古住宅では、消費税が非課税となる「個人が売主」であることが大半なので、消費税率引き上げの影響を受けにくい(諸費用等は影響を受ける)。

消費税増税の対策として、増税を見越して価格を抑えるという行動はわずかで、増税前に購入する、いわゆる「駆け込み」行動が圧倒的に多いことがうかがえる結果となった。また、駆け込み行動は、29歳以下では73.7%、30歳~39歳では66.3%と、とりわけ若い世代ほど多く見られた。

【図1】平成 26 年 4 月からの消費税率の引き上げが今回の住宅購入に与えた影響(新築住宅購入者)/出典:不動産流通経営協会「不動産流通業に関する消費者動向調査(2014年度)」

【図1】平成 26 年 4 月からの消費税率の引き上げが今回の住宅購入に与えた影響(新築住宅購入者)/出典:不動産流通経営協会「不動産流通業に関する消費者動向調査(2014年度)」若い世代ほど親からの贈与を受けて住宅を購入。29歳以下では受贈率は43.2%

若い世代の住宅取得行動について、さらに見ていこう。
「親からの贈与」を受けた世帯の割合は、住宅購入者全体の17.3%だったが、29歳以下では43.2%、30歳~34歳では26.9%、35歳~39歳では24.4%と、若い世代ほど贈与を受けた割合が高くなった。

贈与を受けた額は、全体で見ると700万円以下が60%を占める(「500万円以下」43.6%+「700万円以下」16.4%)。これは、贈与を受けた世帯の多くが、親や祖父母からの「住宅取得等資金に係る贈与税の非課税制度」を利用しているからだろう。非課税枠は、2013年の贈与で700万円、2014年の贈与で500万円(一定の省エネ・耐震住宅の場合は500万円の上乗せが可能)だった。

また、年間110万円の「贈与税の基礎控除」があるため、この範囲なら非課税で確定申告も不要となる。いずれを利用するにせよ、贈与税が非課税の範囲内の贈与が多かったと見てよいだろう。

【図2】世帯主の年齢別親からの受贈率及び受贈額/出典:不動産流通経営協会「不動産流通業に関する消費者動向調査(2014年度)」

【図2】世帯主の年齢別親からの受贈率及び受贈額/出典:不動産流通経営協会「不動産流通業に関する消費者動向調査(2014年度)」

さらに、贈与を受けた世帯の世帯収入と世帯主の収入を比べてみると、贈与をした親などの年齢が60歳未満など低い場合は、世帯主の収入と世帯収入に開きが大きく、共働きが多いことがうかがえる。

たしかに、若い世代ほど世帯主だけの収入はそれほど高くなかったり、共働きで世帯収入は高くても子育て期の収入の不安や教育費などの出費の増加を考慮したりして、借入額で無理ができない事情がある。その際に、親からの贈与で借入額を抑えることができれば、購入を後押しすることになるだろう。

一方、増税や住宅価格の上昇、金利の上昇などの影響を強く受けることになるので、住宅購入行動が外的要因に左右されやすいという側面も見られる。消費税率10%引き上げで、駆け込み需要は起きるのか?

さて、図1に戻ってみよう。消費税率引き上げの影響について、「特に影響はなかった」という回答は39.8%で、年齢が高いほど割合が増加する傾向にあった。調査結果ではその理由が明らかではないが、増税タイミングよりも希望条件に合う物件に出合えるかどうかを重視したり、住宅ローン減税の拡充やすまい給付金など増税の緩和策により実質的な影響を受けなかったり、といったことが考えられる。

2014年4月の消費税率引き上げの際には、増税緩和策が早い段階で発表されており、5%から8%に引き上げられて増額となった分を住宅ローン減税などで相殺できるケースが多かった。しかし、2015年10月の10%への引き上げが実施されるかどうかはまだ分からないが、現行の増税緩和策だけでは増税分の緩和は十分ではない。さらなる緩和策を打たないと、外的影響を受けやすい若い世代を中心に、再び新築住宅購入の駆け込みが起きることが考えられる。

少しでも安く買いたいという消費者心理はよく分かるが、買い急ぐあまり、限られた物件の中から選んでしまったり、物件を選ぶ際に冷静な判断ができないといったことが懸念される。また、増税前に住宅の引き渡しが集中することで、コストアップなども懸念されるので、冷静な判断をしてほしい。
元記事URL http://suumo.jp/journal/2014/10/22/71554/

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