頭の良い子を育てる「総合的学習の時間」の在り方
「総合的な学習の時間」削減については反対意見も
日本の学力低下を招いたとして見直しがされた「ゆとり教育」。そのゆとり教育の中で最も有名なものが「総合的な学習の時間」でしょう。この総合的な学習の時間は、主要科目の授業時間の増加に伴い、11年度から削減されることになりました。
しかし、削減については反対意見も出ています。それによると、探求型の総合的な学習の時間に積極的に取り組んでいる学校は、昨年4月に行われた全国学力テスト(小6・中3)での結果が良好であり、勉強の動機づけにもなっているとのこと。確かに学力テストの結果が全国トップクラスの秋田県では、探求的な総合学習に取り組む生徒の割合が全国平均よりも20~30ポイントも高く、平均正答率も5~10ポイント高くなっています。
「総合的な学習の時間」を有効活用するには先生の準備不足が課題
さて、「頭の良い子」と言われて、どのような子どもを想像するでしょうか。テストで100点を取る子ども、内申がオール5の子ども、小学生なのに英検資格を持つ子どもなど、さまざまなイメージが思い浮かぶことでしょう。私の塾には、このような子どもたちもいます。彼らを見ていると、単にたくさん問題を解いているというだけでなく、今自分に何が必要か、どうすればできるようになるかを自分で考えています。さらに、本やニュースなどに触れる時間が多く、小中学生でも大人の会話にまざることができます。
課題発見・解決型の「総合的な学習の時間」は、上手に使えば上記のような能力を身につけることができます。ただし、内容や教え方が決まっているわけではないので、先生たちは事前に入念に準備を重ねなければなりません。しかし、先生たちは仕事時間の多くを部活や書類仕事に費やしてしまい、「総合的な学習の時間」のための準備をする時間がありません。先日のOECDの調査では、部活動の1週間当たりの平均時間は7.7時間、事務作業は5.5時間と、他国の2倍ほどもありました。これでは、準備が不足がちになってしまうのもやむを得ません。
諸悪の根源として排除せず、有効に使う方法を模索すべき
先日、塾生の一人がこんなことを言っていました。「今度『CMを調べてアレンジし、自分たちでも作って発表してみる』という授業があるけど、本当は違う学年でもやった課題なんです。うちの学年にはそういう授業ができる先生が一人しかいなくて」。彼は地元のマンモス校に通う生徒です。大きな学校ですから先生もたくさんいますし、授業のやり方などの情報交換も盛んです。しかし、それでも学校に一人しか課題発見・問題解決型の授業を行うことができる先生がいないのです。
「総合的な学習の時間」は、ゆとり教育が始まったばかりの時は、教師側でもどのように授業を進めればいいかがまだ研究できていませんでした。しかし、最近は全国で実施され、さまざまな情報も集まりはじめ、教師同士で研究する場も増えてきています。主要教科の時間数を増やすことも大切ですが、「総合的な学習の時間」を諸悪の根源として排除せず、有効に使う方法を模索すべきではないでしょうか。
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