違反トラックが売ってた桃を盗難地域の農家に見てもらった結果「盗まれた桃の可能性高い」

山梨県内で多発している、桃の盗難。まだ収穫前の「食べるには適さない成長度」の桃がメインに盗まれ、盗まれた総数は約15000個以上ともいわれている。農家が心を込めて育てていた桃をもぎ、盗み去った泥棒に対して多くの人たちが怒り、悲しんでいる。

路上で桃を販売する軽トラック

そんな盗難事件と時を同じくして2022年6月中旬ごろから東京内で爆発的に増えた、路上で桃を販売する軽トラック。そのほとんどが「路上販売禁止の場所」に停車して違反販売をしているようで、歩行者に通報され、警察官に追い払われているシーンが目撃されている。

ボードには「7個300円」などと格安価格

軽トラックに掲げられたボードには「7個300円」などと格安価格が書かれているが、それは食べるに適さない桃の価格であり、しっかりした良い桃を買おうとすると、値が上がる。つまり「7個300円」は客寄せ価格であり、実際に7個300円の桃を購入する人は少ないようである(筆者調べ)。

軽トラックで販売されている桃は盗まれた桃?

山梨の桃盗難事件と、桃販売トラックの大増殖が同時期だったため、インターネット上では「軽トラックで販売されている桃は盗まれた桃」「泥棒が桃を売っている」「盗まれた桃を仕入れて売っている」などの情報が拡散。

怪しいというだけで批判するのは避けたい

売ってはいけない場所で売り、警察官に叱られている時点で、そのような邪推をされてしまうのも仕方ないが、怪しいというだけで批判したり、犯罪に関与していると断定するのは避けたい。……そんなことは言われなくてもわかっている、……でも、でも、でも怪しい。そんな負の感情がどうしても消えない。そんな人もいるはず。

盗まれた可能性がある桃か見てもらった

そこで今回は、路上で桃を違反販売していた軽トラック業者から7個300円の桃を入手。

それを持ち、「盗難被害に遭った地域の桃農家」に見てもらい、盗まれた桃と同じ種類か、盗まれた可能性がある桃か、確認してもらうことにした。

複数の農家さんから話を聞いた

向かったのは、山梨県笛吹市。ここには無数に桃農園があり、格別においしい桃が育つ地としても知られている。複数の農家を巡り、実際に7個300円の桃を見てもらったところ、農家さんの一軒では以下のように話してくれた。

<桃農家さんのコメント>

筆者「東京で売られているこの桃、盗まれた桃の可能性があるのかなと」
農家A「可能性高いですね」
筆者「高いですか」
農家A「高いです。こんなのは収穫しないです」
農家B「いくら?」
筆者「7個で300円ですね」
農家A「こんなんとらんもん」
筆者「そもそもこれが市場や卸に流れてくることはあるのかなと」
農家B「ないないない」
農家A「ないですね」
筆者「これが流通することってあり得るんですか?」
農家A「ないですね」
筆者「一部からは、あれ(軽トラ販売者の桃)は盗んだものではなくて、市場で食べられないと判断したものを(軽トラ販売者が)もらったのではと……」
農家A「それは嘘です」
農家B「こんなもの市場じゃ扱わん」
筆者「これはそもそも、売っていること自体がありえないと」
農家A「そもそも(この成長度では)収穫をしない」
農家B「こんな桃は売りもんじゃあない」


※取材と撮影を許可して下さった農家さんありがとうございます

そもそもこの成長度で収穫しない

軽トラックで売られていた7個300円の桃を見せた複数の農家さんたちの話を要約すると、「この成長度の桃は市場には流れない」「そもそもこの成長度で収穫しない」「盗まれた桃の可能性が高い」「ひどい扱いをされないとこう(痛みや凹みが多い状態)はならない」とのことだった。また、普通に成長した桃も盗まれていたとの情報もあった。

絶対に「7個300円の桃」レベルの桃が世に出ることはないのか? ないこともないようで、市場を通さず、農家が企業に販売することもあるそうだ。また、ジュースの材料として使われる可能性があるという(ジュースにすら使われないとの情報もあり)。

いったいどこから入手した桃なのか

筆者が疑問に感じたのは、大多数の軽トラックに「産地直送」と書かれている点だ。軽トラックで売られていた7個300円の桃は、市場には流れない桃だという。また、この成長度では収穫しないという。よって「農家は収穫しない」「市場に流れない」という桃であるにも関わらず、軽トラックが売っている点だ。農家はこの成長度の桃は収穫しないので産地から直送できない。なのに「産地直送」。いったいどこから入手した桃なのか。

笛吹警察署「東京にも出向いて捜査を進めている」

JAフルーツ山梨にも取材したが担当者が不在だった。笛吹警察署によれば「東京にも出向いて捜査を進めている」とのこと。インターネット上からも多数の情報提供があり、捜査を進めるにあたり役立てているという。

桃を販売している軽トラックの情報や、怪しいと感じた桃販売の情報を笛吹警察署に情報提供すると、早期事件解決が実現するかもしれない。

誹謗中傷で攻めるのは避けたい

ただし、特に注意しなくてはならない点がある。確かに、桃を売っている軽トラックの多くが「売ってはならない路上」で違反販売を繰り返しているのは事実であり、その点は批判されても仕方ない。

だからといって、桃の軽トラック業者が「山梨県の桃盗難事件に関与している」と断定することはできない。善良な独自ルートや正規ルートで仕入れている可能性がないとはいえない。よって、現時点で彼らを犯人扱いしたり、誹謗中傷で攻めるのは避けたい。

<わかっていること>
山梨県で桃の大量盗難事件発生
東京都に桃販売の軽トラックが急増
盗難発生とトラック急増の時期がほぼ同じ
多くの軽トラックが「販売禁止路上」で違反販売
軽トラックが売る桃と盗まれた桃が酷似
農家さん「盗まれた桃の可能性が高い」
農家さんコメントは推測であり断定・確定情報ではない
軽トラックが盗難事件関係者と断定できない

軽トラバッシングは避けたいが

不確定な情報や感情だけで軽トラックをバッシングするのは避けたいが、今回の調査で「軽トラックで売られている激安桃が山梨で盗まれた桃と酷似している」ということが判明したのも事実。農家さんからは「盗まれた桃の可能性高い」との声もあったわけで、今後、筆者はその点も追及したい。

警察の捜査の進展を待つ

はたして、山梨の桃盗難事件がどのような着地を迎えるのか。事件捜査は警察にしかできないため、今後の警察の捜査と、有志による調査の進展を待ちたい。また、筆者も新たな情報が入りしだい、取材を進めていきたいと思う。

極めて上品な甘さが味覚を包む「山梨の桃」

余談だが、取材帰りに『山下果実園』(山梨県山梨市正徳寺771)に寄り、桃を購入した。いちばん安い桃を購入したが、それでも絶品。極めて上品な甘さが味覚を包み、気が付けばひとりで4個も食べていたのであった。おいしい桃を育て、おいしい桃を売り、そして私たち消費者がおいしい桃で幸せを感じる。そのフローに泥棒の存在はいらない。

(執筆者: クドウ@地球食べ歩き)

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