規制を強めると逆に犯罪に対するハードルが下がるという話
今回はメカAGさんのブログからご寄稿いただきました。
規制を強めると逆に犯罪に対するハードルが下がるという話
オンラインゲームの『ファイナルファンタジー11(以降FFXIと略)』は、昔は全画面モードでしか起動しなかった。つまり『FFXI』を動かしているとパソコン1台が丸々それに占有されてしまい非常に不便だった。『FFXI』はメンバー集めなど待ち時間の多いゲームだし、プレイ中もウェブでの調べ物などが欠かせなかったからだ。
そのため『FFXI』のプログラムを外部からフックして強制的にウィンドウモードで動かすツールが作られた。『FFXI』と『Windows』の間に介入し、『FFXI』には「全画面モードで動いているよ」と思わせるわけだ。スクウェア・エニックス(以降、スクウェアと略)は何度かこのツールの対策を施したけれど、結局はイタチごっこに負けた。
それよりも重大なのは、この制限が逆にユーザーが不正ツールに手を出すきっかけになっているのではないか、という批判が生まれたことだ。ここでいう不正ツールとは『FFXI』のプログラムに介入し、ゲームを有利に進められるようにインチキをするツールだ。もともと全画面モードのみに制限しているのもこのような不正ツールを使いにくくするというのが理由に含まれるが、逆効果になっているのではないか、と。
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結局スクウェアは全画面モードの制限を取り払った。現在の『FFXI』はユーザーが望めばウィンドウモードで起動する。恐らく大部分のユーザーはウィンドウモードで動かしていることだろう。
違法行為を防ぐには、どこにハードルを設定するかが大事なのだと思う。いきなりゲーム内でインチキをするツールを使い始めるのには多くの人間にとって抵抗があるだろう。しかし「自分は全画面でしか動かない理不尽な制限を回避したいだけなんだ」というのは正当性を見いだしやすい。「俺(おれ)はインチキをするためにツールを使いたいわけじゃないんだ」と。
最初のハードルを一度越えてしまえば、後はなだらかな坂道でしかない。これぐらいならインチキとは言えないだろう、と。たとえばゲーム内では表示されないパラメータがある。普通のプレイヤーは経験と勘でその値が「いまこれぐらい」と推測しながらプレイするわけだけど、『FFXI』のプログラムが内部で持っているその値を画面にそのまま表示するツールがある。考えようによっては「これぐらいいいじゃないか」と言えるかもしれない。で、「これぐらい」が積み重なっていくと、そのうち一人前の不正プレイヤーができあがるわけだ(苦笑)。
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ようするに一番高い最初のハードルを超えることを正当化する口実を作ってはいけないのだと思う。この制限はだれがどう見ても理不尽だ、というような制限は逆効果になる。コピープロテクトもこの程度の制限はしかたない、とユーザーが思うレベルならいいが、ここまで制限されてはたまらない、と思えば、それを回避するためのツールに手を出す。一度ツールを入手してしまえば、後はだれだってどんどんコピーするだろう。
風俗なども、コントロールできる程度の取り締まりをすべきだと昔から考えられている。少なくとも考えられていた。つまり合法を前提とするから取り締まりにより指導できるのであって、あまり取り締まりを厳しくすると、「非合法でいいや」ということになる。最初から非合法が前提なら「これぐらいなら見逃してくれるだろう」みたいなところに神経を使う必要ないわけだ。どのみち見つかったら終わりなのだから。
それが昨今は市民がやたら「○○ を放置しておくなど警察の怠慢だ」と言い出すので、警察も杓子(しゃくし)定規に取り締まるようになり、そういうさじ加減が機能しなくなっているように思う。やたら世の中を良くするのに熱心な人たちは、過度の取り締まりは犯罪が地下に潜るだけなのが分からないようだ。
参考サイト:
『Windows/FF11用語辞典』
http://wiki.ffo.jp/html/12518.html
『4Gamer.net』 [E3 2007#43]特別企画:「ファイナルファンタジーXI アルタナの神兵」では,つまりどういう拡張が行われるのか? FFXI開発の中心人物達がE3に来ていたので,色々と聞いてみた
http://www.4gamer.net/news/history/2007.07/20070717204913detail.html
執筆: この記事はメカAGさんのブログからご寄稿いただきました。
文責: ガジェット通信
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