日本の再生可能エネルギー、その可能性と現実

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日本の再生可能エネルギー、その可能性と現実

 毎日暑くて、つい冷房の設定温度を下げたくなりますが、今年も日本は「節電の夏」。3.11以降、初めて原子力発電所がまったく稼動していない夏を迎えていますが、節電要請だけでなく膨大な燃料費負担増など、その”弊害”は小さくありません。「原発などなくても電気は足りている」という一部主張は、現実的に日本が直面しているエネルギー問題の本質を直視していないといえるでしょう、

 そんな中、太陽光発電を始めとした再生可能エネルギー(以下、再生エネ)の取り組みが各地で増えています。はたして現状はどうなっているのでしょうか?

 そんな疑問にやさしく答えてくれるのが、今回ご紹介する『グリーンパワーブック』です。本書は再生エネ教育の副読本としてつくられたため、イラストや写真も多く、とても分かりやすくまとめられていて、「なぜ、再生エネが必要か」ということがスッキリと理解できます。読んで終わりではなく、エネルギーについて広い視野で考えることができるように工夫されているのもポイントです。

 本書は再生エネを普及させる利点として、地産地消の国産エネルギーを増やすことで安定供給につながること、地球温暖化の防止、国内新規産業および雇用の創出・育成と再生エネ・ビジネスの海外展開を挙げています。総発電電力量に占める再生エネの割合は大型の水力発電を除くと、わずか1.6%(2012年度)であり、エネルギー自給率を上げるためにも再生エネ利用を拡大する必要性を指摘しています。

 一方、今後の普及の課題として「発電コスト」、「出力の不安定(太陽光・風力)」、「立地の制約」を挙げています。「立地の制約」について、特に地熱や風力などは発電に適した場所が限定され、発電所の立地を自由に選べません。ポテンシャルが高く、今後が期待されている地熱は発電に適した場所が国立公園や温泉地のため、開発が規制されており、自由に開発できない状況です。

 また、風力発電は大規模開発ができれば相対的にコストが安くなりますが、発電に適した地域は遠隔地で電力需要が少なく、送電線が細いこともあり、発電しても大消費地に送電できないため、開発が進まないケースがあるようです。逆に、再生エネに適した地域から都市など電力の大消費地に送ることができる大容量の送電網を整備できれば、日本における再生エネの利用は、どんどん拡大していくと指摘しています。

 再生エネは小規模でもできるため、政府や企業などの発電事業者だけに任せるのではなく、日常的に電気や燃料を使う私たち市民もエネルギーについて考え、アイデアを出し合い、関わっていくことで再生エネの普及に貢献できるでしょう。現状はまだまだこころもとない再生エネの現状ですが、先ずは多くの人が関心を持つことから。本書を読んで、国内外の取り組みを参考に、再生エネについて考えてみませんか? 

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