日本人なら知っておきたい世界的企業、トヨタの秘密

日本人なら知っておきたい世界的企業、トヨタの秘密

 2013年度の世界販売台数が1000万台を突破したトヨタ自動車。2000年代から目標とされていた数字ですが、リーマンショックやアメリカでのリコール問題などで、達成からは遠ざかっていました。不調に苦しんだトヨタにとってはもちろん、明るいニュースがなかなか聞こえてこない日本経済にとっても、喜ばしいできごとといえるのではないでしょうか。

 またトヨタが展開するラグジュアリーカーブランドの「レクサス」も昨年度、最高の販売台数を記録。89年にアメリカ合衆国で産声を上げたときは、「大衆車のトヨタが高級車を作れるわけがない」という意見も少なくありませんでしたが、クルマ作りへの飽くなきこだわりで瞬く間に北米の高級車市場を席捲。いまやメルセデス・ベンツやBMW、アウディなどと肩を並べ、世界のラグジュアリーカー市場で存在感を示しています。

 現在でこそ自動車業界のリーディングカンパニーとなったトヨタですが、一朝一夕にその地位に登りつめたわけではありません。

 たとえば1970〜80年代、トヨタを含む日本車はアメリカでバッシングを受けていました。低価格で高品質な日本車に押されていたアメリカの自動車メーカー各社は、人員整理を断行。「日本は”失業”を輸出している」といった声が挙がったり、日本車をハンマーで叩き壊すパフォーマンスも行われました。

 日本人からすると、「アメリカ車が売れなくなったのは、メーカーが品質向上などの企業努力を怠ったからでは?」と思ってしまうかもしれません。

 しかし、『日本人なら知っておきたいトヨタ自動車の歴史』のなかには、当時の豊田英二トヨタ自工社長(1982年までのトヨタは、生産を担当する「トヨタ自工」と販売の「トヨタ自販」に分かれていた)のこんなセリフが出てきます。

「忘れていたことをアメリカが教えてくれた……(それは)真心だよ」

 どれだけ良いクルマをつくって多くを売っても、そこに「心」がなければトヨタの企業精神に則ったものではないと、豊田社長は考えていたのです。実際、豊田綱領というトヨタグループ従業員の行動指針のひとつに「温情友愛の精神を発揮し、家庭的美風を作興すべし(思いやる心を大切にし、家庭的な気風を高めること)」と定められています。

 そして豊田社長は、車種構成の見直しやアメリカのディーラーを表彰する制度を設けただけでなく、ゼネラルモーターズやフォードといったライバル企業技術者を日本の工場に招き、トヨタが得たノウハウをオープンにしています。企業秘密をライバルに明かすのはまさに「敵に塩を送る」行為ですが、「カンバン方式」などトヨタの生産方式を生み出した大野耐一も、豊田社長の決断を支持。効率的にクルマを生み出すトヨタの工場を目の当たりにしたアメリカの技術者たちは、感銘を受けたといいます。

 本書のタイトルにもあるとおり、世界に影響を与える企業であるトヨタは「日本人なら知っておきたい」ところ。トヨタがなぜ、高品質なクルマをつくれるかの秘密を、歴史から読み取ってみてはいかがでしょうか。

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