「残業代ゼロ」で困るのは誰? 大企業社員は「ないと死んじゃう」と悲鳴

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「残業代ゼロ」で困るのは誰? 大企業社員は「ないと死んじゃう」と悲鳴

マスコミから批判の強かった「残業代ゼロ法案」が、2014年6月に閣議決定された政府の新しい成長戦略に盛り込まれた。7月から始まった労働政策審議会で検討され、次期通常国会までに何らかの結論を出すという。

この「残業代ゼロ」には、中小企業で働く人から「私には関係ないな」という声がある一方で、残業代をアテにして生活水準を上げてしまった大企業社員からは「冗談じゃない」という悲鳴もあがっている。

39歳で「年203万円」も減るのは本当か

プレジデントオンラインでは、7月25日にジャーナリストの溝上憲文氏による「戦慄試算!『残業代ゼロ』対象500万人で39歳は203万円収入ダウン」という記事を掲載している。衝撃的な数字だが、試算根拠はこうだ。

厚労省調査によると、39歳の残業代を含まない平均月給は約42万円。月の法定内平均労働時間は155時間なので、時給は約2709.7円となる。

一方、Vorkersの調査によると31~39歳の月間平均残業時間は約50時間。これに時給2709.7円と時間外割増率1.25をかけると、月の残業代は16万9356円。年間では203万2200円になるというのだ。

しかし成長戦略に盛り込まれている「残業代ゼロ」は、年収1000万円以上の人を対象にすると見込まれており、あまりにも「煽りすぎ」の試算といえる。とはいえ、「労働時間より成果」の方向性は今後進んでいくと考えられる。

「残業代ゼロ」が実現したとき、本当に困るのは誰なのか。中小・零細企業の社員は「給与がこれ以上減ったら生活できない」と恐れているが、このご時世に残業代を満額で受け取っていない会社が多いのも悲しい現実だ。意外と「私には関係ないな」とアッケラカンとしているのではないか。

一方で、大企業の中には「1分単位」で残業代を支給されているところもある。上司の監督の目もゆるく、ダラダラ残業が横行――。そんな大企業の社員こそ、「残業代ゼロ」の影響を大きく受けるのかもしれない。

富士通社員、残業代ナシでは「月4万しか残らない」

富士通に勤務する20代の男性社員Aさんは、もはや残業代がないと生活できないほど「残業代漬け」になっている。月36万円の総支給額のうち、残業代は12万円と3分の1を占めているのだ。

各種保険や税金、自動車ローンの支払いなどで月20万円が天引きされており、残業代がなければ4万円しか残らず、とても生活できない数字になってしまう。

「残業代がなかったら、僕はダブルワークでもしないと死んじゃいますね」

大手に入社した喜びから、身の丈に合わないクルマを購入してしまった。社員たちはみな立派なクルマに乗っており、「この会社なら、このくらい大丈夫だろう」と思ってしまったそうだ。

しかし、クルマの支払いが理由で生活を切り詰めるわけにはいかない。「遊べるのは若いうちだけですし」と楽観的なAさん。もはや残業代が支給されなければ、遊べないどころか生活もできない。これが富士通でなければ、大変なことになっていたかもしれない。

生活水準をあげて引っ込みが付かなくなった社員は、富士通に少なくないとAさんは明かす。終業時刻後も大した仕事もせず、「残業代目当ての居残り」をする中年社員も多い。

「管理職になりたくないという中年社員も少なくないです。責任が重くなる上に、残業代が出なくなって給料が下がってしまいますから」

財界が「日本人の働き方を変えないと日本経済は沈没する」と危機感をあらわにするのも、なんとなく理解できるようなケースだ。

あわせてよみたい:朝日新聞「一般社員も残業代ゼロ」の煽り報道

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