さんまの「努力論」心理学で読み解くと
努力は報われない?
お笑い芸人・明石家さんまさんがラジオで語った「努力」に対する持論が、ネット上で反響を呼んでいます。名言などを紹介する番組のコーナーで、その日のゲストの「努力をしていれば、必ず誰かが見てくれていて、報われることがわかりました」という言葉が紹介されました。
それに対し、さんまさんは、「それは早くやめた方がええね、この考え方は」「努力は報われると思う人はダメですね。努力を努力だと思ってる人は大体間違い」と、あっさり「名言」として紹介された内容を覆しました。さらに、「好きだからやってるだけよ、で終わっといた方がええね。これが報われるんだと思うと良くない」「こんだけ努力してるのに何で?ってなると腹が立つやろ。人は見返り求めるとロクなことないからね。見返りなしでできる人が一番素敵な人やね」と、続けて説明したのです。
「内発的動機付け」の方が、行動は継続する
まず、「動機(それをする原因)」というところにフォーカスを当ててみましょう。人には「内発的動機付け」と「外発的動機付け」があります。
■内発的動機付け:自らの意欲が行動を起こそうとする自発的な動機
■外発的動機付け:報酬や評価、罰則など外側の刺激による動機
例えば、数学のテストが来週に控えている学生がいるとします。
■数学が好きで、将来の夢のために進んで勉強をする⇒内発的動機付け
■良い点を取るとご褒美があり、悪い点だと強烈に叱られるから勉強する⇒外発的動機付け
「内発的動機付け」の方が、行動は継続します。だから、さんまさんが説明するように、「好きだから」という動機は継続しやすいのです。しかし、「こう成りたい」という気持ちで苦手なことでも努力すれば、それも内発的な動機なのです。
ものごとの問題は対象にあらず。内的に「覚悟」を持てるかどうか
次に、見返りと態度について考えてみます。同じ努力をしても、続けられる人と続けられない人がいます。また、同じ環境にいても、適応できる人と適応できない人がいます。
心理学者フランクルが、ドイツの強制収容所という過酷な環境で見た人の姿は、「天使のような人」と「悪魔のような人」に分かれていたそうです。ということは、その行為の好き嫌いに寄らず、つまりは「ものごとの問題は対象にあらず」ということになります。「〇〇のせいで…」といった捉え方をして外部要因に責任を求めるのではなく、自分の内的に「覚悟」を持てるかどうかで感じ方は変わるのです。フランクルは、好きでもない強制収容所の生活を内的な覚悟によって生き延びました。
さんまさんの述べるように「素敵な人」は、努力を努力と感じることなく楽しめる人かもしれません。しかし、何事も「しない」より「する」ことが大切で、努力を否定してしまうことの方が恐ろしいことだと私は感じます。
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