勤務先の倒産危険度を知るには
2013年の休廃業数は2万8943件と過去10年で最多
東京商工リサーチによると、2013年の休廃業数(解散も含む)は2万8943件と過去10年で最多。年間1万件前後が倒産(負債総額1000万円以上)し、開業率4.5%(2011年度)のアドオンがありながら、420万社(2009年)あった中小企業・小規模事業者数が2012年には385万社まで激減しています。年間休廃業数が2万8000件余りという数字は、氷山の一角にすぎないと思われます。
そもそも倒産とは法律用語ではなく、法的整理である「会社更生法」「民事再生法」「特別清算」「破産」などの適用と、私的整理である「銀行取引停止処分」「内整理」を指します。ただ、多様化している事業再生の手法である「私的整理のガイドライン」「特定調停法」「事業再生ADR」などを活用した調整型整理は、倒産にはカウントされません。
大部分の中小企業・小規模事業者は廃業したくてもできない現状
とはいえ、休廃業するためには借金の清算が不可避。大部分の中小企業・小規模事業者は借金が足かせとなり、廃業したくてもできないのが現状です。その最たる要因が経営者保証の問題。企業が金融機関から融資を受ける際、代表者の個人保証は必須だからです。
従来、株式会社は出資の範囲外は免責となる有限責任社員が原則です。無限責任社員が構成員の合資会社や合名会社とは一線を画します。ところが経営者保証を入れることで、実質的な無限責任社員化するところに休廃業が進まない理由がありました。
ここ数年、団塊世代経営者の勇退ラッシュを迎え、円滑な事業承継を進めたい国は、2014年2月、経営者保証ガイドラインを発表。一定の条件を満たせば「経営者に対する保証を問わない」とする指針を公表しました。
資金繰りを担当する総務や財務の役席者の退職が続くと危険
近頃、「ブラック企業」なるキーワードをよく耳にしますが、会社の危険度を表す要因とは何でしょうか。
突き詰めると、上場企業も小規模事業者も、ズバリ「経営者の資質」です。上場企業でも倒産は珍しいことではなく、その背景には経営者の暴走が付きまといます。本来、ガバナンスを発揮すべき株主総会や取締役会の監視機能の低下が指摘されています。経営者から諫言を遠ざける「シャンシャン総会」が常態化し、耳障りの良い甘言が経営者を包み込んでいます。この傾向は、小規模になるほど顕著になることは「推して知るべし」といったところでしょう。
定量的には「3期連続営業損失」、あるいは「債務超過」に陥っていれば、倒産リスクは高いと判断せざるを得ません。なぜならば、銀行からの新規融資が困難になるからです。また、定性的には、従業員の退職者が多い企業、とりわけ資金繰りを担当する総務や財務の役席者の退職が続くと、危険シグナルは極めて高まります。そのどちらの要因もコントロールできるのは経営者、つまり社長です。社長が大株主、いわゆるオーナー経営者であれば、なおさらです。
経営者には孤高の資質が求められます。従業員やその家族、取引先、株主、金融機関などのステークホルダーと常に協同し、時として対峙しなければなりません。少々概念的な言い方になりますが、社会に生かされ、地域に報恩する企業は存続します。一方、過去の成功体験にすがり、唯我独尊に陥り、足元の大切な存在に目が行き届かなくなった経営者が率いる会社は、やはり「存続が危ぶまれる」といわざるを得ないと思います。
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