展示作品の評価額はどん引きレベル!? 台湾の財団コレクション展のテンションがヘン
アンディ・ウォーホル、フランシス・ベーコン、蔡國強といった世界トップクラスのアーティストの作品を中心とした『現代美術のハードコアはじつは世界の宝である展』(以下『コア展』)が東京国立近代美術館で2014年6月20日から8月24日まで開催。パンフレットでその経済的な価値をストレートにアピールするなど、型破りな切り口のコレクション展となっています。
今回来日するのは、台湾の大手パッシブ電子部品メーカー、ヤゲオ・コーポレーションの寄付金で設立されたヤゲオ財団の現代美術コレクションの76点。常玉(サンユウ)、フランシス・ベーコン、ザオ・ウーキー、アンディ・ウォーホル、ゲルハルト・リヒター、杉本博司、ジェフ・クーンズ、蔡國強、ロン・ミュエク、ピーター・ドイグ、マーク・クインと、アート好きならば一度はナマで見てみたいアーティストがズラリと並んでいますが…。一見すると関連性が見えにくいラインナップともいえます。
パンフレットによると、現代美術作品には経済的な価値と時代の試練に耐えて訴え続けるというふたつの意味で「世界の宝」であると主張。そういった価値そのものがこの展覧会のテーマであるとしており、4つの「ポイント」が挙げられています。
・展示作品の保険評価額の総額は、どん引きするくらい高額です(残念ながら詳細は言えません)。
・コレクター気分を体験できる「ゲーム」を用意し、作品の「価値」を考える場ともします。
・かつてない挑戦心と遊び心にあふれた展覧会を目指しています。
・作品が多種多様なので、来館者を飽きさせません。
「自らそれを言うか」という感もなきにしもあらずですが、内容が気になるのも確か…。
このコレクションは、ヤゲオのCEOでもあるピエール・チェン氏が自ら選定。同氏は学生時代からプログラミングで稼いだお金で作品を買うほどのアートファンで、なんでも別荘のバスルームにマン・レイ、リビングにウォーホルが展示しているのだとか。オフィス内にも至るところに作品が飾られているという、なんともうらましい環境を構築しているようです。
とはいえ、私設の財団としては所蔵が難しいヘンリー・ムーアやアリスティド・マイヨールやルイーズ・ブルジョワなどの彫刻作品も収集をはじめており、ロンドンのテート・ギャラリーなどにその一部を寄贈。有名美術専門誌でもここ二年間で世界トップ10にランクインするなど業績への評価も高く、一介の成金の道楽に留まらないラインナップなのも間違いないところでしょう。
ビジュアルに使われているのは、マーク・クインの「ミニチュアのヴィーナス」(2008年)。スーパーモデルのケイト・モスがヨガのポーズを取ったところを金箔で覆ったという、インパクト抜群の豪奢な作品です。これをあえてトップに持ってきたというあたりも挑戦的なのではないでしょうか。
展覧会では、コレクターの感覚を追体験することができるインタラクティブな仕掛けを用意し、「作品の”価値”とはなにかを考える場にもなっている」というメタなテーマを打ち出してもいて、普通の名作展とは違うテンションは異色といえそう。これが吉と出るか凶と出るか微妙なところですが、とにかく意図は明確。集まっている作品も無視するには惜しいので、悔しいけれど行かざるを得ないというアートファンが多いのではないのでしょうか。
『現代美術のハードコアはじつは世界の宝である展』概要
会期:2014年6月20日~8月24日
時間:10時~17時(金曜は20時まで、入館はいずれも閉館30分前まで)
休館日:月曜日(7月21日は開館)、7月22日
主催:東京国立近代美術館、ヤゲオ財団
協力:全日本空輸株式会社、ヤマトロジスティクス株式会社
会場 :東京国立近代美術館 1F 企画展ギャラリー+前庭
東京都千代田区北の丸公園3-1
観覧料:一般1200円/大学生500円
展覧会情報現代美術のハードコアはじつは世界の宝である展 ヤゲオ財団コレクションより (東京国立近代美術館)
http://www.momat.go.jp/Honkan/core/index.html
乙女男子。2004年よりブログ『Parsleyの「添え物は添え物らしく」』を運営し、社会・カルチャー・ネット情報など幅広いテーマを縦横無尽に執筆する傍ら、ライターとしても様々なメディアで活動中。好物はホットケーキと女性ファッション誌。
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