日本にはマスメディアの危機なんてない。あるのは社員の高すぎる給料だけだ

金融日記

インターネットの普及で、テレビ局や新聞社にとって厳しい時代になってきたと思っていましたが、赤字の理由は意外なとことにあったのですね。今回は藤沢数希さんのブログ『金融日記』からご寄稿いただきました。

日本にはマスメディアの危機なんてない。あるのは社員の高すぎる給料だけだ
アメリカで新聞社が金融危機による経済の急激な落ち込みの煽(あお)りを受けてつぶれたり、日本でも大手テレビ局や新聞社が赤字決算を発表したりして、世間ではテレビや新聞などの伝統的なマスメディアの危機が叫ばれている。

またグーグルやヤフーのような巨大ポータルサイトのアクセス数が、テレビや新聞の視聴率や購読数に匹敵するほど急成長しているし、個人ブログやインターネットで配信するニュース・サイトなどのネット・メディアがやがて既存のテレビや新聞などのビジネス・モデルを崩壊させるともいわれている。

このようなメディアを取り巻く状況に対して、インターネット・メディアで活躍するジャーナリストからは、今日まで日本のメディアを支配してきた大手テレビ局や新聞社の終焉(しゅうえん)を歓迎する声まで聞かれる。

もともとインターネット・メディアは、少なくとも部分的には、日本で圧倒的な支配力を持ち、時に都合のよい世論を一方的に形成する従来のマスメディアに対するアンチテーゼとして発展してきた経緯もあり、インターネットの世界で活躍する識者からはマスメディアの衰退、そしてインターネットから次々と生まれる新しいメディアの出現をむしろ社会にとって好ましいことととらえる意見が圧倒的だ。

その一方で、日本のテレビ局や新聞社はジャーナリズムという社会にとってかけがえのない公共財を提供する重要な機関であり、インターネットの無料メディアの出現によってその経営基盤を脅かされているのならば、著作権などの権利強化やインターネット・メディアに対する規制、そして政府による補助金などで既存のメディアを積極的に守っていかなければいけないという意見もある。

いずれにしても、日本の伝統的なマスメディアは危機に陥っているというのが共通の認識のようだ。
しかし、僕の認識はずいぶんと違う。僕は日本にはそもそもマスメディアの危機なんてものは存在しないと思っている。

依然としてテレビの視聴者数は圧倒的だし、新聞の購読者数も日本は非常に多い。テレビの人気番組は1000万人超の人が視聴するし、『読売新聞』は1000万部、『朝日新聞』は800万部、『日本経済新聞』は300万部程度の発行部数があるといわれている。

インターネット・ビジネスをちょっとかじったことがある人ならすぐにわかると思うが、この視聴者数、購読者数は圧倒的だ。ネット放送などが話題になっても、せいぜい視聴者数は数千から数万程度であり、テレビや新聞に比べればゼロの数がふたつ以上違うのである。むしろこれほど恵まれているのに赤字決算を出すことなんてことがあり得るのかというのが率直な感想だろう。

しかし赤字決算には種も仕掛けもある。これらのテレビ局や新聞社の社員の平均給与がべらぼうに高いのだ。

大手テレビ局とメーカーの社員の平均年収

日本にはマスメディアの危機なんてない。あるのは社員の高すぎる給料だけだ

出所:会社四季報 *1 、年収プロ *2
*1:『東洋経済Online』「会社四季報」
http://www.toyokeizai.net/shop/magazine/shikiho/detail/BI/15b1cbd4873a0739213d4abd09ee8b3e/
*2:『年収プロ』
http://www.nenshu.jp/

フジテレビの社員の平均年収は軽く1500万円を超えるし、TBSも1500万円弱、テレビ朝日、日本テレビも1300万円超えである。その一方で『ソニー』の年収こそ900万円を超えるが、パナソニックや東芝や日立は700万円程度である。

要するに世界に誇る日本のハイテク・メーカーの社員の年収は、テレビ局の社員の半分なのである。

新聞社は上場していないので詳細なデータは不明だが、日本の新聞社はこれらのテレビ局の筆頭株主になっており、テレビ局社員と同等の年収を得ていると思われる。

これだけ社員に大盤振る舞いしていたので、リーマンショックにより急激に落ち込んだ景気により広告収入が急減したため赤字決算になっただけなのである。広告収入が激減しても、社員はリストラされていないし、変わらずに高い給料が支払われているのだから、会社が赤字になったという小学生でもわかる話なのである。

それではどうすれば経営が改善して、利益を出し持続可能なメディア企業として社会に貢献することができるのだろうか?

簡単なことである。社員をリストラして給料を減らせばいいのである。

日本のメディア企業は設備もすでにあるので資本は人だけである。その頭数を減らすか、ひとり当たりのコストを減らすか、その両方をやるだけなのだ。

たったそれだけのことでいくらでも利益がだせるのが日本の大手メディア企業なのである。まったく危機なんてものではない。

また電波利権があるのでインターネット企業がテレビ放送をすることはできないが、テレビ局や新聞社がネット・ビジネスをすることは簡単にできる。

『日本経済新聞 電子版』は有料化され、ネットで散々たたかれているが僕は成功すると思っている。

日本ではビジネスや経済のニュースでは、日経新聞がほとんど寡占状態でライバルがいない。だから少々値段を高くしても多くの人が購読せざるを得ないのだ。

みんな目をつぶって胸に手を当ててよく考えてほしい。

日本のマスメディアで働く人たち、そして彼らが我々日本国民に提供するサービス、つまりテレビ番組や新聞のニュース、これらのサービスがメイド・イン・ジャパンのプロダクトを作り、それを世界に売る日本のメーカーのエンジニアたちの2倍の給料に本当に資するのかどうかを。

日本のマスメディアは、本当に我々の社会を豊かにする報道をしてきのだろうか?そして、国家権力を監視するというジャーナリズムの役割を真摯(しんし)に担ってきたのだろうか?本当にメーカーの社員の2倍の給料をもらうだけの社会貢献をしてきのだろうか?

こういうことを考えれば、さらに規制を強くしてインターネット・メディア等を排し強固な利権を守ろうとしたり、経営危機を理由に実質的な政府の補助金を引き出そうとする政治活動が、いかに滑稽(こっけい)なことかわかるだろう。

日本のマスメディアに危機なんて存在しないのだ。そこにあるのはただ単に高すぎる社員の給料だけなのである。

執筆: この記事は藤沢数希さんのブログ『金融日記』からご寄稿いただきました。

文責: ガジェット通信

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