ロン・ハワード監督×山内一典(「グランツーリスモ」)スペシャル対談! 映画『ラッシュ プライドと友情』
1976年のF1世界選手権を舞台に、2人の天才ドライバー、ニキ・ラウダとジェームス・ハントの戦いと絆を描いた映画『ラッシュ プライドと友情』。『ビューティフル・マインド』、『ダ・ヴィンチ・コード』の名匠ロン・ハワード監督が、まるで当時にタイムスリップした様な迫力のレースシーンと、繊細な人間ドラマを描きあげ、公開前から大きな話題を呼んでいます。
レースをテーマにしたエンターテイメントと言えば、1997年に第一作目が発売以降、世界中にファンを持つリアルドライビングシミュレーターゲーム「グランツーリスモ」シリーズを思い浮かべる方も多いはず。
今回は、ロン・ハワード監督と「グランツーリスモ」の生みの親であるプロデューサー山内一典さんの2ショットインタビューがガジェット通信独占で実現! 監督はもちろん、ロン・ハワード監督作品の大ファンであるという山内さんからも映画について色々とお話を伺ってきました。
――本作は1976年のF1世界選手権を舞台にした作品ですが、今この映画を撮った理由とは何でしょうか?
ロン・ハワード監督:自分がその作品を作る事でたくさんの事を学べて、また作品と一緒に成長出来る様な題材を探していたのですが、今回の題材はピッタリだと感じました。F1の世界を描くのはとても映画的だと思ったんですね。後は、山内さんがゲーム制作でやられているような「自分がまるでコックピットに入っている様な体験」を観客に与えたいなと思ったわけです。そして何より、この映画に登場するのはとにかくクールな2人です。その2人に私自身も魅せられているんだ。
――とにかく大迫力のレースシーンは、映画ファンのみならずレースファンも大興奮だと思います。相当な苦労があったのでは無いでしょうか?
ロン・ハワード監督:撮影をはじめて気がついた事だったのですが、レースのシーンを撮影するというのは自分が思っている以上に危険が伴う事でした。特に富士スピードウェイの雨が降っているシーンの撮影では、台本に無いスピンもたくさん起こってしまって、自分もとても心配になりましたし、困難が多かったです。過去に実際に行われたレースが登場するので、その時のレーサーの心情を描いたり、編集の仕方も撮影の仕方もレースによって都度変えていきました。
山内一典氏:僕はレースをテーマにした映画を色々と観ていますが、レースの映画でこんなに素晴らしい映画って無いですよね。
ロン・ハワード監督:ありがとう。そう言っていただけて本当に嬉しいよ!
山内一典氏:僕も「グランツーリスモ」というゲームを作っているので、コースについては勉強しているのですが、ありとあらゆるコースが当時のまま再現されていたり、それぞれのレーサーの心境が緻密に描写されていて感動しました。
特に印象に残ったのは、ニキ・ラウダがパーティの帰りに、その後恋人になる女性と出会いますよね。葡萄畑が広がっている背景に、美しい女性と車。レースの映画至上最も美しいシーンなのでは無いかと思いました。
ロン・ハワード監督:脚本のピーター・モーガンが書いたストーリーは僕も本当に素晴らしいと思うよ。レーサー達の心情を細かく研究していながら、観客に驚きを与え、また笑えるシーンを脚本に書き込む。山内さんが褒めてくださったシーンは僕も気に入っているよ。
山内一典氏:その女性はやがて妻になり、天才レーサーを支えるわけですが、同じ様な構造で監督の作品である『ビューティフル・マインド』のジョン・ナッシュの妻アリシア・ナッシュ、『アポロ13』では船長を支える妻、どの女性も理想的で、ハワード監督の描く女性ってとっても素敵なんですよね。「あんなに素敵な女性って実在するんだろうか」と思ったりもするのですが(笑)。監督の理想像であったり、モデルになる人物はいるのでしょうか?
ロン・ハワード監督:大変幸福な事に妻のシェリルは、僕のやる事をとても応援してくれて、いつも支えてくれる。だからこそ映画の登場人物のパートナーもその様に描けるのだと思います。男の大きなチャレンジは、女性のサポートによって成し遂げる事が出来るとう思っているんです。確かに「あんなに素敵な女性いるの?」と聞かれる事はあるのですが「いるんだよ。例えば僕の妻の様にね」と即答出来る自分がとっても幸せだと思います。
山内一典氏:それを聞いてとても安心しました。だからこそ監督の描く女性は素晴らしいのですね!
――本作はニキ・ラウダとジェームス・ハントという2人の天才ライダーの友情を描いていますが、真の友人である一方お互いを成長させる強いライバルでもありますよね。世界のトップ・クリエイターであるお2人にはライバルの様な存在はいるのでしょうか?
ロン・ハワード監督:僕にはそういう存在はいません。尊敬する監督監督はたくさんいます。でも、映画のプロジェクトというのはそれぞれの個性があって、競争するものでは無いと思っているんですね。映画は僕自身を反映するものであり、人の作品と自分の作品を比べる事は出来ないと思うんです。
ただ、人の作品を観て「うらやましいな、僕だったら出来ただろうか」と感じる事は、僕の映画を撮り続けるモチベーションの一つにもなっているんだよ。
山内一典氏:僕もハワード監督がおっしゃった事と同じ意見です。ビジネスとして観ると個々の作品は競っていると思うのですが、僕ら作り手としては関係無いんですね。ユーザーにどれだけ良い物を届けられるかが勝負なので。それしか気にしていません。
――まずは観客・ユーザーの為にものづくりをする。世界中にファンを持つお2人らしいご意見ですね。本当に今日はどうもありがとうございました!
『ラッシュ プライドと友情』ストーリー
1976年のF1世界選手権を舞台に、2人の天才ドライバー、ニキ・ラウダとジェームス・ハントの戦いと絆を描いた作品。76年のF1チャンピオンシップで、フェラーリのドライバーとして快調なレースを続けていたラウダは、ドイツ・ニュルブルクリンクで開催された第11戦ドイツGPで大事故に見舞われる。奇跡的に6週間で復帰を果たしたラウダだったが、ライバルでもあるマクラーレンのハントにポイント差をつめられてしまう。チャンピオンシップを競う2人の決選は、富士スピードウェイで行われる日本での最終戦に持ち越されるが……。
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