資源エネルギー庁の無計画を、資源エネルギー庁の報告書から知る(中部大学教授 武田邦彦)

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資源エネルギー庁の無計画を、資源エネルギー庁の報告書から知る(中部大学教授 武田邦彦)

今回は武田邦彦さんのブログ『武田邦彦(中部大学)』からご寄稿いただきました。
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資源エネルギー庁の無計画を、資源エネルギー庁の報告書から知る(中部大学教授 武田邦彦)

悪事は意外なところから露見するものだ。綿密に検討したように見える資源エネルギー庁が1か月ほどまえに出した日本のエネルギー計画を見ると、そこに「無計画」なお役所を持った日本という国の哀しさを感じることができる。

資源エネルギー庁の無計画を、資源エネルギー庁の報告書から知る(中部大学教授 武田邦彦)

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この詳細な検討の最後の結論をまず見てみよう。まず結論として、次の図に示したように、原子力、石炭火力、天然ガス火力、風力の4つを上げているが、もともとの資料はすべての電力方式を比較しているが、ほぼこの4つで肝心なことは考えることができる。

資源エネルギー庁の無計画を、資源エネルギー庁の報告書から知る(中部大学教授 武田邦彦)

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原子力の棒グラフの一番上に何も書いていない薄紫のところがあるが、これは福島の原発の損害を入れたものだから、当然、原子力が負担すべきコストだ。現に起こっている事故の損害をいれないで事業改革を立てることができれば、「危険な産業もOK」となり、著しく不適正になる。だから、原子力はキロワットアワー(KWH)あたり11.5円程度と推定している。

これに対して、石炭火力や天然ガス(LNG)火力では、CO2対策費が入っているが、世界的に見てCO2対策をしているのは日本だけだから、これは国際的には不要だ。だから、石炭が8円、天然ガスが10円となる。

ここまでで一つ、考えてみたい。この計算を見てみると、さして新しい方法などを使っていない。普通の設備、燃料、管理費などを計算しているだけだ。つまり、この値は10年ほど前から同じである。

今、日本の電力費は家庭でKWHあたり20円を払っている。でも石炭火力にして、送配電を工夫すれば14円ぐらいで電気を配れるはずだ。そうすれば家計も中小企業も助かるだろう。石炭火力を8割、天然ガスを2割ぐらいに原子力を全廃して何の問題もない。

そうなると、なぜ今まで国民の多くが心配している原子力を資源エネルギー庁はやってきたのだろうか? それにはつぎのような理由があった。

1)原子力の政策経費(税金)、事故保険金などを無視して原子力が良いように計算していた
2)電力会社は本来、原子力の事業に使わなければならないお金を税金で出してもらうので原子力はうまみがあった
3)税金を投入してもらうために、電力会社は、政治家、役人、学者にお金を配り、役人の天下り先を用意した。つまり、多くの人が自分のために国を売った、
4)日本以外の国がCO2対策をしていないのを隠し、国民に膨大な損害を与え続けてきた。

4)を支持したのがマスコミで、自分たちの新聞販売量などを上げようとしたからで、これも「世界で日本だけ」なのだから国を売る行動だった。

ところで、原発の「事故対策費」と、風力の「改善コスト」がともに根拠薄弱になっている。それは「資源エネルギー庁、もしくはその委員会が適当に決めた数値」だからだ。本来なら、民間会社である電力会社が保険会社と話し合って、「原発事故保険」をかけることで事故対策費のコストははっきりする。

もともと保険とは「船が沈没した時にそれを補償する」ということでヨーロッパなどで発展してきたもので、イギリスのロイドなどの巨大保険会社は基本的にはどんな大型の保険にも応じる。そうすれば実施者のリスクを含んだ本当の保険費用が産出されるだろう。

この報告書では風力や太陽光発電などで大幅な「改善見込み」を示しているが、これも政治的なもので全く信用できない。とくに太陽光発電などは1970年初頭から国が膨大な税金を出してきた。科学技術は30年もやって芽が出ないものはでない。だから、「現状そのものが本質的なコスト」と言うべきである。

さらに、もし石炭火力がもっとも有利で、自然エネルギーが不利なら、資源エネルギー庁は日本国民のために、石炭火力を推進し、国民に今までの誤りを説明する必要がある。資源エネルギー庁は国民からの税金で運営されているのだから。

この報告書は資源エネルギー庁のこれまでの行政がいかにインチキだったかを図らずも良く示した資料になっている。

執筆: この記事は武田邦彦さんのブログ『武田邦彦(中部大学)』からご寄稿いただきました。

寄稿いただいた記事は2014年02月03日時点のものです。

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