正月の古き良き習わし「お屠蘇」の効能
江戸時代に一般家庭に広まった正月の風物詩「お屠蘇」
新年明けた元旦の朝に飲むお酒と言えば、お屠蘇(とそ)。昔からの正月の風物詩です。お屠蘇とは、酒やみりんで生薬(屠蘇散・とそさん)を漬け込んだ一種の薬草酒で、邪気を払い長寿を祈る縁起酒です。
正月にお屠蘇を飲む習慣は、中国で始まったと言われています。諸説ありますが、三国時代の魏(ぎ)の名医・華蛇(かだ)が考案したという説が有力のようです。唐代に仙人が考案した、という説もあります。その仙人の住んでいた洞窟が「屠蘇庵」という名前だったというものです。いずれにしても日本には平安時代に伝わり、嵯峨天皇の頃に宮中の正月行事として始められ、江戸時代に一般家庭に広まりました。
古き良き習わしは世界に誇るべき日本の文化遺産
初日や神棚、仏壇などを拝んだあと、家族全員そろって少し改まって新年の挨拶。そして、雑煮やおせち料理を食べる前にお屠蘇を酌み交わします。お屠蘇を飲むときには、年少者から年長者へと盃を順にすすめます。これは若者の精気を年長者に渡す、という意味合いが込められてのことです。
お屠蘇は、まさに日本の古き良き正月の習わしのひとつです。しかし、多くのしきたりや風習が急速に廃れつつあるように、新年にお屠蘇を飲む家庭も年々減ってきているようです。こういう古き良き習わしには、日本的な精神文化が秘められており、それらによって日本人なるものが形作られてきました。世界に誇るべき日本の文化遺産として、受け継いでいきたいものです。
オススメは「ぬる燗」。お屠蘇は風邪の予防など健康増進にも役立つ
そもそも屠蘇酒は正月節の立春に飲まれていたもので、これは冬に溜まった悪い流れを春に向かって解消するという意味がありました。生薬である屠蘇散には、正月の「食べ過ぎ・飲み過ぎ」で疲れた胃腸の働きを整えてくれたり、のどを保護してくれたりする作用もありますので、正月を過ぎてからも風邪の予防など健康増進にも役立つ健康ドリンクでもあるのです。
お屠蘇を飲む場合、伝統的には屠蘇器のことや作法などもありますが、難しく考えずに、その年の邪気を払い、一家の無病長寿を祈念して飲むことが何より大切です。作り方は簡単。飲む前夜に所定の量の日本酒または本みりんに「屠蘇散」を漬け込んでおくだけです(割合は、屠蘇散の袋に記されています)。屠蘇散は、12月になると多くの酒屋、薬局で販売されています。すっきりとした味わいなら純米酒で、甘いのがお好きなら本みりんで屠蘇散を漬け込むと美味しいお屠蘇が作れます。また、お酒とみりんをブレンドし、甘さと口当たりを調節することで、お好みの味わいにすることもできます。
特にオススメは「ぬる燗」です。お屠蘇を38℃~40℃の「ぬる燗」で飲むと上品な香りと甘味が口中に広がり、なんとも心地良くなります。
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