中小企業いじめを防ぐ消費税転嫁対策特別措置法
中小企業が消費税額を転嫁できずに困窮しないように
消費税が8%に増税されます。「今までの請求金額にあと3%上乗せして請求できますか?」と中小企業に聞いてみると回答は分かれます。1997年に消費税が3%から5%に上がった当時、その消費税額を適正に転嫁できた中小企業者は50%に過ぎなかったそうです。今回の消費増税で同じことが起きないよう、けん制の意味も込めて消費税転嫁対特別措置法ができました。
この法律ができた目的は、経済の冷え込みを最小限に抑えるため、日本の企業数全体の99%を占める中小零細企業が消費税額を転嫁できずに困窮することのないように、様々な角度から禁止事項を設けて大企業の横暴を抑えることにあります。法律の体系としては、次の4つに分類されます。
(1)消費税の転嫁拒否等の禁止
(2)「消費税還元セール」等の広告の禁止
(3)値札の付け方に関するルール(総額表示の例外の容認)
(4)転嫁カルテル・表示カルテルの容認
増税前に本体価格を減額させる業者も。泣き寝入りせずに相談を
今回は、「(1)消費税の転嫁拒否等の禁止」を詳しくみていきます。ここで禁止される行為は、「減額」「買いたたき」「購入強制・役務の利用強制・不当な利益提供の強制」「税抜価格での交渉の拒否」「報復行為」の5つです。
まずは、増税分の価格転嫁を拒んで、増税前の価格に据え置くこと(「減額」「買いたたき」)を禁止しています。法の目をかいくぐるかのように、消費税額部分は通常通り支払うことを前提に、新税率施行前に本体価格そのものを減額させる業者も出てきているようです。一見、消費税の減額とはならないと考えられがちですが、そのような行為も消費税増税との因果関係が明らかである場合は、公正取引委員会の検査対象となることもあります。この法律施行開始日は2013年10月1日で、すでに施行されています(ちなみに2017年3月31日には効力がなくなります)。このような行為が疑われるときは、泣き寝入りすることなく、消費税価格転嫁等総合相談センター等に相談してください。
不当な利益提供の強制、税抜価格での交渉の拒否、報復行為も禁止
次に、新税率を適用して支払う代わりに、売り手にとって不要な品物の購入を要求したりすること(購入強制・役務の利用強制・不当な利益提供の強制)も禁止です。この中には、協賛金や協力金等の名目の如何を問わず行われる金銭の提供や、駐車場や商品棚の整理等の作業への労務の提供をさせることも含まれます。
そして、売り手が「本体価格と消費税額を別々に記載した見積書等」を買い手に示して交渉したときに、その受け取りを拒否し「消費税額を加えた総額(税込価格)のみを記載した見積書等」での交渉を要求すること(税抜価格での交渉の拒否)も禁止されています。これが横行すると、消費税額を正規の金額で上乗せすることが難しくなり、結局「買いたたき」されてしまうことになりかねないからです。
最後に、上記のような行為をされたことを公正取引委員会等に知らせたことを理由として、取引数量の削減や取引停止、その他の不利益な取り扱いをすること(報復行為)も禁止です。報復を恐れ、その事実を訴えることができない中小企業は多いかもしれません。そこで、政府としては、まずは誰が通報したのかわからないようにすることを徹底し、それでも報復行為が行われたと認められた場合は、厳正に対処し、この法律の規定に基づいて勧告および社名の公表といった措置を講じるようです。
ここまで細かく法律に規定されると、さすがに大手企業は、それと疑われるような行為は慎むのではないでしょうか。しかし、この法律の取り締まり対象者は、大手企業にも小売にも限りません。業種を問わず、中小企業と継続的に取り引きする法人も対象となります。つまり、中小企業自身も取り締まりの対象となり得るので、注意が必要です。
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