「真性のレズピアンなんていない」!? セクシャルマイノリティについて学べる『百合のリアル』

テレビ番組でレズビアンであることをカミングアウトして以来、レズビアンライフサポーターとして活躍。フランス国籍の女性と結婚して現在パリ在住の牧村朝子さんが自身の経験に基づきセクシャルマイノリティについてまとめた『百合のリアル』が星海社新書から刊行されて話題になっています。

マジョリティの感覚では「百合」というとレズピアン限定のような印象を受けてしまいがちですが、この本では冒頭で「レズピアンという概念と、牧村朝子という事例を通して、区別されている状況との向き合い方を見つけるための本」と定義し、セクシャルマイノリティを切り分けていく現状を見据えつつ、その区切りの曖昧さやキリのなさを指摘。簡単に「男/女」や「異性愛/同性愛」といった分類をするのではなく、社会と対峙する上で自分自身の性や指向をどのように認識していく大切さを説く内容になっています。
バッサリと「ホモ」「レズ」と決めつけることを廃しているので、ともすれば難しくなりがちなところ。それを『百合のリアル』では、恋愛に悩むヒロミ・アキラ・はるか・サユキの四人がレズピアンのマヤ先生のセミナーに参加するという対話形式を採用。章ごとにマンガも入れることにより、性別や性指向について意外と自覚することがないといったことや、セクシャルマイノリティとして生きていく上での障害となる可能性のあることについて分かりやすく教えてくれます。

牧村さんは「真性のレズピアンなんていない」といい、「性に対するあり方は十人十色、一〇〇人一〇〇通りに違う」と強調。性の多様性と言葉が細分化していても「正しい分類はない」と強調。カテゴライズにアイデンティティをとらわれず、「甘くやさしい女の子の匂いに惹かれる」「ぷにぷにまぁるい身体を抱きしめたい」という気持ちが「わたしが思うわたし自身のあり方」といいます。

また、自身の体験として、「女性が好き」という自分を認められるまでの涙ぐましいまでの紆余曲折を告白。10歳で女の子に初恋をした経験が良くないことと思い込み、記憶を封じるように男性と恋愛を重ねている中、「最初にカミングアウトを済ませなければならなかったのは自分自身だった」と語り、大学でジェンダー・セクシャリティを学び、レズビアン限定のイベントなどに顔を出していくようになったとのこと。
それでも恋愛が上手くいかなかったというあたりが面白いところでもありますが、現在では「単に女の子に惹かれる”自分”」であるといい、性別・志向に名前を付けることだけでなく「自分だけのスタイルを作り上げること」を頑張る必要がないと説きます。これには現在の”妻”との出会いが大きかったようです。

他にも、婚姻をはじめとする法律をはじめとする社会との付き合い方や、興味があってもなかなか聞くことが出来ないセックスについても言及。当事者だけでなく、違った価値観を認められるようになるための一冊としても読む価値があるといえそう。星海社のサイトでは試し読みのダウンロードができるので、気になるという人はこちらをチェックしてみてはいかがでしょうか。

『百合のリアル』牧村朝子 – 星海社新書 ジセダイ
http://ji-sedai.jp/book/publication/yuri.html

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ふじいりょう

乙女男子。2004年よりブログ『Parsleyの「添え物は添え物らしく」』を運営し、社会・カルチャー・ネット情報など幅広いテーマを縦横無尽に執筆する傍ら、ライターとしても様々なメディアで活動中。好物はホットケーキと女性ファッション誌。

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