世界中から注目の『サカサマのパテマ』いよいよ公開! 吉浦監督・藤井ゆきよ・岡本信彦インタビュー

『イヴの時間 劇場版』で話題を呼んだ吉浦康裕監督が原作・脚本・監督を勤める映画『サカサマのパテマ』がいよいよ11月9日より公開となります。

『サカサマのパテマ』は、毎日空ばかり見ている少年エイジと、“サカサマ”で空から落ちてきた少女パテマが出会う事からはじまるファンタジー作品。住む世界も価値観も異なる2人がお互いに惹かれあい、力を合わせていくという新感覚のボーイミーツガールなストーリーです。

本作は、国内のみならず世界各国で上映が決定している他、先日スコットランドで開催された「ラブアニメ映画祭2013」にて『言の葉の庭』や『ハル』など数ある作品の中から、観客賞、審査員賞のW受賞。世界中のアニメファンから注目されています。

主演を務めたのは、本作が初のヒロイン役となる藤井ゆきよさん、エイジ役には人気声優の岡本信彦さん。2人の熱演によって作品はさらに魅力的なものとなっています。今回は吉浦監督、藤井さん、岡本さんの3名にインタビューを慣行。作品にかける想いを聞きました。

――『サカサマのパテマ』とても独創的で観た事の無い物語でした。まず監督にこの世界観や物語を思いついたきっかけを教えていただきたいのですが。

吉浦監督:まずはポスターにあるコンセプト絵は僕が企画書に書いたイラストをブラッシュアップしたものなんです。僕は子供の頃から空に落ちるという妄想をよくしていて、すごくよい天気の日に雲海を見上げた時に、ふっと落ちていくんじゃないかと考える事があって。「サカサマ人間」の想像もしていたんですね。

アニメ監督を生業にする様になってアイデア帳に「サカサマ人間」ってキーワードを残していたんです。『イヴの時間』が終わった後、何か長編を作れるかもしれないって思った時にそれを見て。最初は全人類がサカサマというスペクタクルな作品を作ろうとしていたんですが、ちょっと大変だな。「じゃあヒロインが一人だけサカサマだったら?」と思いついた瞬間に、ストーリーがどんどん浮かんで、一気に書き出したんです。

――子供の頃はよく妄想や空想をしていたんですか?

吉浦監督:今でもしちゃいますね。漫画『東京大学物語』の中で主人公がふっと妄想に入る瞬間が描かれてるんですけど、俺すごい分かると思って(笑)。ちょっとすれ違った人が殴り掛かってきたらどうしようとか、未だに思ってる。中二病で困っちゃいますよね。

――そんな妄想が作品に生きているからすごいですよね。

岡本:そうですよね。僕が考えつくのって「急に風を操れたら」とか……。

藤井:「空を飛べたら」とか…。サカサマのヒロインって絶対に思いつかないですよね。

吉浦監督:後は、この映画を作るにあたって、一つ参考にした小説があって、H・Fセイントという作家の『透明人間の告白』という本なのですが、これがとても面白くて。ある事故があって研究施設の周りだけが全て透明になってしまうんですね。家も家具も人間も。それで透明人間になってしまった男が、どうやって生きていくかという話なんです。割と海外の小説やドラマのロジカルな物の考え方は好きですね。

――藤井ゆきよさん、岡本信彦さんのキャスティングについてはどんな想いがあったのですか?

吉浦監督:声の雰囲気が全てでしたね。14歳の設定だったんですけど、それは作品の中で抱きつくシーンが多かったからなんです。男女が抱き合ってすぐに大人なムードになっても嫌だし、全く無邪気なのも嫌だったんです。それで“14歳感”ってなんだろうと思った時に、声の初々しさが大切だなと。他にも選んだ理由はあるんですけど、まず最初はそれですね。

岡本:藤井さんと監督の熱意がずっと現場を包んでいたし、それによって皆の士気が上がったと思うんですね。だから仕事というよりは何か一つの目標にむかって走っている、という雰囲気で。藤井さんも最初から全力投球で。

藤井:私は初めての大きな役だったので、アフレコが始まる前に監督と読み合わせをさせていただいたんですね。オーディションを3回やって、読み合わせもやって、監督の考えを誰よりも聞いたと思います。だから私もなんとかその想いに応えたいと、がむしゃらにやりました。だから、岡本さんにもその全力さが伝わったのかもしれませんね。

岡本:そうですね、だから負けない様にと言ったら変なのですが、僕も頑張らないと、という気持ちはありましたね。ただ、エイジという役はパテマとは違って冷静さも持っていないといけなかったので、そこのバランスは考えました。

吉浦監督:確かにエイジを演じる上で、そこは難しかったと思います。自分の作品って抑制を強いるシチュエーションを描いた物が多いんですよ。

――完成した作品を観た時はとても感動したのでは無いですか?

藤井:それが最初全然客観的になれなくて、自分のお芝居とか声が気になってしまって。何回も何回も観て1やっと少しお客さんとしての感想が持てるようになりました。

岡本:僕も全く客観的には観れないですね。映画が公開されて、皆さんの意見や感想を聞いてからやっと安心出来るというか。

吉浦監督:一緒です。岡本さんと全く同じ気持ちです。デジタルって修正しようと思えばいくらでも出来るけど、これ以上やってもそこまで良くならないという“飽和状態”って来ると思うんですね。そういう意味では『サカサマのパテマ』はちょうど良く盛り上がっている時に、バッチリ決まったなと。

藤井:私も今もう一度パテマを演じたら、それはパテマじゃない気がしますね。初めてのヒロインで色々戸惑いながらも全力でやっていた自分がパテマらしさにもつながったと思って。恥ずかしいくらい素直に演じたので。

――藤井さんのパテマ、生き生きとしていてすごく素敵でした。“パテマ”ってネーミングも本当にピッタリですよね。

監督:パテマもエイジもラゴスも途中で名前コロコロ変わったんですよ。その中でパテマに決めたのは、検索しても出てこなかったのと、ぱっと聞いただけで女の子だって分かること。本作は海外での上映も決まっているので、言語が違っても可愛らしい女の子だってイメージ出来ることが重要でした。海外の方は反応がダイレクトで面白いですね。笑って、驚いて、泣いての感情表現がすごい。

――そんな海外からも期待されている吉浦監督の作品ですが、次回作の構想はもうあったりするのでしょうか?

吉浦監督:短編はもう作っているんで、来年の春頃には発表出来そうです。前の作品からは想像も出来ない物を作るというのが、自分の中のテーマなのでどんな作品が出来るかは楽しみにしていて欲しいですね。

岡本:僕も藤井さんと一緒に監督の作品にまた出たいです。

藤井:私の事までありがとうございます!

岡本:吉浦監督の作品に出演出来たことがとても刺激的で。オリジナルアニメというのはアニメファンの方にももちろん、アニメを知らない方にも興味を持ってもらえる作品だと思うんですね。そういった作品に関われるのは本当に嬉しいし勉強になるし、とても良い経験になりました。

吉浦監督:『サカサマのパテマ』はお2人はもちろん、たくさんのキャストさんやスタッフに支えられて完成したので、「また出たい」そう言っていただける作品がまた作れる様、僕も頑張りたいですね。

――どうもありがとうございました!

『サカサマのパテマ』ストーリー

果てしなく坑道が続く地下世界に暮らす、地下集落のお姫様・パテマ。天真らんまんで好奇心旺盛なパテマのお気に入りは、立ち入り禁止となっている「危険区域」を探険することだった。世話役のジィの心配をよそに、いつものように危険区域へ飛び出したパテマだったが、予想だにしなかった出来事に遭遇してしまい……。
11月9日(土) 全国劇場公開
配給:アスミック・エース

(C)Yasuhiro YOSHIURA/Sakasama Film Committee 2013

http://patema.jp

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藤本エリ

映画・アニメ・美容が好きなライターです。

ウェブサイト: https://twitter.com/ZOKU_F

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