映画『さとこはいつも』青木柚インタビュー 沖田修一監督の魅力は「映画館を出て日常に戻った後にも彩りを与えてくれる」
有村架純×石田ひかり×姫野花春をトリプル主演に迎え、沖田修一監督・⻑編映 画デビュー20周年となるアニバーサリーイヤーに贈る完全オリジナル新作『さとこはいつも』が公開中です。
同級生に恋する鼻炎持ちの中学 3 年生・ソフト部所属の中井聡子(15歳)。 姪っ子と韓国カルチャーLOVE!映画配給会社の宣伝部でバリバリ仕事しつつ、6 年目になる不倫が倦怠期を迎えている⻄田沙都子(35歳)。 子育てがひと段落、ようやく自分の時間ができた飯島里子(55歳)。 三者三様、まったく違う人生を歩む 【さとこ】 たち・・・。それぞれに降りかかる出来事や運命的な出会いをきっかけに、自分の人生を “物語”として書き始めたとき、3人の「さとこ」たちが少しずつめぐり合っていきーー!?
本作で、沙都子の後輩である嶋雄介と、劇中韓国ドラマ『あの日、私たちの夢みたものは』のドンヒの一人二役を担当した、青木柚さんにお話を伺いました!
──本作とても素晴らしかったです。オファーを受けた時、役柄を聞いた時はどの様に感じましたか?
まず、沖田監督のオリジナル作品に出演させていただけるということが何よりも幸せだなと思いました。沖田監督とは何度かご一緒させていただきましたが、映画は初めてで。だいぶ前に「柚君にやってもらいたい役があるんだよね」と言っていただいていたので、「どんな役なんだろう?」と楽しみにしていました。映画への出演が本当に実現したことの嬉しさと、一人二役という滅多にない機会をいただけたことのワクワクでいっぱいでした。
──私も拝見していて、全く異なる青木さんの二役を観られたので驚きました。
嶋君のシーンとドンヒのシーンの撮影の間に結構時間があったので、2回クランクインして、2回クランクアップした感覚でした(笑)。韓国語のセリフもあるので、ドンヒへの準備の時間の方が遥かに多いです。韓国語の先生にご指導いただいて、お相手の俳優さんも韓国の方だったので相当助けていただいています。「ケンチャナヨ」の発音だけでもすごく時間がかかって…。今も実生活で使わない様なセリフばかり覚えています。
──韓国ドラマに出てくる俳優さんそのものでした!
ありがとうございます、映画マジックです(笑)。韓国風のメイクもしていますし、肌も超ピカピカにしてもらっているので。韓国ドラマはこれまであまり観る機会が無かったのですが、今回は参考にいくつか鑑賞しました。沖田監督が、劇中韓国ドラマ『あの日、私たちの夢みたものは』のすごく熱量のこもった企画書を書いていて。設定やあらすじもかなりしっかり作られていたんです。監督自身も「めちゃくちゃ韓国ドラマ観た」と言っていましたし、撮影も相当楽しまれていたので、それに倣って自分も韓国ドラマ特有の演出に飛び込もうと思いました。
──嶋くんのキャラクターについてはいかがですか?
愛嬌のある青年だなと思いました。出演シーンはあまり多くないのですが、有村(架純)さん演じる沙都子とは短時間の中で関係が進むキャラクターだったので、説得力がある様、しっかり魅力的な後輩を演じなければいけないなと。
──沙都子は映画宣伝の仕事をしていますが、俳優の青木さんにとっても身近なお仕事ですよね。
本編を観て、「ポスター会議」はすごく興味深かったですね。ネット上などで、日本版のポスターって議題に上がることが多いじゃないですか。その裏側、じゃないですけれど「こういう会議で決められるんだ」と、自分も演者側として面白さを感じました。オリジナル作品だからこそ出来ることだろうな、と。
──「デザインはこちらの方が好きだけれど、セールス的にはこちらが…」という苦悩が、いちライターとしてもありありと伝わってきました。脚本全体で印象的だった所はありますか?
読み始めた時は一瞬、“さとこ”は全員同一人物なのかと思ったんです。それぞれ3人の“さとこ”の描き方と結末に向けてのつながり方が素敵で、痒い所に手が届く、じゃないですけれど、心のどこかをちょっとくすぐられるような物語だなと感じました。沖田監督のそういう、細かな所までのまなざしに映画好きは興奮するし、他には無い感性が散りばめられているなと。
──「神は細部に宿る」というか、本当に描写が丁寧でいらっしゃいますよね。
作品の中で起こる「事実は小説より奇なり」な出来事を信じられる様な描き方なんですよね。嶋くんとは別に15歳の聡子(演:姫野花春)の友達にも、韓国カルチャー好きな“嶋っちょ”という子がいたりして、「これは繋がっているのか?」と想像を掻き立てられる要素が多いので、何度観ても面白いだろうなと思います。
──私たちの現実と地続きのお話なのに、ちょっとパラレルワールド感もあって、すごく面白いですよね。改めて、沖田監督作品の魅力をどの様に感じられていますか?
言葉にするのが難しいのが沖田さん作品の素敵さだなとも思うのですが、すごく親しみやすいけれど、どこか貫いている所かなと思います。“作家性”というとまたちょっと違うかもしれないですけれど、どの作品にも、登場人物の距離感や話し方に沖田監督作品にしか無いものが確実にあるんですよね。今回も、それを現場で感じることが出来て嬉しかったです。
10代の頃、映画を観ることにハマった時に、監督や俳優さんなどを意識せずにたくさんの作品を観て、「この作品とこの作品好きだなあ」と思ったら、それが沖田監督の映画だったこともあって。「そりゃ、みんな大好きだよな」ととても納得しました。誰しもが身に覚えある風景をちょっと面白く描いてくれて、映画館を出て日常に戻った後にも彩りを与えてくれるというか。そこが沖田監督の好きな所だなと思います。
──「身に覚えある風景をちょっと面白く描く」すごく分かります。耳鼻科の吸入器のシーンも、見た瞬間、その感覚を思い出しました。
僕も喘息の治療などでああいう吸入器を使っていたので、すごく親しみがあるというか、経験がある人はクスッと笑っちゃいますよね。監督は「救おう」とは思っていないと思うのですが、何か救われる。その描き方が面白いし、カッコ良いですよね。
──「人は誰でも一冊なら、自分の本が書ける」ということもテーマになっていますが、青木さんはエッセイなど書いてみたいと思いますか?
いつかはやってみたいです。具体的にいつか、とか考えたことは無いのですが、こだわることは好きなので、自分の考えを残してみたいなということは思っています。本作を観た時に、僕だけじゃなくて、色々な方のものづくりの背中を押してくれる作品だなとも感じたんです。この映画を観た後に、自分が思っていること、たどってきたことをメモに書き出す人もいるんじゃないかなって。そうやって色々な方の創作や才能が広がっていったら、それも映画の持つパワーだなと思います。
──青木さんは色々な作品・役柄で、たくさんの経験を積んでらっしゃると思うので、ぜひエッセイや考えていることを読んでみたいです。
ありがとうございます。様々な性格の役柄をいただけることは本当にありがたいです。自分が自分に持つイメージが固まることが、僕としては一番怖いことなので、これからも柔軟に演じられるよう、自分自身の感覚や価値観を広げていきたいと思います。
──今後の作品もとても楽しみにしています。最後に、本作には“イカの塩辛”が何度も登場しますが、青木さんが毎日のように食べているものはありますか?
なんだろう…!あ、納豆ですね。最近、「納豆ご飯にタバスコをかけると美味しい」というのを見て、試してみたらすごく美味しかったのでハマっています。
──ぜひやってみます!今日は素敵なお話をどうもありがとうございました。
撮影:たむらとも
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