世界中を熱狂させたパンクバンド、その狂乱に翻弄された男は何を想うのか?『セックス・ピストルズ 破壊の設計図』アンドレ・レリス監督インタビュー
70年代後期ロンドン、世界中を熱狂させたパンクムーブメント。音楽、ファッション、アート、全ての価値観を根底から覆した“反逆の革命”セックス・ピストルズの誕生は偶然なのか必然なのか。その狂乱に翻弄された男が、全てをさらけ出す、衝撃のアナザーストーリー『セックス・ピストルズ 破壊の設計図』がアップリンク吉祥寺ほか全国にて公開中です。
1970 年代後半のロンドン、停滞したロックシーンを真っ向から否定し、鬱屈した社会の空気を爆発させるように登場したパンク・
ロックバンド、“セックス・ピストルズ“。テレビでは放送禁止用語を連発し、演奏は粗削り、ライブは破壊的。逆立てた髪、切り裂か
れたシャツ、破れたジーンズに安全ピンーそのスタイルは世界的ムーブメントとなり、デビューアルバム『勝手にしやがれ!!』は、パンク
の原型を決定づける歴史的ヒットとなった。しかし、成功の裏側でバンドは急速に崩壊する。最後のライブでジョニー・ロットンが「だ
まされた気分になったことはないか?」と吐き捨てて脱退し、バンドは解散。シド・ヴィシャスは恋人殺害容疑の渦中、薬物の過剰
摂取で21歳の若さで死去し、その刹那的な生涯は神話化されていく。
しかし、この物語には、“策士”マルコム・マクラレンと、後に世界的デザイナーとなるヴィヴィアン・ウエストウッドによる“台本”が存在したことをご存じでしょうか。そして、アルバム収録12曲中10曲を手掛けたにもかかわらず、この“台本”から消された男、初代ベーシスト、グレン・マトロックの存在を。本作は、その“悲運の男”マトロックが、全てを語りつくした、衝撃のアナザーストーリー。当時のライブ映像や関係者インタビュー、さらにマトロック自身の貴重なライブパフォーマンスも収録。ショービジネスにおける虚と実、表現と商業主義のせめぎ合いを描く、必見ドキュメンタリー。
本作の監督を務めた、アンドレ・レリスさんにお話を伺いました!
──本作とても興味深く拝見いたしました。素敵なTシャツですね!
ありがとう!これは当時モノで自宅には、他のデザインもたくさんあるんだよ。10代の頃、日本に来たことがあるんだけど、その時もたくさん古着のTシャツを買った記憶があるよ。
──グレン・マトロックさんが著した書籍『I Was a Teenage Sex Pistol』をベースにしていますが、監督はどの部分を掘り下げたい、どんな映画にしたいと思いましたか?
本を読んでグレンさんはピストルズにおいてソングライティングとかサウンドの本当に支柱的な人だったんだなと感じました。かといって、映画化にあたり情熱的にグレンさんを口説くとか、「僕はあなたの声を届ける救世主なんですよ!」と呼びかけるとかそんなことはしていなくて、もっと時間をかけてゆっくりと進めました。一緒に監督をしているニック・ミードさんという才能溢れるクリエイターさんが、元々グレンさんに関わるドキュメンタリーをやりたいと思っていたそうです。そこで、僕が制作会社をやっているので具体的に進めていくことになったのです。
──当時の貴重な映像もふんだんに使われていますが、監督が制作にあたって興奮した映像などはありましたか?
僕はずっとピストルズのファンだったから、映像はほとんど観たことがあって、頭の中にもアーカイブが溜まっちゃってる状態なんです。ただ、そういった他のドキュメンタリーでも使われてきた映像を、「僕は伝えたいストーリーが違うよ」という観点で使うことがチャレンジでした。まだ知られていないことをどう表現するかということに一番気を遣っていて。1つがサウンドです。ピストルズのサウンドってパンクロックの中でもユニークなんですよね。ここに対してどういった答えを出せるんだということを重要視していて。初期の初期のデモが、皆さんが知っている『Never Mind the Bollocks, Here’s the Sex Pistols』(『勝手にしやがれ』)とどう違うのか、そこを伝えたいと思いました。
──セックス・ピストルズはマルコム・マクラレンと、ヴィヴィアン・ウエストウッドによる“プロデュース”的な視点が入っていて、そのことに驚きますが、今の若い方にとったら、そういった存在は当たり前なのかもしれませんよね。本作ではその是非というよりも事実が描かれている所が好きでした。
僕も10代の頃からバンドをやっているので、そういった立場からすると、バンドの“プロデュース”というのは良くも悪くもやっぱ思うところはあって。特にマルコム・マクラレンはバンドに対して誠実だったとは言い難いイメージがあったし。搾取している感じがすごかった。多くのバンドマンからも怒りの対象だったらしいです。でも実際取材していて思うのは、バンド自体はマルコムのことはポジティブに受け取っているんですよね。バンドメンバーがまだ4人だった時は、5人目のメンバーとしてマルコムのことを考えていたそうで、意味のある人だったんだとリスペクトの気持ちを持つようにもなりました。ヴィヴィアン・ウエストウッドも彼女がいたからファッション面でもピストルズのカッコ良さもあったのだと思うし、ポジティブな部分も感じています。
──本作もそうですが、ドキュメンタリーを作る上で一番大切にしていることはどんなことでしょうか?
ドキュメンタリーというものは監督自身に情熱が無いと作り続けられないものだと思います。ドキュメンタリーには筋書きが無いので、ドラマと違って制作するタイムライン、スケジュール、ポスプロのやり方も変わって来ます。撮影するまでどんな素材が撮れるか本当に分からないので。今回の作品でもビリー・アイドルとか、ウェイン・クレイマーが出てくれていますが、制作が始まった時には全く決まっていませんでした。分からないことってたくさんあるんですよ。その時はありものの素材で進めるしか無いし。そんな時にこの作品が作りたいんだという情熱を絶対忘れないこと。それが最も大切だと思います。
──今日は素敵なお話をありがとうございました!
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