【ワンルームで二人暮らし+愛犬】85平米→都心6畳1間の築約50年マンションへ! YouTuber大木奈ハル子さんの小さくても“好き”を諦めない暮らし方
都心にある築約50年・中古マンション、25平米の1K。わずか6畳ほどの居室で暮らしているのは、フリーライターやYouTuberとして活動する大木奈ハル子さん夫妻と、愛犬のこうちゃんだ。驚くのは、手狭ゆえ限界までモノを減らした無機質な部屋ではなく、カラフルな缶や雑貨、アート、SF映画のグッズなど「好きなもの」がぎっしり詰まった空間であることだ。小さな家で、好きなものも、暮らしやすさも諦めない。その工夫を聞いた。
85平米→30平米→25平米へ。「必要に迫られて」始まったダウンサイジング
大木奈ハル子さん夫妻と愛犬1匹が暮らすのは、都心にある築約50年のマンション。専有面積は約25平米、間取りは1K。メインとなる居室はわずか6畳だ。玄関ドアを開けた瞬間、にぎやかな色彩が目に飛び込み、一気に大木奈さんの世界観へと引き込まれる。
「小さな家が好きで、ずっと計画的にダウンサイジングしてきた」と思いきや、話を聞くと少し違う。もともと夫は85平米のマンションに住んでいた。結婚後、夫妻は約50平米の住まいへ。そこでは2DKをワンルーム化し、「広さよりも、仕切りがなくて抜けている感じが好きなのかもしれない」と気付いたという。
だからこそ、夫の転勤で東京へ移る際、「ペット可で家賃10万円以内」という条件で約30平米の部屋が見つかったときも、抵抗はなかった。積極的に小さくしたわけではなく「必要に迫られて」のスタートだったが、「仕切りさえなければ、さらに狭くても心地よく暮らせる」という確信があったからだ。
現在の25平米の住まいを選んだ事情も同様。前に所有していたマンションの建て替えや夫の闘病が重なり、信頼できる病院の近くを最優先に探した結果、「条件に合い、手持ちのお金で買えたのがここだけだった」という。
かつては「50平米くらいがジャストサイズだと思っていた」という大木奈さん。にもかかわらず、その半分ほどの広さまで小さくなった現在の住まい。必要に迫られて試してみるたびに、「この広さでも意外と暮らせる」という経験を重ねてきたのだ。
テレビ台は使わずテレビスタンドにすることで足元がすっきりして広く見える。6畳でも広く感じさせる工夫が満載だ(写真撮影/池田 礼)
視界の「抜け」が狭さを救う。設備より、余白を優先
実際に訪れてみると、「6畳に二人暮らし」と聞いて想像するほどの窮屈さを感じない。そのからくりのひとつが、キッチンまわりにある。もともとは現在より横長のキッチンが設置されていたというが、それを撤去してイケアで購入した横幅約110cm、奥行き約55cmのミニキッチンに自力で交換。生まれたスペースは、単なる通路ではなくリビングの前室のように使っている。お気に入りの絵や雑貨も飾られ、6畳の居室とは別に小さな居場所が続いているように感じられる。
購入時についていたキッチンを撤去して縮小させることで、冷蔵庫より奥のスペースにゆとりが生まれ快適になった(写真撮影/池田 礼)
キッチンの縮小によって、キッチンと6畳間の間にバッファゾーンができ、部屋がひとつ増えたような感覚に(写真撮影/池田 礼)
バッファゾーンの頭上に棚を設け、お気に入りの缶や思い出深いイラストなどを飾っている(写真撮影/池田 礼)
もうひとつ、空間の広がりに大きく貢献しているのが押し入れだ。押し入れを収納としてぎっしり使うのではなく、上段にマットを敷いてデイベッドに。もともとはソファ代わりのつもりだったが、現在は夫がここで眠るようになり、奥行き約90cmでは狭かったため、手前に簡易な台を足して奥行きを広げた。収納を減らしてでも、「人がいられる空間」にする。これが、大木奈さん宅に一貫する考え方だ。
「6畳に二人と一匹は、正直きついと思います。多分、キッチン側の余白とデイベッドがあるから、視界が抜けていて耐えられるのかなと」
押し入れのふすまを外しデイベッドとして開放することで、部屋に奥行きが出て広く見える(写真撮影/池田 礼)
マリメッコの壁紙を張り、ランプを下げることでより居心地よく。夫は夜もデイベッドで休み、大木奈さんは天袋にある三つ折りのマットレスを敷いて寝ている(写真撮影/池田 礼)
洗面台はなく、歯磨き・洗顔はキッチンで。バス・トイレも一体型。それでも大木奈さんは、さほど不便を感じていないという。「狭い家に住むコツは、設備より空間優先」。バス・トイレ別、独立洗面台といった一般的な「好条件」をすべて盛り込めば、その分、居住スペースは削られる。面積が限られているからこそ、本当に必要なものを見極めるという考え方だ。
「狭い家には低い家具」の常識を疑い、身長より上の空間を徹底的に使う
25平米という限られた床面積で収納量を確保するため、大木奈さんが徹底しているのが「高さ」の活用だ。壁を見ると、頭上のあちらこちらに棚が設けられている。
「身長より高い位置に棚をつけて、そこに好きなものを飾るというやり方が、私、発明だと思っているんです」
大木奈さんは「狭い家は圧迫感をなくすために低い家具を」というセオリーについても、この家ほど小さくなればむしろ逆だという。
「飾るところがないからと諦めなくても、身長より高いところなら、どれだけ棚をつけても動線の邪魔をしない。どんなに狭い家でも飾り放題になります」
動線のじゃまにならない高い場所に棚を設けて、好きなものを飾り放題に。これまでに出合った愛おしいものたちに見守られて暮らす(写真撮影/池田 礼)
(写真撮影/池田 礼)
小さな玄関でも立体収納を駆使。ドアにマグネットフックを取り付け、犬の散歩や外出時に必要な道具類を整理。帽子は「3つまで」と決めている(写真撮影/池田 礼)
壁一面に置かれたメタルラックも、梁(はり)の下ぎりぎりまで高さを伸ばして使用。市販のラックに延長ポールや棚板を足し、収納量を最大化している。「床面積がないなら壁面を使う」という考え方は珍しくない。けれど大木奈さん宅がおもしろいのは、ミニマリストに一般的な「白い箱に隠す」手法ではなく、むしろ「見せたいもの」を上へ上へと展開しているところにある。
家にいるときは、このダイニングテーブルで多くの時間を過ごす。パソコンを広げれば仕事場にも(写真撮影/池田 礼)
かわいい缶には服もドッグフードも。ミニマリストだけど「好き」は諦めない
部屋を見回すと、まず目に飛び込んでくるのがサイズもカラーも多彩な缶だ。大木奈さんは幼いころから缶が大好きだった。祖母の家にあった大きな砂糖缶を見て、「おやつより、缶がかっこいい」と思ったのが原点だという。業務用の大きなマーガリン缶には衣類。紅茶の缶にはドッグフード。小さめの缶にはアクセサリーや薬、カード、通帳などが収まる。つまり、飾っているように見える缶のほとんどが、収納用品でもある。好きなものを「飾り」と「収納」に分けず、好きだからこそ道具として実用するのが大木奈さん流だ。
タイヤ水槽は、以前ガソリンスタンドに頼んで取り寄せたもの。洗濯物やパジャマを入れている(写真撮影/池田 礼)
大好きなマーガリンの空き缶は、メルカリでまとめ買いをしたことで一気に数が増えた。衣服の収納としても利用する発想の柔軟さが、趣味と実益の両立をかなえる(写真撮影/池田 礼)
それでも、25平米には当然限界がある。
「かわいいものを見つけると買ってしまうので、順位付けして減らすようにしています。缶も常に増えているけど、同時に常に減っている、みたいな(笑)」
ワンイン・ワンアウトを心がけ、モノが増えて空間を圧迫し始めると「選抜大会」が始まる。大木奈さん自身を表現するなら「買いたがりの、捨てたがり」なのだとか。モノが好きだからこそ、全部は持てない。選び続けることで、「今、特に好きなもの」だけが残る循環を意識している。
服や食器はかなりシビアに。「逃がす空間」も死守する
特に物量を抑えているのが衣類だ。夫妻ともボトムスはパジャマを除き2~3本程度で、今着るものはマーガリン缶へ。シーズンオフの衣類はキャリーケースを収納として活用する。夫が退職を機にスーツを処分したことも、衣類を減らせた大きな要因だったという。一方、大木奈さんはTシャツなど「好きな服」まで極端に減らしているわけではない。食器はさらに明快で、「完全にワンイン・ワンアウト」。陶芸が趣味で自分でも器をつくるため、新しいものができれば古いものと入れ替える。数カ月に一度焼き上がるたび、4~5枚ほど入れ替わることもあるという。
憧れのインディアンキッチンラックはデンマークのインテリアブランド「HAY(ヘイ)」で購入。壁の強度が足りず壁付けがかなわなかったため、メタルシェルフに載せている。作家ものや自作のカラフルな食器が並ぶ(写真撮影/池田 礼)
ダウンサイジングを考えている人へのアドバイスを尋ねると、大木奈さんは「服と食器、それにフライパンなどのキッチングッズの見直し」を挙げた。これらを減らすと「一気にかさが減る」と実感している。
もうひとつ興味深いのが、壁面のラックに「あえて何も置かない棚」を残していることだ。引越した当初はそこにもぎっしりモノを入れていたが、生活するうちに、ちょっとしたモノを一時置きできる「逃がす場所」が必要だと分かった。
「他に逃がすところがないので、棚をちょっと空けておくのが、生活しやすくするコツ」
限られた収納を100%埋めるのではなく、余白を確保する。狭い家ほど、この数%の余白が大切なのかもしれない。
引越し当初はぎゅうぎゅう詰めにしていた棚に、今では余白をつくり、モノの一時退避スペースとしている。「ちょっとした逃げ場所を空けておくのが、暮らしやすさのコツみたいなところがあります」(写真撮影/池田 礼)
「小さなキッチンでは一品料理」と腹をくくる
キッチンも、一般的な「便利」を追い求めない、という割り切りが潔い。
「この極小キッチンで料理するコツは、二品、三品つくらないと決めることです」
おかずは具だくさんの汁物などの一品で済ませ、揚げ物はスーパーの総菜などに頼る。自宅では茹でる、炒めるといったシンプルな調理が中心だという。
イケアで購入した極小キッチンに、以前から愛用しているレトロな2口(くち)コンロを置いて使用(写真撮影/池田 礼)
キッチン台の下には、昔、仕出し屋さんやお米屋さんからもらった木箱(トレイ)がシンデレラフィット。引き出しのような収納として活用している(写真撮影/池田 礼)
冷蔵庫の扉ポケットにカトラリーを立てるなど、収納としても利用することでキッチンの使い勝手を向上。限られたスペースには柔軟な発想が必要だ(写真撮影/池田 礼)
すべてを家の中で完結させないのは、仕事も同様だ。夫妻は四六時中、狭い部屋に二人でいるのではなく、それぞれ別々に外出することも多い。大木奈さんは近所の飲食店などで仕事をするほか、仕事に行き詰まったときには、ビジネスホテルに籠もって集中することもあるという。
25平米で二人暮らしというと、「常に相手が目の前にいる生活」を想像する。しかし、街の飲食店や宿泊施設も含めて暮らしの延長と考えれば、家の面積だけで生活すべてをまかなう必要はない。都心という立地そのものが、小さな家を成立させる「外部空間」になっているともいえそうだ。
ひとつ買うにも必ず相談。逆にモノを増やす罪悪感を緩めてもらうことも
それでも、共用する空間が6畳となれば、好き勝手にモノを増やすわけにはいかない。大木奈さんは、何かひとつ買うときにも夫に相談するという。
「ここまで減ると、増やすことにちょっと罪悪感があったりして、許可が欲しいんですよ。『あれ欲しいけど、どう思う?』とか。『買っちゃえよ』って言ってもらいたくて(笑)」
「1ルームで2人暮らし|ミニマリノベ」をテーマにInstagramやYouTubeで発信し、多くの共感を得ている大木奈さん。NHKの番組に出演したことも(写真撮影/池田 礼)
基本的には背中を押してくれる夫も、過去に失敗を繰り返したITガジェットなどにはストップをかけることがある。狭い家では、ひとつモノが増えただけでも空間への影響が大きく、収納の工夫も必要になる。だからこそ「これは家に入れていいか」を二人で考える。ワンイン・ワンアウトは単なる片付け術ではなく、二人で小さな空間を共用するためのコミュニケーションにもなっているようだ。
「室内に並ぶ雑貨やインテリアは、9割ほどが妻の趣味ですね」と笑う夫は、そのことを楽しんでいるように見える。タイルカーペットをカラフルなものに、と背中を押したのも夫だそう(写真撮影/池田 礼)
玄関の一角につくられた棚は、「太陽の塔」が好きな夫専用のディスプレーコーナー(写真撮影/池田 礼)
介助犬は、25平米に向いた性格を考慮してマッチング
夫妻と一緒に暮らしているのが、ゴールデンドゥードルの「こうちゃん」。日本聴導犬協会を通じて、夫の介助犬としてやってきた犬だ。協会が実際に住まいを確認したうえで、こうちゃんならこの環境で暮らせると判断し、マッチングしたそうだ。
人懐っこくて穏やかな性格のこうちゃんは、誰かのそばに寄り添っていることで安心できる(写真撮影/池田 礼)
夫に室内履きを渡そうとするこうちゃん。役に立つ仕事をして褒められるのが大好き(写真撮影/池田 礼)
大木奈さんは「狭い家で犬を飼うのはどうなんだろう」と考えてきたが、こうちゃんと暮らすことで「犬の性格による」と感じている。その点、こうちゃんは、走り回ることより人のそばにいることを好むタイプ。なでてもらったり、くっついて過ごしたりするのが好きで、留守番中は寝ていることが多いという。
室内には足腰への負担を減らすためタイルカーペットを敷いた。押し入れデイベッドの下段にこうちゃん専用の居場所も用意されていて、「一人になりたいとき」には自分からそこへ入るという。大切なのは、「犬がいるなら何平米必要」と一律に考えることではなく、その犬の性格や運動量、留守番時間などを見ながら環境をつくることなのだろう。
デイベッドの下がこうちゃんのプライベート空間。ブラッシングをしようとすると逃げ込んでしまうことも(写真撮影/池田 礼)
25平米、6畳1Kに夫婦と犬。数字だけを見れば、かなりストイックな暮らしを想像する。ところが大木奈さん宅に足を踏み入れると、受ける印象はむしろ逆だ。鮮やかな色、好きなキャラクター、大量の缶、自作の器、思い出の品。夫妻の「好き」が、どこを見ても目に入ってくる。
その一方で、好きなものを置くためには、服や食器を減らし、ワンイン・ワンアウトを厳守し、収納に余白を残す。設備を減らして空間を確保し、家でできないことは街に頼る。楽しく見える暮らしの裏側には、かなりシビアな取捨選択がある。けれど、それは「我慢して小さく暮らす」こととは少し違う。「身長より高いところに飾れば、暮らしは潤う気がします」。大木奈さんのそんな言葉に、この家のあり方がよく表れている。
必要なものをすべて家に押し込むのではなく、自分たちにとって大切なものを選び、それが楽しめる空間を守る。大木奈さん夫妻の暮らしは、ダウンサイジングとは単に「モノや面積を減らすこと」ではなく、限られた空間を何に使いたいのか、答えを求め続けることなのだと教えてくれる。
キッチンには、大木奈さんがつくったマグカップ型のランプシェードが。6畳1Kがクリエイティブな空気に満たされている(写真撮影/池田 礼)
夫妻を描いたポスターが玄関で出迎える(写真撮影/池田 礼)
2026年9月16日に新潮社から『小さく暮らす: 25m2のゆたかな生活』を上梓(写真撮影/池田 礼)
DATA
マンション築年数約50年延床面積約25平米世帯構成夫婦+犬
プロフィール
大木奈ハル子さん(おおきな・はるこ)
フリーライター、ブロガー、YouTuber。『東洋経済オンライン』(東洋経済新報社)などで暮らしやグルメの記事を執筆。東京の築約50年・約25平米、6畳1Kで夫と介助犬と暮らし、YouTubeやInstagramで“小さく豊かに暮らす”日常や工夫を発信。著書に『台所図鑑』(共著 大和書房)、『小さく暮らす: 25m2のゆたかな生活』(新潮社 刊)
●取材協力
大木奈ハル子さん
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『小さく暮らす: 25m2のゆたかな生活』(新潮社 刊)
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