工場を止めずに耐震補強、工期も約45%短縮!炭素繊維を生かした「CABKOMA工法」とは

地震への備えとして欠かせない建物の耐震化。しかし、工場では「生産を止められない」「設備が多く、大掛かりな工事が難しい」といった事情から、対策を進めにくいケースも少なくない。
そんな課題に応えるのが、小松マテーレの「CABKOMA®工法」だ。軽くてしなやかな炭素繊維素材を使い、工場を稼働させたまま耐震補強できるのが特徴である。
9月11日に開かれた発表会では、技術の仕組みや自社工場での施工事例、建築技術性能証明の取得、今後の展望が紹介された。
“糸”のように扱える炭素繊維で建物を補強

CABKOMA工法は、炭素繊維の撚り線を建物の屋根面にブレース(筋交い)として配置する耐震補強工法だ。
使用する「CABKOMAストランドロッド」は、芯に炭素繊維、外層にガラス繊維を使った組紐に特殊な熱可塑性樹脂を複合し、7本を撚り合わせてワイヤー状にしたもの。北陸の繊維産地に根付く組紐技術が生かされている。

大きな特徴は、軽さとしなやかさだ。比重は鋼材の5分の1で、160mでも約14kg。直径9mmのCABKOMAストランドロッドは、直径16mmの異形鉄筋と同等の破断強さを持つという。
さらに錆びにくく、熱や自重による伸びも小さい。柔軟に曲げられるため、配管や梁、吊り材が入り組んだ工場内でも隙間を通して施工でき、重い鋼材では取り付けが難しい場所にも対応しやすい。
平日は24時間稼働。工事は週末に実施

CABKOMA工法の開発につながったのは、小松マテーレ自身が抱えていた工場の耐震化という課題だった。
同社の工場内には多くの生産設備や配管があり、重くて曲げられない鋼製ブレースを搬入・施工するのは容易ではない。そこでCABKOMAの軽さと柔軟性を生かし、「工場の操業を止めない耐震補強工法」の開発を進めた。

自社工場での施工では、平日は24時間稼働を継続。土曜日の午前中にCABKOMAを取り付ける場所の真下だけに足場を設置し、土曜午後から日曜夕方まで作業を行った。
施工時には、釣り竿のような特殊な竿を使ってガイドワイヤーを通し、設備や吊り物の隙間を縫うようにCABKOMAを取り付けたという。日曜日の夕方には足場を撤去し、この作業を週末ごとに繰り返すことで、約6カ月で工事を完了した。
また、別の自社施工事例では従来工法と比較し、足場の組み立てや養生、ブレースの取り付けといった工程を効率化することで、工事期間を約45%短縮できたことも確認されている。
補強から約2カ月後に能登半島地震

CABKOMAで補強した自社工場は、施工完了から約2カ月後の2024年1月1日、能登半島地震を経験することとなった。
工場のある石川県能美市では震度5強を観測したが、同社によると、CABKOMAで補強した建物の無事が確認されたという。
一方、新しい素材を建築物に広く普及させるためには、施工実績に加えて、技術的な信頼性を示すことも重要になる。

そこで小松マテーレが目指したのが、第三者による「建築技術性能証明」の取得だった。
今回、一般財団法人日本建築総合試験所(GBRC)から「CABKOMA®工法-炭素繊維撚り線ブレースによる水平構面補強工法-」として性能証明を取得。第三者による技術的な審査を経たことで、建築主や設計者、施工者が採用を検討する際の技術的な根拠が整った。
隈研吾氏「建築と繊維のコラボの一番いい見本」

発表会では、CABKOMAの開発に長年携わってきた構造家・日本女子大学教授の江尻憲泰氏も登壇した。
江尻氏は、CABKOMAが軽量で強度を持つことに加え、細い部材によってすっきりとしたデザインにできる点や、運搬・施工なども含めた環境負荷低減の可能性について紹介した。
また、今回の性能証明は鉄骨造の工場屋根面を対象としているが、CABKOMAストランドロッド自体は木造にも使われており、今後はさまざまな構造への展開も期待されている。
さらに、建築家の隈研吾氏もビデオメッセージを寄せた。

隈氏は、繊維業界が持つ素材の「軽さ」や「柔軟さ」は、これからの建築に求められる要素だと指摘。CABKOMAについて「建築と繊維のコラボの一番いい見本」と語り、未来や世界へつなげていきたいとの期待を示した。
2030年度には100万㎡への普及を目指す

CABKOMAストランドロッドは、2026年上期までに100件弱の案件で採用され、その半数以上が耐震補強用途だという。鉄骨造だけでなく、木造や一部のRC造でも補強材として使われている。
小松マテーレは今回の性能証明取得を機に、老朽化した工場や物流倉庫、公共施設などへの展開を進める方針。2030年度には100万㎡、5,000㎡規模の工場に換算して200棟相当への普及を目指す。
中山大輔社長は質疑応答で、ロッドの販売やCABKOMA工法に関連するパッケージを含め、2030年度には50億円規模の事業に成長させたいとの構想も明らかにした。
工場の耐震化を進める新たな選択肢に

生産を続けながら耐震化を進められるCABKOMA工法は、設備の多い工場にとって現実的な選択肢の一つになりそうだ。
繊維の軽さや柔軟性を建築に持ち込み、施工のしやすさと必要な耐震性能を両立させた点も特徴的。建築技術性能証明の取得によって採用のハードルが下がれば、既存建物を壊さず生かす耐震補強の可能性もさらに広がる。
繊維産地で培われた技術が、地震に強い社会づくりを支える存在となるのか、今後の展開に注目したい。
小松テーレ公式サイト:https://www.komatsumatere.co.jp/
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