【ライブレポ】TOOBOEが描くのは、不器用で歪んだ「愛」──「ONE MAN LIVE 2026 "LOVE"」

【ライブレポ】TOOBOEが描くのは、不器用で歪んだ「愛」──「ONE MAN LIVE 2026 "LOVE"」

「愛」は、必ずしも誰かを幸せにすることではない。ときに「愛」は、孤独を深め、執着を生み、痛みとなって心に残る。それでも人は誰かを求めてしまう。

2026年8月21日、東京・LINE CUBE SHIBUYAでTOOBOEが掲げた「LOVE」は、そんな愛の綺麗ではない部分さえも抱きしめる一夜だった。

2026年4月に行われた全国ツアー「TOOBOE ONE MAN TOUR 2026〜銃爪は視線〜」のファイナル公演で発表された、今回のライブ。メジャー2ndアルバム『EVER GREEN』を携えたツアーを経て、さらに大きなステージへと歩みを進めたTOOBOEが、特別公演として提示したのがこの「ONE MAN LIVE 2026 “LOVE”」だった。

ただ、このタイトルの「LOVE」は、決して甘く、まっすぐな愛を意味するものではない。TOOBOEはこれまで、孤独や寂しさ、弱さ、執着、渇望といった、人間の心に潜む負の感情を隠すことなく歌ってきた。愛についても同様だ。彼が描く愛は、ときに不器用で、ときに歪み、誰かを求めるほどに自分自身の弱さを露呈させる。

そして、この公演のビジュアルには「歪み」を象徴するように、右手ではなく、あえて左手で書かれた「LOVE」が描かれている。完璧ではない、不器用で、どこかいびつな愛。そのイメージは、この一夜を貫く大きなテーマとなった。

そんな「LOVE」の幕を開けたのは「GUN POWDER」だ。ホーンセクション、ストリングス、コーラスを加えた大編成によるド派手なサウンドが、いきなりLINE CUBE SHIBUYAの空間を大きく揺らす。TOOBOEの音楽はボカロPとして培ってきた鋭利なサウンドメイクと、J-POPや歌謡曲にも通じるキャッチーなメロディを共存させている。その魅力が、生身の演奏者たちによってさらに立体的なものへと変換されていく。

ライブはさらに「チリソース」、そして「心臓」へ。楽曲そのものが持つ切迫感と、ホールならではのスケール感が重なり、この日のライブが新しい段階へ踏み込む公演であることを印象づけた。

【ライブレポ】TOOBOEが描くのは、不器用で歪んだ「愛」──「ONE MAN LIVE 2026 "LOVE"」

ここで一度MCを挟み、ライブは「浪漫」「博愛」「追憶」へ。序盤の勢いから一転、ストリングスとコーラスを中心とした繊細な音像へと移り変わっていく。「愛」というテーマのもと、TOOBOEは決して綺麗なだけではない、孤独や不安、執着といったさまざまな感情を掬い上げていった。そうした相反する感情をも抱きしめる複雑さこそ、TOOBOEの楽曲が持つ強さなのだろう。

さらに新曲の「ジャガーノート」では、勝負の世界の緊張感や、困難を乗り越える強い意志を、エッジの効いたサウンドと中毒性の高いメロディで表現。スリリングなロックサウンドを展開すると、「サヨナラ天国また来て地獄」では、TOOBOE自身による弾き語りからスタート。大編成の豪華さを見せるだけではなく、たった一人の歌とギターに立ち返る瞬間を置くことで、TOOBOEというアーティストの根幹にある「生身の声」を浮かび上がらせる。

そして「痛いの痛いの飛んでいけ」。痛みを抱えたまま、それでも誰かに届いてほしいと願うような楽曲を、ホーンとコーラスを加えた編成で鳴らす。ここでは、TOOBOEの音楽が持つ“痛み”そのものが、ライブという空間の中で別のエネルギーへと変換されていった。

後半ブロックでは、10月から放送開始予定のTVアニメ『ホタルの嫁入り』のエンディングテーマとして書き下ろした新曲「夢心地」を披露。演奏前のMCでは、少女である主人公とは対照的に、「逆にその男の子側の曲を、男性の目線として歌うからには表現できたらいいんじゃないかな」と、作中の男性側の視点から楽曲を制作したことを明かした。

また、タイトルの「夢心地」については、『ホタルの嫁入り』の作中で用心棒を務める人物が「いつ殺すか、殺されるかの暮らし」を送るなかで、唯一見つけた「主人公の隣」という居心地のいい場所に着目したという。そこを「現実から離れられる場所」と捉え、「そういったところを取り入れて曲を作れればいいなと思って作った」と、楽曲に込めた思いを語った。

そして披露されたバラード「夢心地」は、TOOBOEが描く新たな「愛」の形として、オーディエンスの心を優しく包み込んだ。演奏後にはステージをスモークが覆い、その幻想的な光景が、まさにタイトルの「夢心地」を思わせる余韻を会場に残した。

【ライブレポ】TOOBOEが描くのは、不器用で歪んだ「愛」──「ONE MAN LIVE 2026 "LOVE"」

ライブはここから、再び速度を上げていく。歪んだ愛情や、怪物めいた相手への依存と執着を描いた「あなたはかいぶつ」では、重厚かつ深みのあるサウンドを響かせ、ステージの熱量を一段と高めていく。そして「ダーウィン」では、バンドメンバーのソロからアウトロに向かって演奏が加速。その勢いを保ったまま「往生際の意味を知れ!」「世界の終わり」へと雪崩れ込む。今回のライブのために構築された壮大なサウンドスケープが、いよいよその存在感を増していった。

ライブはさらにここからクライマックスへと向かう。TOOBOEのライブにおいて、この終盤のブロックは「ロックスター」としての姿が際立つ時間だ。ボカロP・johnとしてネットシーンから活動を始め、自ら歌う表現者へと進化してきたTOOBOE。その歩みは、音源を忠実に再現することだけを目指したものではない。

叫び、シャウトし、声を荒らげ、オーディエンスに熱をぶつける。そうした生々しさこそが、TOOBOEのライブを特別なものにしているのだと思う。そして「錠剤」では、その魅力がひとつのピークへと達する。ネット発のクリエイターとして培った尖った音楽性と、メジャーシーンで広げてきた大衆性。そのふたつが、ステージ上でひとつに結びついていき、会場一体となったシンガロングがホールに轟いていたのである。

本編ラストを飾ったのは、普遍的な愛情を描いた「Nýx」。こじれた愛や歪んだ感情を描くことの多いTOOBOEの楽曲群のなかでも、ひときわ真っ直ぐに“愛”を歌ったこの楽曲は、この日の「LOVE」というテーマを象徴するような一曲となった。長く引き延ばされたアウトロでは、楽曲の余韻そのものをさらに引き延ばすかのように音が響き続け、エンドロールが流れる。やがて会場全体を満たす静かな時間へと変わっていった。

アンコール1曲目として披露されたのは、King & Princeへの提供曲のセルフカバー「Doll」。ここではバンドを入れず、ストリングスとキーボードを中心とした編成で楽曲を届けるという、極めてシンプルな構成が用意されていた。大編成による華やかなステージを見せたあとだからこそ、音数を削ぎ落とした歌が強く響いていた。

再びコーラス隊をステージに迎え入れると、「紫」を披露。そしてラストチューン「毒」へと向かう。ここでは、ホーン、ストリングス、コーラスをすべて含むこの日の最大編成が揃い、壮大なサウンドを響かせた。まさにこの日のライブは、最後にもう一度、TOOBOEが持つすべての武器をステージ上に集結させて幕を閉じたのだ。歪んだ愛や依存といった感情さえも肯定するような「幸福感」が会場に溢れていた。

鋭いビート。耳に残るメロディ。不器用な愛。孤独。執着。痛み。
そして、それらを抱えたまま歌う声。

この日、TOOBOEが見せたのは、「LOVE」という言葉から想像するものとは、おそらく少し違う、もっと不格好で、もっと人間臭く、時に毒を含んだ愛だった。

左手で描かれた、不器用な「LOVE」。痛みも、寂しさも、欲望も、矛盾も、全部ひっくるめて「愛」と呼ぶ。

そんなTOOBOEならではの「LOVE」が、LINE CUBE SHIBUYAというホールいっぱいに響き渡った夜だった。

【ライブレポ】TOOBOEが描くのは、不器用で歪んだ「愛」──「ONE MAN LIVE 2026 "LOVE"」

取材&文 : ニシダケン
撮影 : YutoFukada

セットリスト

TOOBOE「ONE MAN LIVE 2026 “LOVE”」
2026年8月21日(金)
@LINE CUBE SHIBUYA

1. GUN POWDER
2. チリソース
3. 心臓
4. 浪漫
5. 博愛
6. 追憶
7. ジャガーノート
8. サヨナラ天国また来て地獄
9. 痛いの痛いの飛んでいけ
10. 夢心地
11. あなたはかいぶつ
12. ダーウィン
13. 往生際の意味を知れ!
14. 世界の終わり
15. シン・抜殻
16. BAP
17. 錠剤
18. Nýx
Encore
19. Doll
20. 紫
21. 毒

ツアー情報

TOOBOE ONE MAN TOUR 2026~2027『惹かれ薫る祝福』

■2026年11月7日(土)
東京・Shibuya LOVEZ 
OPEN 17:00 / START 18:00

■2026年11月12日(木)
京都・KYOTO MUSE 
OPEN 18:00 / START 18:30

■2026年11月14日(土)
熊本・B.9 V2 
OPEN 17:00 / START 17:30

■2026年11月15日(日)
鹿児島・SRホール 
OPEN 17:00 / START 17:30

■2026年11月26日(木)
宮城・仙台darwin 
OPEN 18:00 / START 18:30

■2026年11月28日(土)
北海道・CASINO DRIVE 
OPEN 17:00 / START 17:30

■2026年11月29日(日)
北海道・PENNY LANE24 
OPEN 16:45 / START 17:30

■2026年12月11日(金)
兵庫・神戸VARIT. 
OPEN 18:00 / START 18:30

■2026年12月12日(土)
鳥取・米子laughs 
OPEN 17:00 / START 17:30

■2027年1月16日(土)
福岡・DRUM LOGOS 
OPEN 16:45 / START 17:30

■2027年1月17日(日) 
広島・LIVE VANQUISH 
OPEN 17:00 / START 17:30

■2027年1月24日(日)
大阪・BIGCAT 
OPEN 17:00 / START 18:00

■2027年1月31日(日)
愛知・名古屋ダイアモンドホール
OPEN 17:00 / START 18:00

■2027年2月6日(土)
石川・金沢EIGHT HALL 
OPEN 17:00 / START 17:30

■2027年2月7日(日)
長野・CLUB JUNK BOX 
OPEN 17:00 / START 17:30

■2027年2月13日(土)
香川・高松DIME 
OPEN 17:00 / START 17:30

■2027年2月14日(日)
静岡・UMBER 
OPEN 17:00 / START 17:30

■2027年2月21日(日)
神奈川・KT Zepp Yokohama 
OPEN 17:00 / START 18:00

ツアー詳細:[https://www.sonymusic.co.jp/artist/tooboe/live/55437

アーティスト情報

・オフィシャル・ウェブサイト
https://www.sonymusic.co.jp/artist/tooboe/
・X
https://twitter.com/casablancalanca?s=20&t=AuMjmQ4Tq4j0bIfSzh5hNA

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