『スプラトゥーン レイダース』レビュー:ハクスラによる中毒性と大量の敵を倒す高揚感! ガジェットによる立ち回りが圧倒的に楽しい一作
筆者はホラーゲームに特化してインディゲームを開発しており、ゲームライターとして活動するときも、ホラー好きであることを公言してきた。そんな筆者なのだが、一番好きなゲームは何かというと、実はホラーゲームではなく「スプラトゥーン」シリーズだ。
もっとも時間をかけてプレイしているし、もっとも長期間遊び続けている。グッズだって、一番揃えているのは「スプラトゥーン」シリーズだ。そんな人間が『スプラトゥーン レイダース』(Nintendo Switch 2)の発売を見逃せるわけがない。当然のように自腹で、amiiboと一緒に購入した!
そこで本記事では、実際にプレイして感じた本作の魅力をたっぷりお届けしたい。
ソロプレイを前提としたスピンオフ作品! 『スプラトゥーン レイダース』
『スプラトゥーン レイダース』は、任天堂の人気TPS「スプラトゥーン」シリーズの最新作。『スプラトゥーン3』に続くナンバリング作ではなく、スピンオフ作品となっている。
「スプラトゥーン」シリーズはソロプレイも可能だが、基本的にはマルチプレイによる協力や対戦を大きな柱としている。一方、スピンオフである本作は協力プレイにも対応しているものの、ソロプレイがメイン。ナンバリング作とは位置づけが逆だ。
ただ、基本的なゲームシステムはこれまでのシリーズを踏襲している。「スプラトゥーン」の基本といえば、インクでマップを塗ること。自分の色で塗られた場所には潜伏でき、高速で移動したり、敵から発見されにくくなったり、インクを補充したりといったメリットがある。
ただし、潜伏したままではマップを塗ることができない。塗るためには潜伏状態を解除し、姿をさらさなければならないのだ。そして「塗る」という行為は、敵への攻撃も兼ねている。
このため、敵を攻撃してインクが少なくなってきたら、潜伏しながら安全な場所へ移動し、インクを補充したら再び姿をさらして攻撃する……というのが基本的な立ち回りとなる。
ちなみにインクを扱うということで、主人公の「メカニック」はイカを擬人化したような見た目となっている。
▲画像は『スプラトゥーン3』 ナワバリバトル
対戦をメインとしたナンバリング作では、敵を倒すこと以上に「塗る」という行為が重要な意味を持っていた。その象徴といえるのが「ナワバリバトル」。4対4のチームでマップを塗り合い、最終的に自分のチームの色で塗った面積が多い方が勝利する。
もちろん、敵チームのプレイヤーを倒せば有利に試合を運べる。だが、倒すことそのものが目的ではない。
▲画像は『スプラトゥーン3』 ナワバリバトル
むしろ、「塗る」ために「倒す」という設計になっている。一方、これまでのシリーズでもソロプレイ向けのモードでは、「倒す」ために「塗る」という側面が強かった。
『スプラトゥーン3』では、ソロ向けコンテンツとして「ヒーローモード」と「サイド・オーダー」が用意されている。
▲画像は『スプラトゥーン3』 ヒーローモード
「ヒーローモード」は、敵を倒しつつステージごとのクリア目標達成を目指すモードだ。クリア条件によっては、必ずしも敵を倒すこと自体が目的ではない。ただ、基本的には敵との戦闘を軸にステージが設計されている。ステージクリア型のアクションシューティングといえるだろう。
▲画像は『スプラトゥーン3』 サイド・オーダー
「サイド・オーダー」は、ローグライト要素を前面に押し出したゲームモードだ。階層ごとに提示されるパワーアップを選択し、キャラクターを育成しながらタワーを登っていく。
では、ソロプレイを前提とした本作『スプラトゥーン レイダース』は、どのような作品なのか?
実際に本作の要素を見ていくと、「ヒーローモード」と「サイド・オーダー」、さらにナンバリング作品の協力型モード「サーモンラン」の要素をミックスしたような作品に見える。
本作では、ステージごとに隠された「オタカラ」の獲得を目指す。「オタカラ」を手に入れるためには、シャケが持つ「イクラ」が必要。そのため、大量に出現するシャケと戦うことになる。
「オタカラ」は、物語上では本作の舞台「ウズシオ諸島」に残された遺物。ただゲーム的には、プレイヤーを強化するためのアイテムでもある。さらに、新たな武器や育成用アイテムなども入手でき、これらを使って主人公を強化していく。
「敵を倒しつつステージごとの目標達成を目指す」という大枠は「ヒーローモード」に近い。一方、武器や育成用アイテムを集めながら主人公を強化していく部分には、「サイド・オーダー」と通じるものがある。ただし、本作の育成サイクルは「サイド・オーダー」とは異なる。
そして大量に出現するシャケを相手にするという点では、「サーモンラン」を思わせる。
「サーモンラン」は、大量に迫りくるシャケを倒しながら、制限時間内に目標数のイクラを集める協力型モード。本作も協力プレイには対応しているものの、基本はソロプレイを前提としている。
こうして見ると、これまでシリーズに存在した「非対人戦モード」の総決算のようにも見える。だが、実際にプレイしてみると、そこで得られる面白さは単なる延長線上ではない。非常に新鮮なプレイ感。それでいて、圧倒的に面白い!
育成のループにハマる! 圧倒的な中毒性を持つハクスラ要素
先ほど、本作の育成サイクルは「サイド・オーダー」と異なると書いた。その違いを生んでいるのが、本作のハクスラ(ハック・アンド・スラッシュ=接近戦で敵を倒しまくる作品ジャンル)的なゲームデザインだ。
「サイド・オーダー」では、プレイ中に獲得するパワーアップの組み合わせを、その都度判断しながらキャラクターを育成していく。
ゲームオーバーやクリアによって、そのプレイ中の強化は基本的にリセットされる。だからこそ次の挑戦では、再び提示された選択肢から「どのように育成するか」を考えることになる。この毎回異なる判断こそ、「サイド・オーダー」の大きな楽しさだった。
▲画像は『スプラトゥーン3』
一方、本作では入手した装備や育成要素を蓄積しながら、プレイヤーを継続的に強化していく。そして、強くなった主人公を待っているのは、さらに強い敵だ。
強敵を倒せば、より強力なアイテムが手に入る。強力なアイテムを手に入れれば、さっきまで苦戦していた敵が楽に倒せるようになる。
すると、「今ならもっと強い敵と戦えるのでは?」と思って強敵に挑む。倒す。さらに強いアイテムが手に入る。「ここまで強くなったなら、あの敵も倒せるのでは……?」と、また次の強敵に挑む。
この、強化と挑戦を繰り返すインフレループがたまらなく楽しい。やめ時を見失う。まさに「中毒性」という言葉を、そのままゲームシステムにしたかのような楽しさだ。
きめ細やかな難易度調整が生む! 中毒性×高揚感
では、本作の楽しさは、ハクスラ要素による「中毒性」だけなのか? 個人的には、それだけではないと思う。本作ではその中毒性が、きめ細やかな難易度調整によって生まれる「高揚感」とセットになっているからだ。
先に書いた通り、本作は大量に出現するシャケを倒し続けるという要素を持っている。単純に、これは気持ちイイ。画面を埋め尽くすような敵を一気に倒すという時点で、強い爽快感がある。だが同時に、大量の敵に圧倒されるスリルも持ち合わせている。とにかくシャケの数が多い。気を抜けば、じわじわと押し込まれていく。
そんな状況を、どう立ち回って打開するか? そして実際に切り抜けられた瞬間には、敵を一掃する爽快感と、ピンチを乗り越えた達成感が一気に訪れる……! 控えめに言って最高! 至福を感じる瞬間だ。
つまり、「大量の敵を倒す爽快感」と「大量の敵に圧倒されるスリル」は表裏一体なのだ。敵の物量に押される感覚があるからこそ、それを押し返したときの気持ちよさも大きい。となれば、育成によって主人公が強くなりすぎれば、このスリルが失われ、爽快感まで薄れてしまいかねない。
この点で本作は、非常に絶妙なバランス調整がなされていると感じた。育成によって確かに強くなったと実感できる。しかし、それでも大量の敵に圧倒されるスリルは残っている。だからこそ、圧倒的な数のシャケと戦う高揚感を長く味わえるのだ。
もちろん、どれだけ絶妙に調整されていても、育成を続ければプレイヤーは強くなっていく。そこで本作には、複数の難易度設定が用意されている。歯ごたえが足りないと感じたなら、難易度を上げればいい。
設定画面から変更できるゲーム全体の難易度に加え、「辛口」「激辛」といったステージごとの難易度も存在する。これらを組み合わせることで、自分に合ったスリルを維持しながら、高揚感のあるハント(プレイ)を楽しめるというわけだ。
ガジェットが変える! 位置取りを巡る立ち回り
ハクスラ要素による「中毒性」、きめ細やかな難易度調整による「高揚感」。これらと並んで、本作の楽しさを決定づけているのが、新要素「ガジェット」だ。
ガジェットは、クールタイムを挟むことで何度も使用できる装備の一種。「スピード」「パワー」「テクニカル」の3系統に分かれている。
メイン武器とは別に使用する装備という点では、これまでのシリーズにも「サブ」や「スペシャル」が存在した。「サブ」はメイン武器とは異なる性質を持った補助装備。「スペシャル」はゲージを溜めることで使用できる、いわば必殺技的なアクションだ。
▲画像は『スプラトゥーン3』のスペシャル「ウルトラショット」
表面上だけを見れば、ガジェットもこうした「サブ」や「スペシャル」の延長線上にあるように思える。だが実際に使ってみると、ガジェットはこれまでの『スプラトゥーン』とは異なる立ち回りを生み出す要素だとわかる。
たとえば「スピード」系統で初期から使用できる「カチコミシューズ」と「ダッシュボム」。「カチコミシューズ」はジャンプしながら前方へ移動し、着地時にシャケへダメージを与えるガジェット。「ダッシュボム」は、爆風とともに前方へダッシュするガジェットだ。
大量のシャケが密集している場所へ「カチコミシューズ」で飛び込み、着地直後に「ダッシュボム」でダメージを与えながら離脱。そこから安全圏へ移動し、メイン武器で攻撃する。といった具合に、攻撃と位置取りをひと続きの動きとして組み立てられる。
あるいは「テクニカル」系統の「スケットボット」と「ツナガルバルーン」。「スケットボット」は、設置した場所で敵を引きつけながら自動攻撃してくれる、いわゆる固定砲台だ。「ツナガルバルーン」は2つ続けて設置できる風船型の爆弾で、2つの風船の間にもダメージ判定が生じる。
この2つを組み合わせれば、「スケットボット」で敵を引きつけ、その進行方向を挟むように「ツナガルバルーン」を展開。継続的にダメージを与えつつ、自分は安全圏から攻撃するといった立ち回りも可能だ。つまりガジェットは、単純に発動すればいいものではない。
どこで使うのか。どのガジェットと組み合わせるのか。敵との距離をどう取るのか。位置取りそのものを考えることが重要になっている。ここが、既存の「スプラトゥーン」シリーズとは異なる新鮮なポイントだ。
だからこそ、新作らしい驚きがある。そして、圧倒的に楽しい。
次の『スプラトゥーン』にも期待大! レイダースの試みは今後どう生かされる?
本作をプレイして筆者は、次の『スプラトゥーン』が今まで以上に楽しみになってしまった。本作の発売にあわせて公開された任天堂の記事「開発者に訊きました」では、「これからも対戦の遊びづくりは続けていく」と語られている。
つまり、少なくとも『スプラトゥーン』における対戦の遊びづくりが、今後も続いていくことは示されている。
▲画像は『スプラトゥーン3』
ただ、筆者には『スプラトゥーン3』の時点で、対戦の遊びがかなり成熟したようにも感じられている。初代『スプラトゥーン』のリリースから長い年月が経ち、武器ごとの立ち回りや戦術も研究され続けてきた。だからこそ、新作では新しい武器やステージだけでなく、立ち回りそのものに変化をもたらす仕組みが欲しい……と思ってしまう。
そんな中、本作は「ガジェット」によって、『スプラトゥーン』の立ち回りを大きく拡張してくれた。とりわけ変化したのが、位置取りだ。この位置取りは、もちろんソロプレイだけに関係する要素ではない。対戦でも、どこをインクで塗り、どこに潜伏し、どこで敵を迎え撃つかは重要だ。
攻め込む際にも、味方の位置を見ながら、自分はどのルートから仕掛けるのかを考える。
もちろん、レイダースのガジェットがそのまま対戦へ持ち込まれるとは思わない。ただ、もしガジェットのように位置取りそのものへ影響する新要素が加われば、これまでとは異なる戦術や立ち回りが生まれる可能性はある。だからこそ、いつか登場するであろう次の『スプラトゥーン』にも、大きな期待を抱いてしまうのだ。
とはいえ、その前に今は『スプラトゥーン レイダース』をしゃぶりつくしたい。それだけ面白いゲームだからだ。ストーリーをクリアした後には、ハクスラ的な楽しさをさらに味わえるエンドコンテンツも用意されている。「スプラトゥーン」ファンはもちろん、これまでシリーズに触れたことがない人にもオススメしたい。
ぜひ、一度プレイしてみてほしい。
(文/田中一広)
(執筆者: ガジェ通ゲーム班)
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