動物園の裏側を探検! 餌の残さがビールや和菓子になる「夢見ヶ崎プロジェクト」の裏側
江戸時代、うんこは「金肥」と呼ばれ、貴重な資源として売買されていた。そんな「捨てずに循環させる」考え方を、現代の技術でよみがえらせようという取り組みが川崎市で始まった。その名は「夢見ヶ崎プロジェクト」。
三菱化工機株式会社と川崎市が手を取り合い、「川崎市における循環型社会の実現に関する連携協定」を締結した6月15日。その取り組みの第一弾が、夢見ヶ崎動物公園を中心とした地域循環モデルの実証実験である。
7月27日に開催された本プロジェクトの記者発表会と園内ツアーに動物大好きライターのモトタキが突撃した。
スタッフと行く園内ツアーで夢見ヶ崎動物公園ならではの見どころを知る
レムール舎にいるのは、ワオキツネザルとブラウンキツネザル、そして、クロシロエリマキキツネザルだ。ワオキツネザルとブラウンキツネザルの混合飼育は、実施している園があまり多くなく、珍しい展示を実現。
園内ツアーに合わせて、餌やりタイムも実施。とてもかわいい。餌は、動物園関係で市販されているペレットにバナナ、リンゴ、加熱したサツマイモ、ニンジンなど。大きさは動物の大きさに合わせている。
シマウマ舎のハートマンヤマシマウマは、ナミビアの山岳地帯に生息する種。日本で多く飼育されているシマウマは、グラントシマウマである。ハートマンヤマシマウマは、日本では4つの動物園に数頭だけ飼育されている。とてもレアだ。
カメ舎には4種のカメが飼育されており、アルダブラゾウガメ、ケヅメリクガメ、ホウシャガメ、ホルスフィールドリクガメを見ることができる。
夢見ヶ崎動物公園にいるアルダブラゾウガメは、現在150キロ程度。大きくなれば200キロを超えるガラパゴスゾウガメに次ぐ、世界最大級のリクガメだ。寿命も長く、野生であっても150歳を超える個体もいる。
草食性で、ニンジン、バナナ、トマトなどを食べる。スタッフに撫でられながら、おいしそうに食べていた。癒されるぜ。
水禽舎にいる、チリーフラミンゴ。他の動物園にいるフラミンゴのなかでも、ここのフラミンゴはどうも羽の赤色がとても鮮やかだ。
羽色の鮮やかさの決め手はオキアミとジュースだ。ニンジンやリンゴ、小松菜をミキサーにかけた特製ジュース。これらを混ぜて与える。フラミンゴは、食べたものの赤い色素を蓄積させることで羽が赤くなる。
とはいえ、ここまで手間を掛ける園は多くはない。
フラミンゴ用のペレットがあり、それで飼育するには十分だからだ。なお、いま与えているペレットには繁殖を促すための種類も混ぜてある。このペレットは、タンパク質やカルシウムを多く含んでおり、卵を作りやすいような体作りができるのだ。
水禽舎には、フンボルトペンギンもいる。南アメリカに生息するペンギンだ。それゆえに暑さに強い。とはいえ、酷暑続きの日本の気候は厳しい。そのため、ミストも設置している。気持ちよさそうにミストを浴びるペンギン。こりゃかわいらしい。
餌はアジとシシャモ。アジは背びれなど硬い部分は切り落として与えているという。
また夏は、ペンギンにとっての換羽期である。一年に一度の換羽期には、2週間から3週間かけて羽が生え変わる。それだけの一大作業でありカロリーが必要とされるので、大いに飯を食べて栄養を蓄え、換羽に挑む。換羽期は、食欲が減退したり水に入らなくなるという。
換羽期は、少しずつ羽が生え変わるため、見た目が少しへんちくりんな姿になってしまっている。だが、病気ではないので安心してほしい。生え変わった羽毛は、よく見ると、プールなどに浮かんでいる。
園内ツアーはコンポスト見学編に突入
動物たちの紹介のあとは、餌の調理場を見て回るコンポスト見学ツアーだ。動物が食べる餌は一年中手に入る食材を使ったレシピである。こうすることで、餌を食べたか食べなかったかで、体調管理の目安としているためだ。
調理としては、煮たり、切ったり、動物の種類に合わせた餌を作っている。
食材は、野菜のほかに、ひよこ、魚、飼い葉などもある。食べる量も多いので、なかなかの重労働だ。スタッフたちは淡々と作業を進めていた。
また、夢見ヶ崎動物公園には、シセンレッサーパンダもいる。餌となる竹の葉は硬いため、高齢の個体のために、葉の一枚一枚を手で摘み取り、ミキサーで粉砕して、ペーストにしている。手間暇がかかっているのだ。
竹はまだ硬すぎて、コンポストに入れるには不向きだという。
餌の食べ残しや非可食部を金肥に変えるコンポストとご対面
コンポストの上部には、ソーラーパネルが取り付けられており、太陽電池でコンポストの機能を稼働させる電気をまかなっている。中をぐるぐるとかき混ぜたり、どれくらい分解が進んだのかのデータを取ったり、それのセンサーへの電源を供給したり、データをクラウドにアップロードするときの通信に使ったり、完全にスタンドアローンだ。
なかの微生物は、納豆菌などの枯草菌に近い独自開発の発酵菌「コムハム」を使用。3ヶ月に1度は補充する必要があるが、逆にたったそれだけで食品残さを分解して堆肥へ変えてくれるのだ。
夢見ヶ崎プロジェクトはいかにしてはじまったのか
川崎市長の福田紀彦氏は、今期で4期目。「回る繋がる循環都市へ」をテーマに市政に取り組む政治家だ。今回は、循環都市の実現のために、「世界を循環型社会にする」という高い志、そして技術とビジネスモデルを持つ三菱化工機株式会社と手を取り合った。
川崎市は、これまでも官民でいろんな実証プロジェクトを進めてチャレンジしてきた。だが実証だけでは疲れてしまう。実装することがキーなのだ。それを踏まえて、2026年5月に官民相互連携窓口として、「Kawasaki Future Co‑Lab」というプラットフォームを開設した。
今回の夢見ヶ崎プロジェクトを成功させることで、循環型社会は理念ではなく実現しうる構想だと示したい夢がある。そのスタートがいま切られたのである。
三菱化工機株式会社代表取締役社長の田中利一氏は、会社の歴史を語った。三菱化工機株式会社は、川崎市で生まれて91年。日本の経済発展に必要だと感じた加工用の機械などを欧米から輸入して国産化した事業が始まった。
そんな歴史を踏まえて、今の三菱化工機株式会社は、カーボンニュートラル社会の実現に向けて、変革が求められており、そのために社会課題を解決しうる技術の開発が必要とされている。
循環型社会推進事業は、そうした観点から大きな柱として取り組んでいる。今回の夢見ヶ崎プロジェクトは、そうした挑戦の先駆けと位置付けている。ここからいろんな挑戦をしていく展望があるという。
今回の夢見ヶ崎プロジェクトの中心となる、夢見ヶ崎動物公園の園長を務める浅井威一郎氏は、中心に選ばれたことを光栄に思うという。
夢見ヶ崎動物公園は、50年以上の歴史をもち、現在は51種274点の動物を飼育している。新たな時代における動物公園として役割を発揮するために、2026年5月に夢見ヶ崎動物公園再生計画を実施。「命を感じる」をテーマに再整備を進めている。
動物の餌を調理する際に発生する残渣を堆肥とする。その堆肥を農作物の栽培に利用する。まさに未利用資源を収益源に転換する地域循環モデルであり、素晴らしいプロジェクトだとした。
夢見ヶ崎プロジェクトは実際に何をするのか
実際、夢見ヶ崎プロジェクトとは何をするのか。三菱化工機株式会社企画管理統括本部企画部の山田宏一氏が解説する。
簡単に言えば、動物園で発生した残渣や動物の糞尿を堆肥に変換し、園内や近郊で農作物を栽培し、オリジナル商品を開発・販売するプロジェクトだ。そこで出た収益の一部は夢見ヶ崎動物公園に寄付される、まさにぐるっと回す地域循環モデルである。
初回の農作物はレモングラスやホップ、ヨモギなどを予定。商品開発には、元祖ニュータンタンメン本舗や菓寮東照、東海道BEER川崎宿工場がパートナーとして関わる。レモングラス入りのクッキーや、ホップを使ったビール造りなどがオリジナル商品として並ぶ。
最初は少なめの量から始め、安定した品質を出せるようになったら、規模を大きくしていく計画だ。大事なのは実装すること、そして、循環させていくことである。
PRも欠かせない。グルメインフルエンサーやローカルアイドル、クリエイター集団のほか、川崎を拠点に活動するプロダンスチーム「KADOKAWA DREAMS」などが協力する。「KADOKAWA DREAMS」のエグゼクティブプロデューサーであるKEITA TANAKA氏が、「いろんな世代をつなげていきたい」と意気込みを語った。
はじめての作付
地元密着型である夢見ヶ崎プロジェクト。地元の子どもたち、そして、プロジェクトを動かしていく大人たちが手を取り合って、レモングラスやホップをプランターに植え付ける場面もあった。この苗が育つように、このプロジェクトもすくすくと育ってほしいものだ。
来年には、この日植えたホップで乾杯できる日が来るかもしれない。
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