任天堂『スターフォックス』レビュー:短時間でギュッと濃縮された爽快体験が可能な3Dシューティング
任天堂の看板キャラクターといえば、マリオやリンク、『スプラトゥーン』のインクリング(イカちゃん)などが思い浮かぶだろう。しかし、かつて一世を風靡したものの、近年少し影を潜めていた名物キャラクターがいた。そう、『スターフォックス』の主人公・フォックスだ。
小学生のころ、筆者にはじめて3Dゲームのインパクトを教えてくれたのが『スターフォックス』だった。それだけに、最近フォックスの活躍を見る機会が減っていたのは少し寂しく感じていた。そんな中、突如として発表された『スターフォックス』最新作!
久しぶりのフォックスの帰還とあっては、プレイしないわけにはいかない。もちろん自腹で購入してガッツリ遊び尽くしたので、今回はそのプレイレビューをお届けしよう!
戦闘機を自在に操り敵を撃て! 爽快なレールシューティングゲーム
本作は、名作3Dシューティング「スターフォックス」シリーズの最新作。完全な新作というわけではなく、1997年に発売されたNINTENDO 64版『スターフォックス64』のフルリメイク作品となっている。約20年の時を経て蘇った本作は、ビジュアルが現代向けに美しく進化を遂げただけでなく、新たな機能も追加された意欲作だ。
プレイヤーは、やとわれ遊撃隊「スターフォックス」チームのリーダーであるフォックスとなり、超高性能全領域戦闘機「アーウィン」を操ってさまざまな任務に挑戦していく。戦車(ランドマスター)や潜水艦(ブルーマリン)など他の乗り物に搭乗するステージもあるが、メインとなるのはアーウィンによる大空での空中戦だ。
「戦闘機による空中戦」「3D空間」と聞くと、「エースコンバット」シリーズのような、大空を360度自由に飛び回るフライトシューティングゲームを想像するかもしれない。しかし、本作のジャンルは「レールシューティング」だ。
フライトシューティングが空間を自由に移動できるのに対し、本作は自分が進むべきルートがあらかじめレールのように決まっており、機体は自動的に手前から奥へと進んでいく。だから「レール」シューティングゲームというわけだ。
「せっかくの空中戦なのに、移動ルートが決まっているなんて窮屈なのでは?」……そう感じる人もいるかもしれないが、これがバツグンにおもしろい!
その最大の理由が、次々と現れる敵に攻撃をガンガン当てられる「爽快感」にある。
何を隠そう、筆者は自由移動型のフライトシューティングがあまり得意ではない。
その理由は、高速で飛ぶ敵を画面に捉え続ける(捕捉する)ことの難しさにある。人間キャラクターを操作するFPS/TPSのような一般的なアクションゲームなら、正面を向いたまま左右にカニ歩きしたり、後ろに下がったり、即座に180度振り向いたりできるため、敵をそう簡単に見失うことはない。
一方、戦闘機の場合は左右へ動くために「旋回」が必要で、後退や急なUターンは難しい。おまけに自機、敵機お互いが高速で飛び回るため、画面外へ消えた敵を見失い、追いかけるのに苦労してしまうのだ。
もちろん、そのリアルな挙動こそがフライトシューティングの醍醐味であり、慣れれば解決する問題ではある。だが、筆者のようにどうしても苦手意識を持つ人は少なくないはずだ。
一方、レールシューティングである本作は、自動で前に進みながら、基本的には正面を向いたまま機体を上下左右に動かすことができる。つまり、シンプルに「前方に現れる敵を倒す」ことに集中できるのだ。だからこそ敵をガンガン攻撃することができ、非常に高い爽快感を味わえる。
ちなみに、一部のステージやボス戦、「バトルモード」などには、本作にも360度自由に移動できる空間(オールレンジモード)が存在する。ここでは自分で機体を左右に旋回させて敵を狙う必要があるが、本作のアーウィンには、即座に後ろを振り向く「Uターン」や、背後を取ってきた敵の後ろへ回り込む「宙返り」といった便利なアクションが用意されている。さらに、ステージの空間の広さも敵を見失うほど大きすぎないよう調整されている。
これらの工夫により、「敵を見失って攻撃できない」というストレスが生まれにくくなっているのだ。だから、複雑な操縦テクニックがなくても、直感的にアーウィンを自在に操ることができる。この遊びやすさこそが、本作の大きな魅力だろう。
1ステージにギュッと濃縮!任天堂ならではの「アクションの楽しさ」
本作の「楽しさ」を語る上で欠かせないのが、1ステージにギュッと濃縮された「任天堂的なアクション」だ。
本作はれっきとしたシューティングゲームだが、その楽しさの根底には「スーパーマリオ」や「ゼルダの伝説」シリーズに通じる、任天堂特有の手触りがあると感じた。
「マリオ」や「ゼルダ」シリーズを遊んだことがある人なら、ボスキャラクター戦の共通点に気づくはずだ。ボスには必ず「明確な弱点」と「弱点を突くための特定のアクション」が存在する。そしてダメージを与えると、ボスの動きが速くなったり攻撃パターンが変化したりして、段階的に難易度が上がっていく。
こうした仕様は「メトロイド」や「スプラトゥーン」、「ドンキーコング」など、任天堂のタイトル全体で共通している。なぜなら、それこそが「楽しさの根幹」だからだ。「どうやって攻略すればいいか自力で発見する」→「実践、成功すると難易度が一段階上がる」→「それを乗り越えて攻略し、達成感を味わう」……このループがたまらなく楽しいのだ。
そして本作も、シューティングゲームでありながら、この優れたゲーム設計をしっかりと受け継いでいる。
アーウィンには「弾を撃つ」以外にも多彩なアクションが用意されている。機体を傾けて素早く避ける「ローリング」、一時的に急加速する「ブースト」、逆に減速する「ブレーキ」、そして敵の背後を取る「宙返り」などだ。
ステージのギミックやボスは、ただ撃つだけでなく「どのアクションを、いつ、どのタイミングで使うか」を意識して設計されている。だからこそ。ステージ内で敵の動きをよく観察して攻略法を発見し、手持ちのアクションを駆使してスムーズに打ち破ったときの達成感は格別だ。
さらに本作は、ステージ内の任務達成状況によって、次のステージへの進行ルートが分岐する仕組みになっている。上手く立ち回れば実力に応じた手強いステージが出現し、腕前に合わせて「難易度が徐々に上がっていく」のだ。
また、ステージ内にも隠された分岐ルートが存在する。一度クリアしたステージでもルートを変えれば、これまで味わったことのない全く違うシチュエーションが待ち受けている。
こうした根本的な作りの丁寧さに、まさしく「任天堂らしさ、任天堂のアクション」を強く感じた。
仲間とともに空を飛ぶ! 共闘感が熱いドラマ体験
シチュエーションに合わせて的確なアクションを繰り出し、ステージを攻略していく。これだけでもアクションゲームとして十分に面白く、満足度の高い体験なのだが、その楽しさをさらに底上げしてくれるのが「仲間」の存在だ。本作ではステージ間のムービーだけでなく、戦闘中にも画面下部で敵や味方からの通信が頻繁に入り、ドラマチックな展開を演出してくれる。
しかもこの通信は、単なる背景の演出ではなくゲームの進行に直接関わってくる。たとえば、味方から「敵から攻撃を受けていてピンチ!」と通信が入った場合、彼らは実際に敵から攻撃されている。放っておけばダメージを受け、最悪の場合は撃墜されて戦線離脱してしまう(自機が近づいて助けることも可能だ)。「テキストのセリフを読んで終わり」ではないため、「スターフォックスのリーダーとして、仲間とともに戦線に立っている」という没入感が非常に高まる。
もちろん、この感覚はオリジナル版からの持ち味ではある。しかし、リメイクによってグラフィックや演出のクオリティが大幅に向上したことで、その臨場感はさらに強烈なものになっていると感じた。
タイパ抜群の濃密な体験! 次回作ではマルチプレイの充実にも期待したい
ところで本作は、ゲーム全体の1周あたりのプレイ時間が短い。全16ステージが存在するが、ルート分岐があるため1回のクリアまでに経由するステージ数は7つ。およそ1時間程度でエンディングに到達できる。
これを「ボリューム不足」とネガティブに捉える人もいるかもしれない。しかし筆者としては、このプレイ時間こそが忙しい現代にマッチしているとポジティブに受け取った。つまり、いわゆる「タイパ(タイムパフォーマンス)」が抜群に良いのだ。
どっぷり100時間遊べる大作ゲームなども魅力的だが、それにかかりきりになると他のゲームが遊べなくなってしまうのは少しもったいない。また、大作ゆえに「移動だけの時間」や「お金・経験値稼ぎの作業時間」が含まれることも少なくない。
それならば、無駄を削ぎ落として「純粋な楽しさ」だけが1時間にギュッと濃縮されている本作は、非常に魅力的だ。ハイスコアを狙ったり、まだ見ぬ分岐ルートを探したりと、濃密な1時間のプレイを何度も繰り返す設計になっているため、気づけば長期間熱中してしまう。
結果的に同じ100時間をプレイするにしても、楽しさの「密度」が違うと感じた。
ただ、少しだけ残念だったのが、今回のリメイクで追加された新要素「バトルモード」だ。これは360度自由移動できる空間で4vs4のチーム対戦を行う、マルチプレイを前提としたモードである。ソロプレイで磨いたアーウィンのアクション、操縦テクニックを活かして、協力や対戦ができるのは間違いなく面白い。
しかし、選べるステージが3つしかなく、機体や武器のカスタマイズ要素もないため、協力×対戦を極めて深く遊び込むには少し物足りなさを感じてしまった。
もともとがソロプレイ中心のゲームなのでオマケ要素と言えばそれまでなのだが、アクションの土台が素晴らしいだけに「もっと遊びたかった」と惜しく感じてしまう。
とはいえ、久しぶりに『スターフォックス』が最新ハードでリリースされたという事実そのものが、今後のシリーズ展開への期待を大きく膨らませてくれる。シリーズのファンとしては、次はぜひ完全新作を遊んでみたいし、そこにはやり込みがいのある奥深いマルチプレイモードも用意してほしいと願っている。
それまでは、この美しく蘇った名作を心ゆくまで遊び尽くして待つとしよう。
(文/田中一広)
(執筆者: ガジェ通ゲーム班)
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