【ライブレポ】yutori、自身最大規模ワンマンで届けた祝福──〈yutori ONEMAN TOUR 2026 “Bless you!”〉

4人組ロックバンド・
この日のライブは、結成から約5年半を経て、自身最大規模のワンマンライブへと辿り着いたyutoriが、自分たちの原点と現在、そして未来への意思を改めて提示した夜だったように思う。


ライブは代表曲「君と癖」からスタート。佐藤古都子(Vo./Gt.)の切実でどこか儚さを帯びた歌声と、それを支える内田郁也(Gt.)、豊田太一(Ba.)、浦山蓮(Dr.)の演奏が一体となり、ライブハウスという空間を濃密な感情で満たしていった。
今やyutoriを代表する楽曲となった「君と癖」は、彼らの音楽性を象徴する一曲だ。誰かを愛しながらも傷つき、理解したいのに理解できない。そんな割り切れない感情を抱えたまま生きる人間の姿が描かれている。
続く「センチメンタル」もまた、感情の揺らぎそのものを音楽にしたような楽曲である。バンドの原点とも言える初期楽曲を冒頭に配置したことで、これまで積み上げてきた歩みそのものを示すような幕開けとなった。


注目したいのは、この日のライブが4人にとって自身最大規模のステージでありながら、成功や祝祭感を前面に押し出すのではなく、あくまで「弱さ」からライブを始めたことだ。yutoriは最初から最後まで、人間の不完全さを見つめ続ける。それは4人がデビュー当初から変わらず持ち続けてきた信念だ。
中盤ブロックには、「月と私のかくれんぼ」「爪色とグラスの縁」「音信不通」「安眠剤」など、恋愛や孤独をテーマにした楽曲が並ぶ。ここで描かれているのは「誰かと繋がりたいのに繋がれない」という感情だ。これらの楽曲に象徴されるように、yutoriの楽曲には救済よりも現実がある。励ますのではなく寄り添う。「頑張れ」と言うのではなく、「苦しいよね」と隣に座る。その姿勢こそが、yutoriというバンドが同世代を中心に多くのリスナーから支持を集める理由なのだろう。
しかし、この日のライブは決して絶望の物語ではなかった。後半になるにつれ、「数%のハッピーエンド」や「NOT MUSIC」など近年の楽曲が続き、ライブの空気は徐々に変化していく。そこから感じられたのは「弱さを抱えたまま前へ進む」という、近年のyutoriが獲得した視点である。


特にそれを象徴していたのが「スピード」という楽曲だ。メジャーデビュー曲であるこの楽曲は、これまでのyutoriが描いてきた孤独や葛藤を否定するのではなく、その先へ進もうとする意思を持っている。
今回のツアーファイナルが自身最大規模のワンマンだったことを考えると、この楽曲が終盤に置かれていた意味は大きい。インディーズ時代から積み重ねてきた孤独や葛藤が、KT Zepp Yokohamaという大きな会場へと繋がった。「スピード」は、この日のライブにおける「いまのyutoriの決意表明」だったのだ。
本編ラスト。佐藤はMCで、会場に集まった観客同士について「隣にいる人の名前も年齢も出身もわからないかもしれない」としながらも、「yutoriの音楽が好きで、今日このライブに来て、同じ空気を吸って、同じ音楽を味わっている」と、同じ音楽を通じて生まれるつながりの尊さを語った。


さらに、「この世の中にはいろんな人がいて、いろんな関わり方をして、いろんな感情を覚える」と述べ、「まだ22年しか生きていないけれど、これから先もたくさんの人と関わって、たくさんの感情を知りたい。それが人生だと思っている」と自身の思いを明かした。
そして、「これから先、今も、過去も、あなたの心の中に孤独を怖がるあなたがいるなら、この歌を送ります」と観客へ呼びかけ、本編最後の楽曲「僕らは孤独だ」を披露した。そう、最後に「孤独」を歌ったのである。しかし、それはデビュー当初に歌っていた孤独とは少し違う。KT Zepp Yokohamaを埋めた観客の前で鳴らされた「僕らは孤独だ」は、「孤独ではない」という意味ではなく、「孤独なままでも繋がれる」というメッセージのようだった。
誰もが孤独を抱えている。誰も完全には理解し合えない。それでも同じ場所で音楽を共有できる。そんなyutoriなりの希望が、この日のラストには込められていたように思う。


アンコールに応え再び4人がステージへ現れると、まずは「またやんのそれ」と佐藤にツッコミを入れられながらも、ベーシスト・豊田によるリバーブの効きまくりの物販紹介が行われた。豊田らしい独特のテンションで会場の笑いを誘った。これもyutoriのライブの醍醐味だなと感じるシーンだった。
「煩イ」を熱唱したあと、最後に佐藤は、yutoriが2020年のコロナ禍に「1曲だけレコーディングするため」に結成されたバンドだったことを振り返り、「まさかこんなにたくさんの人の前で、あなたのために歌が歌えるなんて、当時16歳だった私は何も想像していませんでした」と話す。自身最大規模となるKT Zepp Yokohamaでのワンマンライブを迎えられたことへの喜びを語り、「見つけてくれて本当にありがとう」と観客へ感謝を伝えた。


さらに佐藤は、自身の学生時代について「友達はいたけど、家での居場所があまりなかった」「本当の自分を好きになれなかった」と当時を振り返り、そのなかで歌と出会ったことが人生の転機になったと明かした。「歌を歌っている時だけは自分をすごく好きになれた。歌を歌っていない時はどうしても好きになれなくて、卑屈なやつだった」と語った佐藤。しかし、歌い続けるなかでメンバーやファンと出会い、「あなたのために歌が歌えて本当に幸せです」と現在の思いを口にした。
また、「あなたの心の居場所になれますように」と観客へ呼びかけ、「また何かあったら帰っておいで」と優しく語りかけると、日々の悩みや苦しみについても「きっとそれは意味があるから」とエールを送った。「心の熱を大事に」とメッセージを届け、そしてラストに「巡ル」を披露。これまで出会った人々や支えてくれたファンへの感謝、そしてこれから先も続いていく物語を感じさせるエンディングとなった。
ツアータイトルの“Bless you!”は、くしゃみをした人にかける定番のフレーズとして知られているが、本質的には「お大事に」「幸運を」といったニュアンスを持つ、相手の無事や幸福を願う言葉だ。4人はこのライブを通して、「弱いままでもいい。迷ったままでもいい。孤独なままでもいい。それでも前へ進める」。そんなメッセージを届けようとしたのではないだろうか。この日のライブは、そんなyutoriの信念そのものを体現した公演だった。
最大規模のワンマンを成功させた今、4人は確かに大きくなった。しかし、孤独や弱さに寄り添うという本質は何ひとつ変わっていない。孤独を歌い続けてきた4人は今、その孤独を抱えたまま、さらに大きな景色へ向かおうとしている。

取材&文 : ニシダケン
Photo by エド ソウタ
セットリスト
yutori ONEMAN TOUR 2026″Bless you!”@2026.6.7 KT Zepp Yokohama
M1.君と癖
M2.センチメンタル
M3.村人A
M4.月と私のかくれんぼ
M5.爪色とグラスの縁
M6.音信不通
M7.安眠剤
M8.生活
M9.愛してるって嘘ついた
M10.数%のハッピーエンド
M11.NOT MUSIC
M12.有耶無耶
M13.H@BREAK
M14.スピード
M15.煙より
M16.僕らは孤独だ
En1.煩イ
En2.巡ル
プレイリストはこちら
https://kmu.lnk.to/blessyou_setlist

ツアー情報
■yutori 2MAN TOUR2026「対 vol.2」
※各公演ゲスト後日発表
オフィシャル最速先行
https://w.pia.jp/t/yutori-2man2026aut/
受付期間:6/7(日)19:30~6/21(日)23:59
10/25sun京都KYOTOMUSEwithGUEST
open 16:30 /start 17:00
11/2mon宮城MACANAwithGUEST
open 18:30 /start 19:00
11/13fri愛知THEBOTTOMLINEwithGUEST
open 18:30 /start 19:00
11/21sat大阪BIGCATwithGUEST
open 16:15 /start 17:00
11/29sun東京SpotifyO-EASTwithGUEST
open 17:00 /start 18:00
Ticket¥6,000+1drink
ライブ情報
▼yutori ONEMAN TOUR 2026″Bless you!” Extra Show
6/21(日) 台北 MOONDOG
6/27(土) ソウル Musinsa Garage
アーティスト情報
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