スマホでよく見る『Temu』に挑戦した、創業120年の老舗海鮮ショップ

6月に入り、「またか」と言いたくなる物価上昇のニュース。スーパーの店頭でも「本当に高くなったなぁ」としみじみ感じる。少しでも生活費を抑えたい、でも美味しいものは諦めたくない。そんな中、新たな買い物の選択肢として注目されているのがECプラットフォーム「Temu(テム)」だ。
「安すぎない⁉」「品質はどうなの⁉」と、アプリを入れるのをためらってしまう気持ちも分かる。しかし、日本全国の老舗や歴史ある企業が、このプラットフォームを舞台に新たな挑戦を始めている。
地方ECが直面する現実。売上は伸びても利益が出ない?
現在、ネット通販市場は成長している。しかし多くの事業者が「値引きやポイント施策から抜け出せない」「モール依存で利益が残らない」という壁に直面している。現在のEC環境は、ただ安売りして“売れるか”ではなく、“なぜ選ばれるのか”が問われるフェーズに入った。
そんな荒波の中、Temu出店からわずか数ヶ月で驚異的な成長を遂げ、新たな活路を見出した福井県の老舗企業がある。海産物をメインに販売する「港ダイニング しおそう」だ。
ここは、創業約120年を誇る超老舗。元々は塩の販売から始まり、駅弁、飲食店、そしてコロナ禍をきっかけに通販事業へ本格参入した歴史を持つ。今やEC全体の年商は40億円規模だ。そんな海鮮のプロフェッショナルが「Temu」を選んだ背景には、ネット通販の新しい仕組みがあった。

検索しない買い物?新規顧客を呼び込む「発見型コマース」
しおそうが直面していた最大の課題は「新規顧客の獲得」だった。これまでのネット通販はリピーターに支えられていた反面、多額の広告費をかけ続けなければ新しいお客さんに出会えない構造だったのだ。
その状況をガラリと変えたのが、Temuの「発見型コマース」という仕組みだ。
従来のECは、ユーザーが「カニ」「ナッツ」と自分から検索することから始まる。しかし「発見型コマース」は、利用者一人ひとりに合わせて商品が提案されるため、検索をしなくても新たな商品に出会いやすい。
つまり、ユーザーは探していないのに『画面を眺めているだけで、大好物や潜在的に欲しかった商品と偶然出会う』のだ。これは、InstagramやTikTokで興味のある動画が次々と流れてくる感覚に非常に近い。
購入者にとっても、「わざわざ探す手間がなく、普段なら素通りしていたかもしれない地方の隠れた名店や、美味しい商品に偶然出会える」というのは、これまでにないワクワクする買い物体験だろう。この「SNS感覚で、ついつい美味しそうな海鮮と出会ってしまう」仕組みこそが、新規開拓の最大のカギとなった。

仕掛けのない「まとめ買い」と、海外プラットフォームの洗礼
この“出会い”の仕組みにより、しおそうのTemu店には驚きの変化が起きた。
①圧倒的な新規顧客の獲得
ほぼ「はじめまして」の新規客が続々と購入。全体の新規顧客比率が向上。
②仕掛けのないまとめ買い
クーポンに頼らなくても、美味しい海鮮を一度に複数注文する「あれもこれも食べたい」という自然発生的な動きが急増。
③イベントに左右されない安定感
特定のセール日だけ爆発的に売れるのではなく、毎日安定して売れていく。
もちろん、いいことばかりではない。Temuには、独自の運営ルールや仕組みがある。Temuへの出店を通じて、従来とは異なる運営ノウハウやグローバルプラットフォームならではの仕組みに触れる機会があった。
しかしそれらを乗り越え、オープン初月から売上約350万円、今では月商2000万円規模にまで急成長を遂げた。
実はTemu、2025年5月から日本国内の事業者が直接出店できる仕組みが本格始動しており、しおそうの参入もそのタイミング。
私たちがスマホで目にする格安画面の向こうには、今やこうした日本の老舗がダイレクトに潜んでいるのだ。
目標の月商3000万円まであと少し
今でこそ大成功を収めている「しおそう」だが、EC開始当初は店舗の奥にある机1台のスペース、たった1人でのスタートだった。注文も週に1件あるかないかという、気が遠くなるような始まりだったという。
そんな地方の小さな挑戦が120年の歴史を繋ぎ、最新のグローバルECという翼を得て、全国の食卓へ美味しい海鮮を届けている。販路や売り方に悩む地方の事業者へ、しおそうの刀根さんはこうエールを送る。
「難しく考えすぎて行動を制限するより、まずは軽い気持ちで始めてみることが重要です」
当面の目標である「Temuで月商3000万円」も、すでに手の届くところまで来ている。
スマホの画面の向こう側。あのアプリを覗いてみると、そこには日本の老舗がプライドをかけて届ける、安くて美味い「本物の海鮮」との運命の出会いが待っているかもしれない。
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