「千葉繁の無駄遣い」に会場爆笑! 『機動警察パトレイバー EZY』第3話“あの予告編”はこうして生まれた

2026年6月2日、グランドシネマサンシャイン池袋にて『機動警察パトレイバー EZY File 1』公開後スタッフトーク『ぶっちゃんの部屋 パート2』が開催された。

当日は、出渕裕監督、脚本・シリーズ構成の伊藤和典さん、キャラクター原案のゆうきまさみさんが登壇され、『File 1』 の裏話を中心に熱いトークが繰り広げられた。

第3話『ホンモノが一番』に登場する劇中映画の予告編についての裏話や、先日『週刊ビッグコミックスピリッツ』に掲載されたゆうきまさみさんによる描き下ろしマンガ『パトレイバー2026』の制作秘話、6月25日発売の伊藤和典さんによる小説『寿司屋の後藤』の話題など、多岐にわたるトークで会場のファンを沸かせた『ぶっちゃんの部屋 パート2』。

今回もファン歴38年の担当ライターがシリーズのファン目線でイベントの内容を詳しくお届けする。

台風接近中でもファンが集結! すでに9回鑑賞した熱烈なファンも!?

イベント当日は、台風が接近するあいにくの天候。

冒頭、MCを務めたパトレイバー広報室の喜屋武ちあきさんは、台風の話題に触れながら、劇場版『機動警察パトレイバー the Movie』を思わせるような空模様であることを話題にした。

『機動警察パトレイバー』ファンであれば、台風と聞いて思い出すのは、やはり劇場版第1作目の『機動警察パトレイバー the Movie』。伊藤和典さんが執筆された劇場版第1作目のノベライズ作品『機動警察パトレイバー 風速40メートル』とまではいかないものの、かなりの暴風の中、会場には多くのファンが集まっていた。

ステージに登壇した出渕監督は冒頭の挨拶で「台風の中、足を運んでくれてありがとうございます」とファンに感謝を述べると会場からも大きな拍手が。

続いて、喜屋武さんが、客席に向けて「今日初めて『EZY』を観た人」、「すでに5回以上観た人」と質問すると、5回以上鑑賞しているファンも少なくないことが判明。

これに出渕監督が「6回、7回? 8回? 9回は?」と客席に呼びかけると、最多で9回観ているという熱いファンも。これには、ゆうきさんも思わず「怖い、怖い(笑)」と反応し、会場は早くも笑いに包まれた。

第3話「ホンモノが一番」の“あの予告編”は、やっぱり完コピ?

トークの序盤で話題になったのは、第3話「ホンモノが一番」。

このエピソードは映画の撮影現場が舞台となっており、こだわりの強すぎる監督の暴走によって、撮影が思わぬ方向へ転がっていくというストーリー。

中でも強烈なインパクトを放っているのが、劇中映画の予告編。すでに出渕監督が様々なインタビューでお話されているように、あの予告編は、『機動警察パトレイバー』の原作者集団・ヘッドギアのメンバーで『アーリーデイズ』(初期OVAシリーズ)の1話から6話までや『機動警察パトレイバー the Movie』、『機動警察パトレイバー 2 the Movie』で監督を務めた押井守さんの実写映画『ケルベロス 地獄の番犬』の予告編のオマージュとなっている。

喜屋武さんが「なぜあそこまで完コピになったのでしょうか」と切り出すと、出渕監督は「あれが完コピだってわかる人と、わからない人がいると思うんですよ」と前置きしながら、その制作経緯を語り始めた。

出渕監督によると、最初に絵コンテを見た時点で、記憶の中にある映像と重なる部分があったという。

ちゃぶ台を返すカット。飛行機が飛んでいくカット。「これ、ケルベロスじゃね?」と思って調べてみると、やはり『ケルベロス 地獄の番犬』を思わせるものになっていたそうだ。

実際、もともとのシナリオでは、別の方向性が想定されていたという。

出渕監督によると、シナリオ段階では往年の特撮作品『大魔神』の予告編をオマージュした映像を想定していたとのこと。

ところが、絵コンテを担当した樋口真嗣さんから上がってきたものは、『ケルベロス』をオマージュしたものに……。

出渕監督が語った裏話に伊藤さんが「樋口くんは、わりとやりすぎるタイプの人だから」と補足すると会場からはまたも笑いが。

樋口さんの絵コンテを受け、出渕監督は押井さんに許可をとると、エンディングに『予告編承諾 押井守』とクレジットを入れることに。

樋口さんのこだわりのおかげで、監督として出渕さん、脚本・シリーズ構成に伊藤和典さん、キャラクター原案にゆうきまさみさん、コスチュームデザイン協力に高田明美さんが参加した『EZY』に、押井さんの名前もクレジットされることになり、『機動警察パトレイバー』の原作者集団・ヘッドギアのメンバーが全員クレジットされることになったのだという。

予告編のためにノクトビジョン付きヘルダイバーをデザイン

3話の劇中映画予告編映像について、出渕監督からさらなる話題も飛び出した。

樋口さんの絵コンテを見て「まだ何か足りない」と感じたという出渕監督は、かつてご自身が模型雑誌『ホビージャパン』で描いたノクトビジョン(赤外線暗視装置)を付けた自衛隊のレイバー・ヘルダイバーのイラストを思いだしたとのこと。

『ケルベロス 地獄の番犬』といえば、出渕監督が手がけた武装強化服・プロテクトギア。

プロテクトギアといえば、特徴的なノクトビジョンということで、『ケルベロス』の予告編でプロテクトギアのノクトビジョンが赤く光る映像とヘルダイバーのノクトビジョンが赤く光る映像を思いついた出渕監督。

劇中映画の予告編のためだけにメカニカルデザインの海老川兼武さんに夜間戦闘仕様のヘルダイバーを新たにデザインしてもらったとのこと。

さらに劇中予告で披露される「ヘッドギアをつけろ」というセリフについても出渕監督が言及。出渕監督はこのセリフについて、『ケルベロス』の予告編で同様のセリフを千葉繁さんが披露していることにふれ、「あそこは千葉さんじゃないといけない」と説明した。

ただし、第3話本編に千葉さん演じる斯波繁男は登場していない。

つまり、第3話で千葉さんは“あのセリフ”のためだけに起用されていることになる。これに伊藤さんが「千葉繁の無駄遣い」とツッコむと、会場は大きな笑いに包まれた。

出渕監督は、もし第3話単体でスタッフロールが出る場合は「謎の声 千葉繁」のような表記になるかもしれないとも語り、さらに会場の笑いを誘っていた。

あの監督のモデルは? 「押井さんをモデルなんかしてません」

劇中映画の予告編に続き第3話に登場する、こだわりの強すぎる映画監督のモデルは誰なのかという話題に。

映画監督のモデルの話題になると出渕監督はすかさず「モデルはいないです。別に押井さんをモデルになんかしてません」と回答。

このあまりにも早い否定に、会場はまたしても笑いに包まれた。

「監督にモデルはいない」とのことだが、すでにファンの間で話題になっているように『機動警察パトレイバー EZY』には、ゆうきまさみさんが手がける漫画作品のキャラクターが、いわゆるスターシステム的に多数出演している。

3話には『究極超人あ~る』のキャラクターが登場しており、助監督は『究極超人あ~る』に登場する伊藤和典さんがモデルの”文芸部の伊東くん”だったりする。

実はこの配役、伊東くんのモデルの伊藤和典さんが過去にテレビドラマの助監督をされていたから、というかなりマニアックな理由からなんだとか。

『File 2』や『File 3』でも、ゆうきさんのキャラがマニアックな配役で登場することを期待したい。

後藤隊長の気になる引退後は? 寿司屋? 探偵?

トークは『EZY』本編だけでなく、現在展開中の『パトレイバー』関連企画にも及んだ。

伊藤さんは、現在の状況を「パトレイバーの波状攻撃を今仕掛けている最中」と表現。

5月には、ゆうきさんによる描き下ろしマンガ『パトレイバー2026』が「週刊ビッグコミックスピリッツ」に掲載。そして6月25日には、伊藤さんによる新刊小説『寿司屋の後藤』が発売される。

この日のステージでは、『寿司屋の後藤』の見本誌も披露された。タイトルだけで気になりすぎる一冊だが、内容はその名の通り、引退した後藤隊長が熱海で寿司屋を営んでいるというもの。

もともとはファンクラブのウェブサイト用に書かれた連作短編で、今回の書籍化にあたり、新たに2話を書き足し、連載当時よりも加筆修正されているという。

表紙のイラストを担当したゆうきさんは「最初は寿司屋?」と思ったそうだが、読んでみると「想像したよりずっと面白かった」とコメント。

ゆうきさんが『パトレイバー2026』で「後藤隊長が引退後に寿司屋や探偵をしていた」というようなセリフのやりとりもいれようとしていたと話すと、出渕監督からは「寿司屋をしながら探偵をしていてもいい」とコメントし、ファンの想像を掻き立てた。

『寿司屋の後藤』は「(原作者)本人による二次創作」!?

伊藤さんは『寿司屋の後藤』について、「正当な続編というより、(原作者)本人による二次創作ぐらいのつもり」と説明した。

その上で、伊藤さんは「ゆうきさんが描く70歳を過ぎた後藤や、出渕さんが描く70歳を過ぎた後藤も見てみたい」と語った。

伊藤さんの話を受けて、「『EZY』が始まったことで、旧作のキャラクターたちの“その後”をあらためて考え始めた」という出渕監督。

第3話には進士幹泰と太田功が登場したが、『File 2』や『File 3』でも旧作のキャラクターたちが登場するのかも注目したいところ。

『パトレイバー』の波状攻撃は続く!

イベント終盤、ゆうきさんは悪天候の中で来場したファンにあらためて感謝を伝えると「まだ観ていない人にもぜひ勧めてほしい」と呼びかけた。

伊藤さんは、6月25日発売の『寿司屋の後藤』、そして8月公開予定の『File 2』をアピール。

出渕監督は、File 2からFile 3まで少し間が空くことにも触れつつ、その間もファンが期待を持って待てるような仕掛けを考えていきたいと語った。

『EZY』本編はもちろん、『パトレイバー2026』、『寿司屋の後藤』と波状攻撃の続く『機動警察パトレイバー』。

まずは8月14日金曜日公開の『File 2』に想いを馳せつつ、今後の展開にも注目したい。

© HEADGEAR / 機動警察パトレイバー EZY製作委員会

(執筆者:斎藤ゆうすけ/90年代のアニメとゲームを愛するライター。系放送作家&シナリオライターとしても活動。ゲームやアニメ、小説や漫画原作などシナリオの企画・制作も多数担当。専門学校でメディア論やシナリオ講座の講義も。https://x.com/saito_you)

(執筆者: sasuke_in)

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