“サメを悪役として描かない”新たなサメ映画『デンジャラス・アニマルズ 絶望海域』ショーン・バーン監督インタビュー[ホラー通信]

「サメを悪魔のように描いてきたこれまでのサメ映画の伝統に対抗する形で、この作品を作ったんです」

カンヌ国際映画祭監督週間に選出された異色のサメ映画『デンジャラス・アニマルズ 絶望海域』(5月8日公開)のショーン・バーン監督はそう語る。本作で描かれるのは、危険生物(サメ)と危険人物(殺人鬼)の二重の脅威。サメという生き物が時に人間の脅威になりうることを示しつつも、決して“悪役”にはせず、サメを使って自分のための“殺人ショー”を行うサイコパス殺人鬼の邪悪さを強調する。

ショーン・バーン監督はニック・レパードの書いたユニークな脚本を読み、すぐに惹きつけられたという。「サメがスクリーン上で悪役として描かれないのはこれが初めてで、観客を怖がらせつつも、倫理的な観点から事実を正しく伝える絶好の機会だと思いました

不動の名作として君臨するスティーブン・スピルバーグ監督の『ジョーズ』(1975)は、“サメ=人間を食らう恐ろしい生き物”という印象を決定づけてしまった。スピルバーグは近年、自身の映画がサメの個体数激減に影響を与えたとして、後悔の念を口にしている。

「『ジョーズ』が成功することでサメにどんな影響があるかを分かっていたら、スピルバーグはあの映画を作らなかったかもしれませんね。『ジョーズ』は実質的にサメを絶滅危惧種にしてしまった。彼はただ素晴らしい映画を作っただけで、彼に責任があるわけではないんだけれど」

本作のサメの登場シーンでは、主にドキュメンタリーの映像を使用したという。その逞しく優美な姿に感じるのは、恐怖でなく畏怖だ。これまでのサメ映画とはスタンスが異なることにすぐに気付かされる。

「サメは威厳のある生き物です。この映画では、サメたちの姿を通して、それらがすべて実在する生き物であることを強調したかった。サメそれぞれに人間のように傷跡があり、独自の個性を持っているんです。彼らが息をのむほど美しいということを表したくて、音楽もそうした意識で選んでいます。サメを悪魔のように描いてきたこれまでのサメ映画の伝統に対抗する形で、この作品を作ったんです

ジェイ・コートニーが演じる殺人鬼タッカーは、サメを間近で観察できる体験ツアーの船長をしている。船上を居場所とする彼は、陽気な振る舞いでツアー客やサーファーを罠にかけ、自身のテリトリーに誘拐。サメをおびき寄せて人間を食べるように導き、その様子を撮影する。

「タッカーにカリスマ性を持たせることは非常に重要でした。クモがハエを捕まえる手段のようなものですからね。参考にしたのは、ジョン・ジャラットが『ウルフクリーク 猟奇殺人谷』で演じたミック・テイラー、エリック・バナが演じていたチョッパー・リード(『チョッパー・リード 史上最凶の殺人鬼』)。オーストラリアらしい愉快な犯罪者キャラクターは、被害者を油断させ、信頼させてしまう魅力があります。そんなキャラクターが突如、恐ろしい一面を見せるのです」

タッカーが狙いをつける主人公のゼファーは、孤独を内に抱えるサーファーだ。オーストラリアで地元のサーファーのモーゼズと出会い、一夜を共にするが、内面に深く踏み込まれるのを避けるように夜明け前に姿を消してしまう。一人になろうとした彼女が向かったのは海。そして、そこで待ち受けていたのがタッカーだった。ゼファーと同様に、タッカーも孤独を抱えた存在であると監督は言う。

「演じるジョイと一緒に、タッカーというキャラクターについてよく話し合いました。スクリーン上ではあまり出てこない背景も想定していたので、キャラクターに深みと立体感を与えることができたと思います。彼が子供の頃にサメの襲撃を生き延びたこと、そしてそれが彼の人生でもっともスリリングな瞬間だったことは物語で示していますよね。それに加え、彼は他の人間たちとはどこか馴染めない存在なんです。子供の頃から孤独感に苛まれ、見捨てられたような気持ちを抱えてきた。おそらく両親との関係も良くなかったのでしょう。そこで彼は、母親への復讐として女性を標的にしているのです」

メイキング写真:ショーン・バーン監督とタッカー役ジェイ・コートニー

憎悪の対象を自身で殺害しない点が、タッカーというキャラクターをより特異なものにしている。彼はあくまでサメに殺させることにこだわり、撮影したスナッフフィルムを船にコレクションしている。長年続けられていると思しきこの殺人ショーの観客は、彼ただひとりだ。

「彼は他人を介して、自身がサメに襲撃された体験を何度も何度も追体験しているのです。サメが“海の王”だと考えていて、自分は“陸の王”であるかのように感じている。彼はサメとの間にある種の親和性を感じているんだけれど、それは完全に妄想的で、精神病的で、見当違いなものです。でも、彼はそう考えているんです」

予告編にも登場するタッカーのダンスシーンは、本作でとりわけ異様な存在感を放つ。船上でひとりきり、パンツにガウンという姿で踊り狂うそのシーンは「もっとも邪悪な瞬間」だと監督は言う。

「あのシーンは脚本に後から追加されたものでした。『羊たちの沈黙』でバッファロー・ビルが踊る偉大な前例がありますよね。『卒業白書』でトム・クルーズが見せたパンツ姿のダンスシーンのサイコパスバージョンをイメージしてもいます。あのダンスがいかに不気味なことか。タッカーにとっては、あれはスナッフ撮影の打ち上げパーティーのようなものなんです。だから楽しいシーンである一方で、映画の中でもっとも邪悪な瞬間でもあるんです」

『デンジャラス・アニマルズ 絶望海域』
5月8日(金)全国公開

監督:ショーン・バーン
出演:ハッシー・ハリソン、ジェイ・コートニー、ジョシュ・ヒューストン、ロブ・カールトン、エラ・ニュートン、リアム・グレインキー

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レイナス

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