長岡まつり大花火大会がつなぐ運命 圧巻の読後感が味わえる青春ストーリー
日本三大花火のひとつとして知られる「長岡まつり大花火大会」。毎年8月2日・3日に開催されるのには理由があり、それは1945年8月1日に長岡市の約8割が焼け野原となった長岡空襲からの復興と平和を願う意味が込められているからだといいます。そんな長岡まつり大花火大会を舞台に繰り広げられる感動の青春ストーリーが、真戸 香さんが著した『君と花火と約束と』です。
東京の調布市に住む夏目 誠は高校1年の春、入学式当日に初めて会った少女に「私、ずっとキミに会いたかった……!」と突然の告白を受けます。彼女の名前は、葉山 煌(あき)。新潟に住んでいた曾祖母の”ハルばぁば”に幼い頃から「いつか必ず夏目 誠と出会う。その人がお前のために絵を描いてくれるよ」と言われ、花火が描かれた一枚の古い絵を渡されていたというのです。人違いであることを知り、ショックを受ける煌を見て、誠は”本物の夏目 誠”探しを手伝うことを買って出ます。また、少しでも煌に喜んでほしいとの思いから、誠は中学生のとき以来、ふたたび美術部に所属して絵を描き始めるのでした。
季節は流れ、2年生の夏。誠は煌から「夏休みに……長岡……一緒に行かない?」と誘われます。ハルばぁばにもらった絵と”夏目 誠”の秘密を調べに、曾祖母が住んでいた家のある新潟県長岡市まで行こうというのです。その絵を初めて目にした誠は、自分とまったく同じ画風で描かれていること、自分と同じ字体の”夏目 誠”というサインが記されていることに気づき、その不可思議さに驚愕します。
こうして、長岡まつり大花火大会を控えてにぎわいを見せる長岡市へと向かったふたり。そこで誠を待ち受けていたのは、予想だにしない出会いと真実でした。
序盤では、ふたりの高校生による出会いや交流が非常に丁寧に描かれている本作。最後まで誠と煌のふたりを軸にした恋物語が紡がれるのかと思いきや、中盤からは新たな人物が登場し、物語は意外な展開を見せることになります。タイトルの『君と花火と約束と』の「約束」とは、「本物の夏目誠を探す」という誠と煌の約束だけではなく……。それに気づいたとき、読者はより一層深い感動に包まれるのではないでしょうか。
長岡空襲という実際にあった出来事を通して、戦争の悲惨さや恐ろしさにも触れている本作は、ライトノベル特有の爽やかさや軽快さがありながら、ずっしりとした重厚な読後感も得られる、珠玉の一作となっています。
[文・鷺ノ宮やよい]
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